薄暗い雲のような気持ちを抱く
疲れた、一通り説明を聞いたあと案内された部屋のベッドに寝転がる。
式のあと、教室に戻り挨拶をしたまではよかったのだけど……彼女がすごく、個性が強かった。
「カタリナ・ユーグリットと申します。特技はピアノです。クラスの皆さんと仲良くなりたいです。よろしくお願いします」
そうにこやかに笑う彼女は百合の花が周りに咲いてそうな美しさだったのだけど、あの甘い香りで全て台無しにしてしまっていた。クラスの女子はだいぶ眉をしかめて彼女を見ていたし、男子は見とれてる子もいれば、煩わしそうな顔をしていた。クラスの数人は彼女に惚れたんじゃないかな?
その後寮におのおの寮に向かったのだけど、彼女の周りには男子しかいなかったの怖いな……。彼女も満更でもない反応をしていたし、メリューさんが話していたのは本当みたい。婚約者がいると聞いたことがある殿方も彼女のそばにいたし、学園生活不安しかない〜!
ただ唯一の救いはエドモンド様は別クラスだったことかしら。でも彼女のあの様子から隙あらばって感じでエドモンド様に近づきそう。いくら婚約破棄されると分かっていてもね、自分の目の前で違う人と仲良くしている姿を見るのはつらいのよ!
ため息を吐く。明日からが憂鬱……。
「大丈夫ですかお嬢様?」
「今後の学園生活が不安でしかないわ……」
「あら……何かあったんです?」
「聞いてよエマァ……」
エマがお茶を淹れてやってくる。彼女の優しさを身に染みつつ、私は今日あったことを話した。うぅ、紅茶が美味しい。
「それは……大変ですね……」
「明日からあの香りが毎日匂うと思うとつらい……」
「どんな香りなんです?」
「甘い香り……まるで砂糖菓子を煮詰めたような、そんな香り」
「あら……それは……こう、ぶわってなりますね」
「ぶわってなるのよ……それに彼女、なぜか私を睨むの。すごく怖い」
「まあ!お嬢様を睨むとは許しがたいですね。初対面だと言うのにどうして……」
「……」
私の方は夢で知ってる、なんてことを話したら心配されちゃうから言わない。
「いかがいたしましょう?こちらも軽く香りをまといますか?」
「そうしたら他の人の迷惑になるからやめておくわ」
「そうですよね……あの、これは無謀かもしれませんが、彼女に控えるように話してみるのはいかがでしょう?ただ睨まれているので逆恨みされそうですが……」
「そうなのよ、逆恨みされそうで怖いのよ……」
彼女みたいなタイプって絶対何か言われたらやらかしそうで怖い。偏見だけど絶対やりそう。だって怖いもん!
「先生に話してみようかしら」
「それが一番無難ですね……」
「それでも改善されなかったらクラスの女子たちと対策を練るわ」
「改善しないことがあるのでしょうか?」
「彼女の性格上、改善しなさそうだもの」
「ああ……まぁ、私も話を聞く限りでは良くて自分を持っている。悪くて我が強いですものね」
「ええ……」
エマに空のティーカップを返し、寝支度を済ませたあと、憂鬱な気持ちを抱きながらベッドに潜り込む。
「おやすみなさいませ、お嬢様」
「おやすみ、エマ」
――明日は平穏でありますように。
そう願いつつ、私は静かに目を閉じた。
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