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普通の女の子

おじいさんのありがた~い おはなし。

 超満員の観客の中、「酒呑童寺ライヴバトル」が開始された。

 観客たちは、大江山特産「赤ワイン」でいい気分になっている。


「さあ始まりました。本日のライヴバトル、計4組のユニットが、チャンピオンに挑戦します。さて、本日の審査員のみなさんの紹介です。」

「まず、みなさんご存じ、ミスターコブ~!」

場内から大歓声が巻き起こる。

「本日は、この元こぶとりじいさんが、どのタイミングで踊り出すのかが、勝敗のカギとなります。」


「続いて、ミスターフルムーン道長!」

「みなさん、よろしく!」

道長は、紫のサイリュームを振りまわしている。


「ちょっと待って、なんでここに関白殿が?」

「わたしは、なぜ占ったんでしょうか?」

保昌と晴明が顔を見合わせている。


「さて3人目の審査員は、あしっしゃーどーまん!」

「道満ですか?あれは、わたしには何でも反対ですね。」

蘆屋道満(あしやどうまん)は、晴明を見つけると、うれしそうに手を振ってくる。


「最後に、歌の世界の第一人者といえば、この人、ミスターきんとー!」

「ちょっと、あのおじいさん、朝ぼらけおじさんのぱぱだわ。」

公任じいさんは、なんか小式部の方を見て手を振っている。


「今日は、もう一人特別審査員がおります。『おにふたーず』のドラマーで、酒呑童子様の右腕、茨木童子!」

茨木童子は左手を振って、あいさつしている。右腕がないようだ。


「本日は、この5人の皆様に審査していただきます。」



「さあ、本日の1組目の挑戦者です。エントリーナンバー1番、五人囃子~!」

コールとともに、笛や、小鼓、大鼓、太鼓を持った楽隊をバックに、老人がうたいだした。

「なんか、眠くなってきました。」

「あれなら、わしの笛の方が……。」

「ほう、保昌殿は笛を?」

「ええ、博雅さんには、かないませんがね。」

「そうですか……。では、この笛『葉二』をお持ちください。」

「これは有名な…。」

「貸すだけですよ。いざとなったら、刀より役に立ちますぞ。」

 気づいたら場内で多くの人が眠ってしまっている。ミスターコブーも熟睡している。



「さて、2組目の挑戦者です。エントリーナンバー2番、バンタナ組!」

コールはしたが、なかなか出て来ない。

「バンタナ組……。あ~と、やっと登場です。」

ロシア民謡のような音楽が流れ、7人の若者がローラースケートに乗って……。

小式部の方を見て、逃げて行った。

「ガラスのハートだったようです。何を恐れたのでしょうか?」


「根性ないわね。最後まで戦いなさいよ。」

「いや、あれだけ十二神将に、やられたんですから、来ただけ偉いですよ。」

「まあ、おれなら、最初からこないかもな。」

と、小式部たちが勝手なことを話していると……。


「さあ、盛り上がってまいりました。3組目の挑戦者です。さあ、『酒呑童寺』のアイドルといえば、この人たち、エントリーナンバー3番、三人官女!」

保昌があわてて

「あのセンター、まさか? え? そんな?」

なんと、センターは和泉式部。左右に紫式部と清少納言。

「どこのひな人形だ?」

「なんで、センターが人妻なんだ?」

「三人官女のセンターは、既婚者って決まってますよ。」

「ママ、かわいい!」


センター和泉式部は、堂々と王道アイドルソングを

「そーれ、それそれ、いづみ、むらさき、なごん。」

「らぶりらぶりー、いづみ!」

「ちょーぜつかわいい しきぶ!」

「なごん、なごん、なごん」

まさにアイドルグループのコンサートのようだ。鉢巻きを締め、揃いのはっぴを着ている「親衛隊」。

メンバーに合わせたサイリューム。

関白殿が、音楽に合わせて、紫のサイリュームを振っている。



「晴明さん、博雅さん。わたしなんかわかった気がするわ。パパは、あれだけど…。」

保昌は、必死で「いづみは俺の嫁!」って叫んでいる。

「そうですね。原因は、紫さんですね。」

「ライヴの打ち合わせとか、レッスンで帰ってこない。」

「それを関白殿が心配したってことですか。」


曲が終わると、場内が暗くなった。そしてセンターにスポットライトが。

「今日は、わたしたちから、みなさんに大切なお知らせがあります。」

「わたしたち、普通の女の子に戻ります。」

いや、お前は人妻だろう、って保昌が、叫んでいる。


「えーと、それはどういうことなんですか?」

「わたしたち、今日で解散します。」

「えー!」

もう数十回目のお約束の解散宣言なのだが、驚いてみせるのがお約束であった。

「音楽性の違いとかが、原因ですか?」

打ち合わせ通り司会者が、インタビューを始めると、突然、清少納言がマイクを奪った。

「その紫の娘が、人とのこと、知ったかぶりとか、パパは有名な歌人なのに、娘はへたくそとか、陰で悪口を言うんです。」

というと、清少納言はマイクを紫式部の前に叩きつけた。紫式部はマイクを拾うと、

「わたくしが。いつそんなことを申しました?何日の何時何分何十秒?」

といって、マイクを清少納言の前に叩きつけた。清少納言はマイクを拾って

「この腹黒女とは、もう一緒にやりたくありません。」

と、またマイクを叩きつけようとするので、司会者が止めて、紫式部に別のマイクを渡した。

「こんな娘なら、わたしの娘のほうが、かなり優秀ですわ。」

「あの、むらさきさん。娘さん?」

マイクがぼろぼろになりそうで心配していた司会者がつっこむと 

「あっ、設定です。」

「設定? あんた。陰で自分の娘の自慢しているくせに」

「そんなこと、いつ申しました?何時何分何十びょう?地球が何回まわった日?」


そんな中、お約束のプロレス芸を和泉式部が、強引にまとめに入る。

「そんなわけで、わたしたち、今日『は』、お別れなんですね。」



「ちょっと待った。紫よ。戻って来てくれるのか?」

突然、プロレス芸がわからない関白が、舞台に上がってきた。

「まあ、仕事が終わったら帰りますわ。」

「よかった、よかった。」

関白殿は、涙を流している。



「これ、解決ですね。」

「保昌さん、仕事終わりみたいですよ。」

保昌も涙を流している。


「さあ、次は私たちよ。晴明さんよろしくね。」

小式部内侍は博雅三位と舞台に向かった。



【ごきょうくん】

おじいさんとの約束だよ。

設定って、大事なお約束だよ。


お約束の卒業芸


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