お父様とおでかけ
本日はもう1話投稿します!
気まずい、気まずすぎる。どうしてお父様と街に出かけることになってしまったの。お父様が何を考えているか分からない私は現実逃避するため、窓の外に映る景色に目を向ける。街の景色を見るのは好きだ。私達貴族とは違う生活をこの目で見れるから。実際に私達がこうして暮らせるのも、街に住むみんなのおかげだしね。あ、あそこの屋台のお菓子気になる。
お父様がこちらの様子を伺っているけどそんなにちらちら見ないでほしい。お家を出てからずっとこの状態だけど、何がしたいのかまったく分からない。堂々としてるなら普段通り話しかけに行くのにそれがない。私も黙っているからなんとも言えない空気が馬車の中を漂ってる。このままじゃ埒が明かないので、お父様に聞くことにした。
「ねえ、お父様」
「! なんだいアリシア?」
声をかけられたお父様はパァァと顔を輝かせた。いやこの空気作った原因あなたなんですけど! 視線は窓に向けたまま質問を続ける。
「どうして急に街に出かけるなんて言ったんです?」
「ああ、それはだね。アリシアに似合いそうな宝石を見つけたから贈ろうと思って」
「それなら私ついて行かなくてもよかったのでは……?」
「そう思ったのだがね……イザベルに『アリシアの好みじゃなかったのどうするのか』と言われてね。イザベルの言う通り、贈ったとしても使われなかったら宝の持ち腐れになるだろう?」
「お父様からいただいたものはどれも嬉しいのに……」
「はは、アリシアは嬉しいことを言ってくれるね。だが実際、お前は宝石と本どちらを選ぶかと言われたら、喜んで本の方を選ぶだろう?」
そりゃ宝石と本と言われたら本を選ぶに決まってるじゃないですかお父様! 図星すぎて何も言えない。輝く宝石も素敵だけれど、新たな世界にとびこめる物語も好き。ただどちらかと言えば本の方が好き。だって物語は語り継がれていくじゃない? 宝石も代々譲り受けていくものと思うけど、盗まれた時とか、売らざるを得ない時とか起こったら悲しくなるんだもの。
お父様もそれをわかっているのかにこにことこちらを見つめている。
「だから一度その宝石を見せて、アリシアが好むならブローチに、そうでないならアリシア好みの宝石を加工してもらおうと思ってね」
「なるほど、つまり私の好みを知りたいから連れてきたと」
「それもあるが1番はこうして娘と出かけてみたかったからかな。あとは街で今何がはやっているのか情報を掴んでおきたいのさ。情報は大事だからね」
お父様は貴族だけど、貴族だから偉いという考えはない。街の人達が支えてくれるから今の自分があるのだとよく言っていた。だからこそ街の人の意見や思いをきちんと汲み取り、それを変えるのが我々貴族の仕事だとも言っていた。よく言われるので一言一句覚えている。
「ふふ、相変わらずお父様は真面目ですね」
「その真面目さを引き継いだアリシアに言われたくはないな」
そう話していると目的地に着いたらしい。馬車を降りると少し質素ながらも品のある扉が目に入る。お父様は扉を開けると先に中に入るよううながす。
「ありがとうお父様」
私は宝石店に足を踏み入れた。
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