2nd プロローグ 聖母の報告書
「現在日本に二か月間滞在しているシスター・アレンより連絡があった」
「どんなのどんなのー?」
リヴィアの上司が例の部屋にて、金髪褐色肌の少女と話していた。少女の方は自分が入ったばかりの新人だということも忘れ、上司の手元に無理矢理入り込む。
「お、おい……」
「シスター・アレン。確か、リヴィアさんと同期でしたっけ? にしてもシスターも潜入捜査なんてしたりするんですねー?」
「そうだな。聖職者としてはかなり珍しいかもだが。事件を調べる人間としてシスターは潜入捜査に一番でしょう……と。あの銀髪に関しては何処へ行こうと目立って潜入捜査にならんと思うが……」
「まぁ、でも日本の情報を見てる限り、そんなびっくりするものでもないんじゃないですかー? 今の時代、小学生も紫とか青とかの髪色をしてる時代ですからー!」
「確かに、な。気にする必要はないのかもしれないな」
金髪褐色肌の少女はシスター・アレンの情報を知った後、上司の持っていた報告書を読んでいく。
『上司へ報告申し上げます。ここ二か月間のところ、お茶農家の名家でメイドとして働いております』
少女は少々考えてコメントを口にする。頭の中で違和感が強く主張しているのだろう。
「いろんな事件の真相を知るんじゃなくて? リヴィアお姉ちゃんだともうバンバン謎解いてたよーな?」
「まぁ、アイツはいろんな事件に首を突っ込みたがる性質もあるからな……こうやって一つの場所でとどまっている人もいる」
「しかし、何でー?」
彼女は少し読んで、シスター・アレンの事情を知ることとなる。
『先日起きたお茶畑の真ん中で全身お茶塗れで亡くなっていた名家のご主人の謎を解いておりますが、数週間も真相には至っておりません』
全くとして意味不明な状況に上司も少女もポカンと。水に濡れているなら分かるが、どうしてお茶塗れにしないとならなかったのか。
そもそもどうしてお茶畑のど真ん中でそんなことをしなければならなかったのか。
『これを茶畑の呪術師として、こちらの世界の人間の関与があるかもしれないと考えております。もしかしたら、水を扱う何者かが魔法を使って殺害した可能性もあります。また召喚獣の仕業だとも考えられますが、残念ながら日本の地に呼び出しても長く息はできないようです』
「水魔法……リヴィアお姉ちゃんみたいな魔術師が先に行っていた?」
少女は色々予想するも、推理はできず。吐き出た言葉はそのまま宙に浮いていくばかり。
上司は魔術師の心当たりもなく悩むばかり。どのようにお茶だらけにしたのか。そもそも水魔術師がお茶を選んだ事情とは。
「ただの水を使わずに、びしょ濡れにした理由なら、分かるんだけどなー」
「えっ?」
少女はニカッと上司から離れて、独自の魔法を提示してみせた。何もないところから飛び出るは金髪によく似た色の木づち。それは彼女の背をゆうに超える程の大きさがあり、時折稲妻が迸る。
「だって、何かを含んだ水なら、水び出しにした後で……電撃で一コロなんだもん!」
「そんな簡単な話じゃ、ないと思うんだけどな」




