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失恋癖旅情探偵と異世界から来た100人の探偵助手!  作者: 夜野舞斗
2人目 神頼りの問題児

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1.茶畑の呪術師(1) 俺達のこと

 二人で電車に揺られて、汽車なんかにも乗って見せる。大きな河川の上をごとごとがたがたと。警察から逃げた俺達にとっては一番安心できる場所なのかもしれない。

 リヴィアは向かい側の席に座って、膝を揺らしながら楽しそうに呟いている。


「何かドキドキするね」

「意味が全く違うんだけど……」


 できれば女の子と二人でドキドキデートだったら良かったのだけれども。今はただの逃走中だ。

 と言っても別に警官も血眼になって捜索している訳ではないだろう。一応、何件もの事件で警察と交流がある俺のデータ。連絡先は知られているのだから何かあったら連絡が来るはずだし。

 今はゆっくり観光を進めていく形で良いだろう。

 優雅に河の上から樹々のある方向の景色を楽しんでいく。青と緑のコントラストが映える水の色。新緑の力強さを感じる樹々の姿。そして昔懐かしさを感じさせられる汽車の座席。青いシートがかなり日に焼けていて、年代ものだと分かる。

 こんな温かさを感じる、この場所が本当に好きだ。


「ねぇ、信濃ってこういう静かなところが好きなの?」


 静か、か。確かにこの県の名前を冠する漢字であり、結構好きな文字だ。


「ああ……一人でゆっくり楽しむのもいいし、誰かと一緒にのんびりできるのもやっぱこの場所だと思うんだ」

「と言ってもさっきまでは凄かったけど」

「静かとは縁遠い事件だったけどさ。今は大丈夫でしょ。捜査官とか言ってたけど、今はゆっくりしよう。この場所を知らなきゃ、話になんないよ」


 リヴィアはこの地を知ることについて、だいぶ前向きになっている。何だろうか。自分の好きな場所を知ってもらえる。そんな、ただ単純なことがとても嬉しくてたまらない。


「そっか……! でもさっきのは美味しかったなぁ。こんにゃくやじゃがいも、ちくわにウインナーとかっていうのに味噌と青のりと、魚のコクが美味い粉が掛かった料理……元々の具材にしっかり黒くて美味しい醤油の出汁が交わっていたのに、更に粉が旨味を出していて……あのハッピーなものはこの国じゃ、合法なんだね」

「出汁粉は普通に合法だよっ!」

「でもそれにからしを付けて、ピリッとするのが良かったね。ああ、そうそう! 渦巻きの奴と黒い魚の板みたいなのかな。あれが一番好きよ!」

「なるとと黒はんぺんだよな。そうなんだよ。特に黒はんぺんはフライにしてソースをかけても、美味しいし」


 ハンバーガーになっているのも時々見かける。黒はんぺんバーガーなんてB級グルメの最強と言っても良いだろう。


「ああ、揚げ物が食べたくなってきたんだけど!」

「じゃあ、後でしいたけの入ったコロッケでも買うかね」

「……何それ!? 美味しそー!」


 話を楽しみながら、俺は彼女のことも聞いていく。このままだと彼女の涎も止まらなくなりそうだし。一旦止めておかなくては。


「に、しても異世界から来た割には結構言葉は通じるんだな。文化も同じかぁ」

「確かに。初めて聞く言葉もあるにはあるけど、同じものも多いし……まぁ、こっちの魔法の効果でもあるかな。自動翻訳魔法。きっと分からないものに関しては勝手に一番近いものに翻訳してるんだと思うけど」

「便利だなぁ。それで暗号とか読めたりするの?」

「……残念ながら異世界から日本語に翻訳できるだけで。他の言語は無理だと思う!」


 歓談と一緒に彼女のことを更に深掘りしていく。


「で……もう一つ。お金は持ってるんだよな?」

「そっ。一応、この世界で何人か資金調達してくれる人がいるみたいで。こうやってこっちで暮らす分の経費を貰っててね! 一応、ホテル暮らしにはなると思うって上司も言ってたわね!」


 一応、捜査官としての給料も振り込まれているようで。こちらの暮らしにあまり困ることはないことまでは分かった。


「それにしても知らない場所なのに強いな」


 彼女はふふっと笑う。


「いや、知らない場所は怖いよ?」

「えっ」

「でも、この場所、結構楽しいし、君が一緒にいるって言うのが分かったからかな。とっても安心できるのよっ!」

「それ、言われるの凄く嬉しいな」

「だったら、もっと色々面白い話しなさいよっ!」


 そう言われてついつい話してしまう。彼女の反応も面白いし。


「この場所ってやっぱお茶文化が根付いているらしくてね。お茶畑が多いのは知ってるよね?」

「それ位は下調べでやってるわよ」

「実は高速道路から見える場所に茶という文字のお茶畑があったり」

「今から行くっ!? 運転免許持ってないけど!」

「別の理由で警察に追われたいの?」


 なんてツッコミをすることも。


「他にも学校では水道からお茶が出るところがあったり」

「学校でお茶が……」

「うがいとかもできるってことでね。殺菌効果が期待できるし」

「お茶が好きな人にとっては本当に堪らない場所ね。この場所って。この街自体がお茶のテーマパークみたい! テーマパークに来たみたいよっ! テンション上がるねぇ!」

「本当に君、異世界人?」

「あたぼうよ!」


 はしゃいで。

 こうやって誰かと一緒にお出掛けをして。俺が探偵とか、何か才能があるとか関わらずにこうやって純粋に話せることがとっても嬉しいのだ。

 探偵だ天才だと持て囃され、勝手に期待される訳ではない。

 自分が欲していない真実を見せられて溜息を出す人もいない。

 利用するだけ利用してポイとしようとしている子でもない。そういう奴は決まって、俺の趣味の話に興味なんて持たない。

 彼女は幾らでも聞いて、幾らでも興奮してくれる。

 他にもお茶の話がしたくなって、辺りの情報を調べようと思っていた。スマートフォンを取り出せばいつでも見られる便利な時代になったものだ。

 地名とお茶という情報で調べればすぐ出てくるだろうと思ったのだけれども。

 一番先に見てしまったのは、摩訶不思議な事件の一文だった。


『お茶畑の中でお茶塗れになって亡くなっていた四十九院(つるしいん)当主の遺体』


 ふとリヴィアを見てしまった。


「どうしたの?」

「い、いや、お茶塗れになった遺体……って」


 その言葉のせいか。彼女は深刻な顔をして、重い声を発していた。


「……私の魔法とよく似ているかも。水を出して、相手を水びだしにする……! ってことは、この犯行もしかして」

「君の言ってる魔法使いの犯行の仕業だってこともあるのか……!」

「それだったら、私が行かないといけないのかも……!」


 彼女はチラリとこちらを見てから一言。


「取り敢えずは色々見て回ろうとは思ってたけど、予定が変わったね。私は途中下車するけど……君はどうする?」


 俺を助けてくれた彼女。彼女が未開の地が怖いのに踏み出そうとしている。

 それなら、今度は俺が助ける番だ。


「行くに決まってるだろ?」

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