誰が花で誰が虫か
「そんなことが……それは大変だったねアリシア」
「はい……午後からの授業を受けるのが憂鬱です……」
向かい側に座るエドモンド様の言葉を受け取り、私はため息を吐いた。
お昼休み、私とエドモンド様は食堂で昼食を摂っていた。なぜ一緒にいるのかって?食堂に行く道中にお見かけしたので、そのまま声をかけました。エドモンド様もちょうど私を探していたみたいだったので良かった。
「いくら亡くなられたお母様の形見とはいえ、迷惑をかけるのはよくないな」
「そうなんです。担任のアンドルー先生にも話したのですがどうやら逆効果だったみたいで……」
「それは困ったね……何か良い手はないだろうか……」
周りに聞こえないよう、二人でコソコソと話す。まるで作戦会議をしているようで、少し気分が上がる。こんな時にそんなことを考えているのは失礼かな、と思いながらサラダを口に運んだ。
「男子の半分近くが今のままでいいと思っているのは驚きだね。……そんなによい香りだったのかな、あれ」
「えっ」
小さく呟いたエドモンド様の言葉に反応する。その様子だと会ったことがあるの?なんて声を掛けたらいいのだろう。考えているとエドモンド様が微笑んだ。
「実は昨日先に校舎に向かっただろう?その時に一人の生徒と会ったんだ。その子が纏っていた香りがアリシアの話している子と似ているからもしかしてって思ったんだよ」
えっもう会ってたの!?違うクラスで良かった〜って思ってたけどエドモンド様は彼女ともうすでに会ってたの!?でもその言い方だとあまり快く思ってなさそう……?
「彼女僕に教室の案内をしてもらいたかったのだろうけど、あまり好みの香りではなかったし、気になる点がいくつかあったから断ったんだ」
「あらぁ……」
いやもうその行動力はすごいと思うカタリナ嬢。ただその力を別のベクトルに活かせないかなとは本気で思うけど。そもそも王子であるエドモンド様に案内させるって……肝が座っていると言うべきなのか……。案内してもらえるって自信があったのかもしれない。
「ロナウドもそばにいたけど、彼も快く思ってなかったね」
いつもエドモンド様の隣にいる執事のロナウドさんを思い出す。ロナウドさんはエドモンド様相手でも結構バッサリとおっしゃるし、好き嫌いがハッキリしている方だから、カタリナ嬢に対して表面上は笑顔で対応するけど、いなくなった途端すごい嫌な顔して話してそう。
「ロナウドさんは彼女がいなくなった時にいろいろとおっしゃってそうですね」
「うん……すごかったよ。ロナウドとは幼い頃からの長い付き合いだけど、あそこまで言うのは初めて見たかな……」
エドモンド様が少し遠い目をしている。その様子からかなり言ったらしい。あのロナウドさんにここまで言わせたカタリナ嬢、別の意味で恐ろしいのでは?やはりここは彼女と関わらないのが一番かもしれない。今後のことを考えると胃が痛くなりそうだが、私の気持ちを理解してくれる人がいるだけで心強い。
ふわりと、甘い香りが広がった。
先ほどまで遠い目をしていたエドモンド様の顔からスっと表情が抜け落ちる。
「エドモンド様……?」
「アリシア、件の彼女は今こちらに向かっている黒髪の方であっているかな?」
「え……?」
振り返ると、カタリナ嬢が笑顔でまっすぐこちらに向かってきていた。空いている席はたくさんあるのにどうして……?
彼女の考えなど私にわかるわけもなく、食事を載せたトレイを持ったまま彼女は近くにいる私を無視してエドモンド様に話しかけた。
「エドモンド様ぁ、お隣よろしいでしょうか?」
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