少しの疑問は泉のように広がる
久しぶりの投稿、ここ最近は色々と忙しすぎました……。
エドモンド視点です。
しまった、新入生代表の挨拶の前に打ち合わせがあることを忘れていた。早歩きギリギリ間に合うかぐらいだろう。ロナウドと共に中庭に続く廊下を早歩きしていると、目の前で誰かが倒れた。時間が気になるが、怪我をしていないか不安だ。その人の元に駆け寄り、声をかけ手を差し伸べる。
「大丈夫かい?」
「はい……ありがとうございます」
長い黒髪の少女が顔を上げ微笑む。制服の状態から、僕と同じ新入生だろう。やけに甘い香りが鼻につく、まるで砂糖菓子を煮詰めたような匂い。この香りが好きだと言う人もいるのだろうが、僕はこの顔を好ましいとは思わない。彼女を起こすとその香りがさらに広がる。早くこの場から去ろう。
「すまない、僕たちは急いでいるからこれで……」
「あ、あの、すみません」
先に行こうとすれば呼び止められる。隣にいるロナウドと視線を交わし、頷いた。手短に済まない場合、ロナウドに任せる。本当は方向音痴だからロナウドと一緒に行きたかったけど、内容によっては彼女一人では不安だろう。
「なんだい?」
「実は教室に行こうと思ったのですが迷ってしまって……」
思わずロナウドと顔を見合せる。付き合いの長い彼も同じことを思っていることだろう。彼は彼女を一瞥した後、一度瞬きをし、僕の様子を伺った。これは幼い頃に決めた二人のルールで、話に入っても大丈夫かと言う確認の時に使うものだ。もちろん、僕は頷き彼に参加を促す。ロナウドは彼女に顔を向け、口を開いた。
「教室に行きたいのであれば近くにいらっしゃる上級生に聞けばよいのでは?」
「えっ……」
彼女の目が大きく開く。僕たちも校舎の中に詳しいわけではないし、聞くなら上級生の方か先生が適任だろう。なぜそんな顔をされるのか理解できない。
これがアリシアだったら喜んで引き受けたけどね。……きっと迷ってしまうからロナウドが案内して僕はついて行くことになりそうだけど。
だが彼女の反応を見て分かった。初めから僕に話しかけるのが目的だと。ロナウドも同じことを思ったのか、相手にしてはいけないと悟り彼女が口を開く前に言った。
「それでは俺たちは急いでいるのでこの辺で、上級生の方に教えてもらってください」
「えっ、あの、ちょっと待って……!」
引き留める理由もないのにどうして彼女はここまで強く出れるのか。そもそも挨拶もしないとは一体……彼女の状態からどこかの令嬢だとは思うけど、あんな礼儀知らずでいいのかな?
彼女を無視して目的地に向かう。二人きりになると耐えきれなかったのか、ロナウドが口を開いた。
「彼女、なんだったんでしょうね」
「さあ?」
「ま、おおかた殿下とお近づきになりたい令嬢の一人でしょう。それにしても……」
ロナウドは顔を歪ませて言う。きっとあの香りのことだろう。
「すごい甘ったるい香りを纏ってましたね、香水か何かでしょうか?」
「それは分からない。ただかなり強い香りだったね」
「殿下は大丈夫ですか?鼻曲がってませんか?まるで娼婦みたいに香りを纏わせてましたね」
「ロナウド、彼女は曲がりなりにもどこかの令嬢だよ。そんな言い方をするんじゃない」
「すみません」
話しているうちに目的地に着く。懐中時計で時間を確認すれば、ギリギリと言ったところだ。間に合ったことに安堵しているとロナウドが扉を叩く。声が聞こえ、少しやり取りをしたあと、ロナウドが扉を開いた。
「さ、殿下」
「ありがとう」
彼女に抱いていた疑問を頭の片隅に追いやりつつ、僕は中に入った。
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