その輝きはとても美しく
さてさて久しぶりの彼の登場です
覚えてますか?
「……やっぱり夢か」
見慣れた天蓋に思わず落胆する。もう少し夢を見ていたかったな。ベッドに丸まり、夢の内容を思い出す。幸せな夢だった。夢の中で流れていたワルツを口ずさみながらベッドから降りる。この夢を記録するために机に向かう。
あの光景が続けばいいのにと願う私は強欲なんだろうか。ノートを開き、覚えている範囲で内容を書いていく。ひと通り書き終えると、ページを捲り今まで見ていた夢を確認する。
「やっぱり……」
今まで見ていた夢が未来だと気づいてから、幸せな夢が続くようになっている。図書館の夢、そして今日見た夢。
「自覚しただけでここまで変わるのね……でも何がきっかけなのか分からないわ……」
うーんと頭を捻っても、答えは出ない。
「それに、今回の夢は私が自分の意思で体を動かせたのが気になるのよね」
ペンを置き自身の手を見つめる。指を動かしたりふらふらと振ったりいろいろ動かしていると扉を叩く音がした。
「おはようございますお嬢様、お目覚めでしょうか」
「おはようエマ、入って大丈夫よ」
「失礼します」
ノートを収め、入ってくるメイドを出迎える。エマは一礼し、声を掛けた。
「おはようございます。本日のご予定は妃教育の後に宝石商に向かうことになっております」
「あら、もう完成したの?」
「指輪が完成したそうです。ブローチはもう少し時間がかかるとのことでした。ブローチと一緒に取りに来ても構わないそうですが、スケジュールを確認しましたところ先に指輪を取りに向かった方がよろしいそうです」
「そう、分かったわ。今日の妃教育は午前中だけだものね」
「座学がメインと聞いております。本日は街に行くことを考慮して動きやすい服装にいたしましょうか?」
「それでお願い。髪もまとめてくれると助かるわ」
「かしこまりました。ではこちらへ」
エマに促され鏡台に座る。いろいろ気になることはあるけど、今はやるべき事に集中しよう。
妃教育を無事に終え、宝石商に向かう。そういえばあの店員さんいるかな?今日こそはお名前を伺うぞ……!と意気込みながら中に入る。
「いらっしゃいませ」
いたー!彼の声がして思わず口元が緩む。革靴の音が近づき、止まる。彼は一礼し私を出迎えるとお待ちしておりましたと微笑んだ。
「指輪が完成したと聞いて受け取りに来ました」
「はい、今準備をしておりますのでしばらくお待ちいただけますと幸いです。部屋に案内しますのでどうぞこちらへ」
言うのはいましかない!頑張れ私!
「……あの」
「はい、なんでしょう?」
彼が足を止め振り返る。長いネイビーブルーの髪がふわりと揺れた。
「あの、あなたのお名前をお伺いしたくて……」
「名前……ですか?」
「ええ、以前文学のお話で盛り上がったじゃないですか?あそこまで古典を語れる方が周りにいないからとても嬉しくなって熱く語りあえたのはいいのですけど、その、名前を聞き忘れてしまって……」
「……言われてみたら私もあの時名乗っていたものだと思っていましたが、ちゃんと名前を名乗っていませんでしたね。失礼いたしました」
彼は考える仕草をした後、恭しく一礼し、瞳を三日月の形に変え名を告げた。
「私はルフレと申します。以後お見知りおきを」
「ルフレ……素敵な名前ですね」
「ありがとうございます」
「申し遅れました。私はアリシアと申します」
「アリシア様ですね、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。……あ、あと」
「はい、なんでしょう?」
「実は今度からあなたに私の担当をお願いしたくて……だめでしょうか?」
「私は構いませんが……よろしいのですか?」
「あそこまで文学を語れるあなただからこそお願いしたいの」
「おや、そう言っていただけるとは光栄です。ありがとうございます。オーナーには私から話しておきますので次回からは私が担当致しますね」
「お願いします。これから担当としてよろしくお願いします、ルフレさん」
「こちらこそよろしくお願いします、アリシア様。さ、どうぞこちらへ」
は、話せた〜!よかった〜!担当にもなってもらったし、次から宝石商に行くのが楽しみ〜!るんるんしていると以前案内された部屋に通された。ソファーに座って待っていると小さな箱を持ったオーナーがやってくる。
「お待たせいたしました。こちらが指輪になります」
「わぁ……素敵……!」
箱を開き、中を見ると夢で見た指輪が入っていた。夢で見た時よりもすごくきれい……!見とれているとオーナーに声を掛けられた。
「素敵な宝石でしょう?お気に召したようで何よりです。サイズの確認だけお願いしてもよろしいでしょうか?」
指輪を取り出し、サイズを確認する。指にはめるとぴったりで私だけの指輪という事実に気分が高揚する。サイズを確認したオーナーが一声かけて私の指から指輪を外し、箱に収めた。
「ブローチはいつ頃完成予定なの?」
「ブローチはあともうひと月ほどかかりますかね。待ちきれませんか?」
「ええ!とても!だって指輪がこんなに素敵なんですもの……ブローチはもっと素敵なんだろうなって思うとすごく完成が待ち遠しいわ……!」
「それはそれは、とても気に入っていただけて光栄です。ブローチは完成次第こちらからお届けいたしましょう」
「いいんですか?」
「ええ、それにブローチの完成時期ですと他の宝石の加工もできあがっておりますので」
「ならお願いします。お父様には私から伝えておきますね」
「ありがとうございます」
「では、私はこれで。ブローチの完成、楽しみにしてます」
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
指輪が入った箱を受け取り、私は店を後にする。今日はルフレさんのお名前も聞けたし、素敵な指輪も完成したからいい日だわ。また明日も頑張ろう。
私は馬車に乗り込み、帰路に着いた。
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