怨まれることはしてません
結論から言うと、彼女の香りは改善するどころか悪化しました。泣きたい。
担任であるアンドルー先生に事情を話したのは良かった。問題は先生がどう伝えたかわからないけど、多分なにか引っかかったんだろうな……昨日よりもさらに香るようになってる。クラスの反応は半々といったところ。良い香りと思う男子と、不快だと思う女子と一部の男子……と別れてて頭が痛くなりそう。私を含め何人かは中立の立場としているみたいなのが救いかもしれない。巻き込まれたくないけど。
教科担任もこの様子を見てびっくりしてるしどうしたらいいのやら……。彼女の様子を見るに改めなさそうだし……。
「ねえ、あなた」
うんうん唸っていると声が聞こえ、顔を向ける。カタリナ嬢が座っている席の前に三人の令嬢が立っていた。
「その香りをどうにかしてくださらない?あまりに強く香るので気分が悪くなりますわ」
「そんな……この香りは私の母が好きだった香りなんです……この香りを纏っていると母が私を見守ってくれてると思えるからつけてるのに……つけるなと言いたいのですね……」
涙目になりながら話す彼女を見て、令嬢たちは声を詰まらせる。その様子を見た一部の男子が立ち上がり、令嬢たちに詰め寄った。
「カタリナ嬢の思い出の香りを侮辱するとは無礼な!」
「私たちはこの強い香りをどうにかしてもらいたいのであり、香りに対する侮辱はしておりません。付けるなとも言っていませんが……どう解釈したら今の発言に繋がるのでしょう」
確かに彼女は「あまりに強く香るから気分が悪くなる」とは言っているけど、「品がない」とか「嫌な香り」といった侮辱の言葉は使っていない。だがそれは私の目線だから言えることであって、彼女は侮辱と捉えたんだろうな……。多分アンドルー先生の指導もそう捉えたから反抗の意味でさらに強く纏ってるのかも。考えていると二人の言い合いはまだ続いている。耳をすませば、令嬢の方が優勢らしい。
「母親の形見を纏うなんて母親思いの素敵な子じゃないか」
「……呆れた、あなたとは話が通じませんわ。カタリナ嬢、私は香りを纏うなとは言っておりません。ただ、纏うのであればそれ相応のものにしてください」
「……ひどい、母はこれくらい強い香りを纏っていたのに、私はしてはいけないのですか」
「……話が通じませんわね。よく分かりました。似たもの同士仲良くするといいわ」
埒が明かないと言った風に令嬢たちはその場を去り、教室をあとにした。結果はどうであれ、カタリナ嬢に意見した勇気を私は讃えたい。ありがとう、そしてお疲れ様。
「カタリナ嬢、彼女たちの言うことは気にしなくていいんだよ」
「そうさ、お母様の形見を大事にする君はとても素敵だよ」
「みんな……ありがとう……」
話し声が聞こえたのでカタリナ嬢に視線を向けると、男子たちが彼女を慰めていた。彼女と目が合う。途端、一瞬のうちに目付きが鋭くなりこちらを睨む。あまりの変わりように驚き、思わず目をそらす。どうしてあんなに睨まれないといけないのか。今回私無関係なんですけど。
明日から避難先に行こうかな。授業の準備をしながら、私はため息を吐いた。
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