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団結の芽は静かに息吹く

ぎりぎりぎりんご

「さて……今後の行動についてだが……」


 中庭のベンチに座り、顔を見合わせる。議題はもちろん、彼女(カタリナ)のことだ。


「先生に言われてもやめないあたり手の施しようがないな」

「ええ、私たちも困っております……」

「今の僕が言っても聞かないだろうし、改善の余地が見られなかったら生徒会長や学園長に話をしてどうにかしてもらうのはどうだろう?」

「確かに、生徒会長や学園長から言われたら行動を改めるかもしれません」


 私の視野の狭さが目立ってしまった。自分たちでどうにかしようと思っていたけど、彼女はたくさんの人の手を借りないとどうにもならない。現に三人の令嬢に言われてもやめなかったんだもの。アンドルー先生に頼んでもダメだったけど、諦めるのはまだ早いわ。彼女の基準が何かわからないけど、他の立場の方に言われたら改めるはず。


「だが……」

「ん?なんでしょうエドモンド様」

「アンドルー先生は男性だろう?」

「ええ、そうですね。とても真面目な先生でした」

「……」

「エドモンド様?」

「男性にたしなめられたからそれが癪にさわったのか、あるいは思い通りにいかなくて怒ったのか……」

「えっ?」

「思い返してみてほしい。彼女の香りを心地よいと思ったのは男子が多いんだろう?アリシアをはじめとした女子は不快な香りと言っていた」

「……言われてみたら確かに」


 エドモンド様の言う通り、三人の令嬢から庇ったのは男子だけだ。私も含め女子はこちらの様子を伺っていたし、カタリナ嬢を援護する人はいなかったはず。


「その中には婚約者がいる男子もいたのだろう?何かおかしくないか?」

「おかしい、とは?」

「彼女の香りが良いと思った者は、恋人がいる、いないに関わらず大半が男子だ。女子でそういった人はいない。つまり……」


 探偵のように推理を話すエドモンド様をじっと見つめる。エドモンド様は構わず話を続けた。


「纏っている香りには、男性に対して何か作用があるのかもしれない。例えば良い香りと感じたのなら、纏っている人に対して好意を抱く……とかね」

「そんなことがありえるのですか?」

「ありえるさ、ほら麻薬みたいなものだよ。麻薬も使えば幻覚を見たりするだろう?あれと似たものかもしれない」


 思わず息をのむ。ペネルティア王国では麻薬は違法だからだ。確かに花々に満ちた国ではあるが、はるか昔に麻薬を用いて人々を操り、戦争を起こしたことがあった。それは他国をも巻き込む大きな戦争で、その一件からこの国では戒めを込めて、麻薬に対し非常に厳しい取締法を設けている。


 もしあの香りの原材料が麻薬なら、彼女をはじめ製造者に至るまで、麻薬取締法違反に当たる可能性がある。


「つまりエドモンド様は、カタリナ嬢は麻薬を使い、人々を操っていると言いたいのでしょうか?」

「そうだね」

「ですが、香り材料が麻薬とは限りませんよ。それにこの国では麻薬に対して取締法があります。さすがにそれは決めつけがすぎるのではないのでしょうか……?」

「……そうだね、それはアリシアの言う通りだ。だが彼女の態度を見ていると、いくつか気になるが見えてね」


 気になる点?どこだろう。思わず眉をしかめているとエドモンド様はふっと笑う。


「実は僕、()()()()()()()()()()()()んだ」

「……………………えっ」


 エドモンド様は王子だからたくさんの人に名前を知られている事は分かるけど、カタリナ嬢はエドモンド様に()()()()()()()()()()ということ!?


「だから僕、彼女の名前をちゃんと知らないんだよね。なのにすごいグイグイくるから警戒しちゃって。多分あの香りが僕の言う通りのものなら、あの態度も納得してしまうというか……」

「挨拶をしていないのに……すごいですね……」


 開いた口が塞がらないってこういうことかしら。だいたいは序列の低い貴族が高い貴族に挨拶をしたり、紹介してもらって交流を深める……という流れなのだけれど、その基礎的なことすらしていないとは本当にびっくり。


 目を瞬かせていると、エドモンド様は右手を顎に添えると言う。


「彼女の様子だと男子に囲まれて満足、ということもなさそうだし。なぜ僕とロナウドがいたタイミングを狙って話しかけてきたのか、とか彼女の考えが知りたいな」

「そ、そうですね……ですがエドモンド様に近づくということは王家の人間と関わりを持ちたいからなのでは?」

「それならアリシアみたいに婚約者候補としてうちの娘を!って彼女の家から送られてくるでしょ」

「序列が低くて送れなかった……とか」


 婚約者候補は伯爵家以上の令嬢でないと送れなかったはず。カタリナ嬢がどの家の令嬢かは分からないけど、伯爵家以下の令嬢であればいたし方ないこと……。


「……あ」

「どうしたんだい?」

「カタリナ嬢、確か自己紹介の時にユーグリットとおっしゃってましたね」

「ユーグリット……確か南の方を治める侯爵家だね」

「……私と同じですね」


 謎は深まるばかり、うーんと唸っていると予鈴の鐘が鳴った。


「結局、話が逸れてしまったね」

「いたしかたありませんわエドモンド様。ですが香りの材料を特定してみるというのは一つの手かもしれません。これが麻薬を使っているのなら、大事件になりますから」

「そうだね、ロナウドには悪いけど働いてもらおうかな」

「……嫌そうな顔しそうですね」

「ははっ、想像できるよ」


 廊下を歩きながら話していると、教室にたどりつく。名残惜しいけど、授業を休むわけにはいかない。


「ではエドモンド様、また」

「ああ、また話そう」


 私は一礼して、教室のドアに手をかけた。

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してくださったら嬉しさで作者がその場で小躍りします“ᕕ( ᐛ )ᕗ,,


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