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呪われ男と眠り姫〜転生したらゴーレムになった私〜  作者: 蜜柑缶


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2 ひねり過ぎじゃない?

ログイン出来なくてちょっと焦ってしまった。

無事に投稿できてひと安心中です。

 会場から廊下に出て歩くスピードをあげる。勿論優雅さの限界は越えずに進み何度か角を曲がりマディソン王家の密偵も振り切って周りに誰もいないことを確認すると侍女の名を呼んだ。今は馬鹿王子のせいで王家側の人達がパニックになり人数が減っていたので上手く行ったね。


「イルゼ!」

「はい、お嬢様。殺っても良いのですよね?」

「直球過ぎよ、今は駄目に決まってるでしょ」


 私の言葉に物陰からするりと出てきたイルゼは手にしていたナイフを渋々収めた。小国とはいえエデル国の王女である私の侍女なので多少の武術も心得ている。


「いつなら良いのですか?」

「それよりお父様へ、エデル国王陛下へ連絡する方が先でしょう?」

「既にクルトが走ってますわ。連絡係に知らせたら直ぐに戻りますので緊急事態ようの打ち合わせ通りあちらの部屋で待機です」


 私達は予め決めてあった安全を確保した部屋へ向かって足を進めた。ここは自国ではない為あまり信用できる人員確保に余裕が無く、表向き常に側に控えているのはイルゼのみ。学院の外には身分を偽装した味方がいて、内には隠れてクルトという護衛が付いてくれているがこういう連絡が必要な時は一瞬隙が出来る為あまり動き回れない。


 今回あのお馬鹿殿下が卒業のタイミングで何かやらかしそうだとは思っていたが、まさかの自分の馬鹿さ加減を周知するのに全振り出来るパーティー会場で決め込んでくるとは流石に思わなかった。


 ダニエル殿下がヤバいという情報は既にマディソン王室でも大問題になっていたのだが、若気の至りだろうと望み薄な方に賭けた王家はかなりぬるい。マディソン王国の第一王子で王太子はまだ優秀な方だったからすっかり油断したのだろう。


 だけど巻き込まれる私からすれば人生がかかってるので色々と対策は練っていた。幾つかの対策の中に最悪の想定、婚約破棄もありその場合は秘密裏に国を脱出し自国へ戻る予定だった。


「やっぱり国外脱出でしたね。クルトから賭けの回収しておかなきゃ」

「私で儲けるのやめなさい」


 イルゼはすみませーん、テヘペロって感じで場を和ませてくれているが本当はかなり私を心配してくれていることはわかっている。幼い頃からずっと付いてくれているイルゼは今日に至るまで何度も国へ帰ろうと私に進言してくれていた。お馬鹿殿下の目に余る所業に帰らないなら暗殺しようと笑顔で持ち掛けて来ていたが、何とか説得を続け卒業(ここ)まで持ち込んだのに結局これだ。


 奴は周辺国の力の均衡など頭の片隅にも入っておらず、『国策? ナニソレ美味いのか?』と言って側近たちを慌てふためかせた逸話があるとか。まぁ入学早々(いにしえ)のハニートラップにズブズブな時点であらゆる国の行事から締め出され、第二王子としての仕事は全て私が代理としてやらされていたから改善もへったくれも無かったのだが。


 無論私としても耳糞ほども王子と結婚などしたくなかったが、国の為に奥歯が砕け散りそうなほど耐えていたのだが、破棄ならもういいでしょう。しかもアチラ有責は確実。

 えぇ、えぇ、狙ってましたとも下手にねっとりピンク令嬢が妊娠などして側妃扱いにならないように密かに避妊剤を盛りつつ様子を窺ってましたとも。なんであんなクソに嫁がなきゃいけないのよ。


「ではこちらで暫く待機です。お茶をいれますね」


 イルゼがとある部屋の扉を開けると中を確認し私を通した。


「濃い目でお願い」


 私はやっとひと息つくとソファに深く体を沈めた。


「まだ気は抜かないでくださいまし」


 イルゼは部屋の隅にある給湯室(パントリー)へ向かった。さして広くない部屋なので声が届く範囲だ、離れているという感じではない。


 それが油断だったのだ。


「予測していたとはいえ疲れるのは避けられないのね」

「ふふふっ、そればかりは仕方がありませんね。でも良かったです破棄されて」


 私もそうねと笑い目を瞑ると頭の中でこの目まぐるしい事態を整理していく。


 私はどうやら前世の記憶が蘇ったらしい。今のエデル国王女ハイデマリーとしての記憶と前世の……名前までは思い出せないけれど何某かの記憶。町中の様子や食べ物、飛行機や車、自転車などこの世界では見たことが無い物が次々と思い浮かぶ。

