王子様も悩んでいる
エドモンド視点です。
彼女と初めて会った時のことを今でも覚えている。そう言っても彼女は覚えていないだろうけど。
あれは確か、6歳の頃だった。はにかみながら挨拶をする姿に惹き付けられたのだ。それからずっと彼女のことを目で追っていたらしい。らしいと言うのは母上が言っていたからだ。僕はそんなつもりは無かったのだが、そうだったのかもしれないと思うくらいには母上の熱意があった。今でもその時の話をすると母上の気分が高揚するからあまり話さないようにしてるけど。
婚約者を決める令嬢候補に彼女がいると知った時、迷わず決めた。彼女のご両親に挨拶を兼ねて挨拶に伺える時はどの服を着ようか悩んだくらいだ。執事のロナウドには「恋する乙女のようですね」と言われたがあながち間違いではない。きっとこれは恋だ。僕は彼女に恋をしているからこそ、こうして歓喜し悩んでいるのだろう。
それに「僕」という印象をよくするためには身だしなみはちゃんとしないといけないだろう?少しでも彼女に素敵な人と思われたらそれはそれで嬉しいじゃないか。
彼女の屋敷に招かれた時はすごく緊張した。当たり前だ視線の先に彼女がいるのだから。彼女と何を話したらいいか分からなかったのだ。馬車の中で聞きたいことをまとめていたのに本人に会うと全て飛んでしまった。情けなくて帰りの馬車ですごく落ち込んだ。
「どうしたんだいアリシア?」
「いえ、なんでもありませんわ。エドモンド様の髪がとても美しいなと思っていただけです」
「ありがとう、アリシアの髪もとてもきれいだよ」
彼女がこちらを伺っていることにはずっと気づいていた。話ができると思い勇気をだして話しかけたが、あっという間に会話が途切れてしまった。女の子と話すのはある程度慣れていると思っていたのに、好きな子を前にするとこうなってしまう自分のポンコツさにどうしたらいいか分からず、城に帰ってからロナウドに相談をして一蹴されたのは記憶に新しい。
だが一つ気になったことがある。時々彼女は見定めるような目でこちらを見ているのだ。初めは気のせいかと思ったが、何度も同じ視線を向けられるので嫌でも気づいてしまう。僕が何かしたのかと思ったが彼女は答えを出さなかった。
なによりいちばん申し訳なかったのが彼女が答えづらい質問をしてしまったことだ。あれは僕が悪いと思っている。僕としては彼女と共に人生を歩みたいと思っているし、妃教育に熱心に取り組む姿勢に感動したから大まかな目標が定まっているのだと思っていたから、軽い気持ちで聞いてみたのだ。
まさか悲しげな顔でこちらを見つめるとは思わず、僕もどうしたらいいか分からなかった。結局返答は聞けなかったけど、それは仕方ない。
「ロナウド、この本達はいったい……?」
「恋愛小説でも読んだらいかがです?」
「……は?」
「たまには息抜きも必要ですよ。……今の殿下には必要ないかもしれませんが」
机の上に置かれた今話題の恋愛小説達に目を丸くしてるとロナウドは紅茶を淹れ、一冊の本を取り出した。
「これとかいかがです?シルフィー嬢が好きだと仰っている古典文学の分類に入りますよ」
「あ、ああ……」
差し出された本を受け取る。意図が分からず困惑する僕を置いて、ロナウドは茶菓子を取りに行ってしまった。なんなんだいきなり、気を遣われていることだけはわかったが、伝えたいことが分からない。
「……」
手元にある本に視線を向ける。表紙には「愛の芽生え」と書かれていた。これを読んで恋愛の勉強をしろということなのだろうか。だがそれはそれとして彼女が好きな分野は気になる。
次会った時に彼女と話がしたいな。
僕は表紙を捲り彼女が好きな物語の世界に飛び込んだ。
面白い!続きが気になる!と思いましたらブックマーク&下の評価を5つ星にしてくださると嬉しいです!
してくださったら嬉しさで作者がその場で小躍りします“ᕕ( ᐛ )ᕗ,,
ぜひお願いします!