 ライトなオタクであったせいで転生モノや前世モノもよく知っているので思ったよりも落ち着いて行動できた自分をここで褒めておこう。

 二つの記憶を持ってしまったが取り立てて不便は無いだろう。なんなら国へ帰ったらチートとして何か使えないかと今から楽しみでもある。


 そんなちょっと浮かれ気分だった事もいけなかったのか。


「ちょっとちょっと、ちゃんと断罪されてくれないとでしょう? 仕方ないから力技で行くよ」


 扉は静かに開かれ気がつけばねっとりピンク令嬢が私の側にいて手にした禍々しい何かを私に投げつけていた。古ぼけた数珠のようなそれは私に当たると大きな破裂音と共に暗闇を作り出しあっという間に意識が遠退く。微かにイルゼが私の名を呼んだ声が聞こえた……







 ……ざめよ……


 え? なに? 聞こえない……


「目覚めよ……ゴーレムナンバー(ファイブ)!!」


 暗闇の中にぼんやりと明かりが灯り呼ばれた気がしてそこへ意識を向ける。起き上がろうとするが頭が重く、何とか動かそうとするとガコッと視界が揺れる。変だなと思いながら目の前にいる人影をじっと見た。


「おぉ、ワシがわかるか! そうだ、ワシこそがお前の主である偉大なる魔術師ナータン様だ」


 ……なんだコレ? え、偉大な、なんだって? ちょっと頭痛が……


 私は右手を持ち上げ自分の頭に触れようとして出来ないことに気がついた。肩辺りまでは何とか動くがそれ以上は無理で、しかも動きを確認しようと肩を回そうとしてもあまりよく動かない。それは反対の左側も同じで反射的に自分の体を見下ろしたら……なんだコレ。


「ふむ、まだ滑らかな動きは無理そうだな。まぁおいおい改善してやる。だが今日からしっかり稼いでもらわにゃならぬからの、早く来い! こっちだ」


 えぇっと、これついて行かなきゃいけない感じなのっていうか、これは何? なんかボウっとする。私は今何処にいるの?


 見下ろした私の体? らしきものは有り体にいって土塊(つちくれ)だ。本当にだたの土塊。見るからに硬そうで色味も何の捻りもない土色。しかもさっき目の前にいたジジイが私の事を見て「ゴーレムナンバー(ファイブ)」とか何処かで聞いた香水みたいな呼び方をしていていた。


 なんなんだ、コレ!?


 頭の中は絶賛パニック中だけど何故か体はさっきのナータンとかいうジジイの言葉に従い後をついていく。自分の意思とは関係なくって感じではなくそうしなければいけないという思いが体を動かしている。


 とにかく行かなきゃ。


 パニックは治まっていないが自分を落ち着かせる為に辺りを観察する。どうやらここは洞窟の中らしく薄暗い狭い通路が前後に続いている。先程私が目覚めたらしい場所は通路途中の少し窪んだ空間で人目を忍んでいたという感じだった。


 ナータンの後ろを追うようについて行くが体は動かしにくく上手く進めない。もどかしくて足元を見ようとするが体がかたくて屈めず足先が少し見えるだけだ。一歩一歩慎重に進まないとバランスも悪くふらふらとする。ナータンにも置いていかれそうだ。


 ちょっとナータン、どうにかしてよ!


 叫ぼうとして叫べ無いことに気づいた。


 言葉が出ない。話せない! 


 と更にパニックを増しかけたその時洞窟の突き当りにたどり着いた。


「ここがお前の働く場所だ」



 

読んで頂いてありがとうございます。


次話も読んでみようかなと思ってしまった方はブクマ、イイね、評価を宜しくお願い致します。


かなりヤル気に繋がります。創作中の心の安寧でもあります。


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