出発準備
依頼者のケレリスに会いに研究所の教授室に向かう。
依頼の面接を今すぐにしたいと相手からのメッセージが届き急いで向かっていた。
「研究所って学校なの?」
初めて来た研究所は学校のような場所だった。
それぞれが教授に付いて研究を進め論文を書きそれが認められると独立したり更に別の教授に付いて研究したり同じ教授と研究を深めたりしているそうだ。
案内をしてくれている受付の職員に説明してもらう。
ケレリスと書かれたプレートの扉をノックした。
「護衛依頼の面接に来たのですが。
ケレリスさんはいらっしゃいますか?」
「鍵は開いてるから入って来て少し待ってて」
案内の人は仕事に戻っていった。
「お邪魔します」
俺達は部屋を覗く資料がいっぱいの奥で荷物を纏めて旅の準備をしている姿がある。
「面接に来たのですが?」
「ハイハイ。今行くから」
資料の奥からこっちに顔を出して俺と目が合う。
「「あー!あの時の」」
俺とエルフの教授はお互いにびっくりする。
「あの時は逃げられたからね」
エルフのケレリスは獲物を見つけたように俺を見る。
「俺は会いたくなかった」
「二人は知り合いなの?」
ホチネが二人を見比べて俺の顔色を見ると、
「エルフですよね?
竜人が護衛だとトラブルになるかもしれないので今回の話しはなかった事に!」
ホチネは頭を下げると俺の手を引っ張り部屋を出た。
「待って!私は研究者だ!
竜人とかエルフとかは気にしない。
それにその子にも興味がある。
今回の旅で護衛を頼めばしばらく一緒で話しも沢山できるな!
合格!
明日の朝出発だ。
馬車はこちらで用意する。
夜は馬車の荷台で寝て見張りは交代だ。
食料や個人で必要な物は各自用意。
後は今回の旅の目的はこの国でゴブリンの盗賊が増えた理由の解明だ。
対岸のゴブリンの国で何かあって密入国が増えたのか?私の研究分野のいろいろな生物の大量発生の一環と関係があるのか調べたい。
大事な事忘れてた二人のギルドランクはC以上だよね?」
ケレリスは早口でまくし立てる。
途中、気になる事を言っていた気がする。
ホチネはギルドカードに魔法石をかざしランクCを証明して、
「二人ともランクCです。
ゴブリンなら人数次第ですが余裕だと思います。
ただあたし達は馬車の操縦はできません。
それでもいいですか?」
「操縦は私がするので大丈夫。
教授をしてはいるがエルフなので戦闘も出来る。
今回は生きたまま捕らえて人口が増えた理由を聞き出したい。
全員殺すのはなしでな!」
「解りました。
それではまた明日」
今日はホチネが一人で話しをまとめてくれた。
帰り道。
食料を買うのに店を何軒か回り最後にメチザの所で連絡先の交換にする事にした。
食料を俺の袋にしまいながら、
「いつも俺に面倒事させるのに何で今日はホチネが話しをまとめてくれたの?」
「フゥがあのエルフと話したくないみたいだったからね。
それからエルフと旅をするのは気を付けないといけないの。
明日からちゃんと気を引き締めること!」
ホチネに明日からのケレリスとの付き合い方を注意されながら歩く。
「ここの店の裏の倉庫にメチザが居るから」
俺達は倉庫の入り口でメチザを呼ぶ。
「居ないのかな?」
何度か呼ぶが返事が無いので表の店に行ってみた。
店の扉は閉まっていて休みのようだ。
「タイミング悪いな。
メチザと連絡先交換はまたこの町に来た時かな?」
バイテルの店を後にして宿に帰る事にした。
「あたしもメチザに会ってみたかったな。
それにあの店のご飯も食べたかったしね」
その日は明日からの長旅に備えて早く寝ようとしたがなかなか寝付けない。
隣のホチネは既に熟睡している。
『ゴブリンか?
人種と戦うのは訓練以外で初めてか。
魔物と戦うのとはやっぱり違うのかな?
実際のゴブリンはやっぱり人っぽいのかな?
盗賊でも人を殺すのは心が痛むのかな?
魔物の時みたいに慣れていくのかな?
眠れないと変なこと考えてダメだ!
早く寝なくちゃ!』
俺は布団を頭まで被りいつの間にか眠っていた。
「フゥ!フゥ!早く起きて!」
俺は少し寝過ごしたようだ。
朝食を素早く食べ宿をチェックアウトして外に出るとヒタリとヘンゼが見送りに来てくれていた。
ホチネはヒタリからカバンをもらい俺達は二人にお別れを言うと西門に向かう。
西門にやって来ると、
「依頼人を待たせないでくれますか!」
ケレリスともう一人が待っていた。
「私の教え子のツラナ。
一緒に行く事になりました」
「ツラナです。
ケレリス教授と人種全体の寿命が延びている事について研究しています」
「ツラナはゴブリンが増えたのは私達の研究に参考になると強引に付き添うと言っています。
馬車の操縦もできますし許可しました」
ケレリスは諦めたように話す。
とても眠そうでツラナがついて行く事を一晩中強請って根負けしたようだ。
「今日はボクが馬車の操縦をするので教授は後ろで寝ていて下さい」
ツラナは楽しそうに馬車の準備を始める。
「あたし達はどうしたらいい?」
「一人はボクの隣で魔物や盗賊の警戒をお願いします。
もう一人は教授と休んでいて下さい。
お二人の交代はお任せします。
荷物はそれだけですか?」
ツラナは俺達の荷物を見て心配しだした。
「食料も着替えも十日以上は大丈夫なように準備してあるから」
ホチネも自分の荷物を荷台に乗せて、
「最初はフゥが御者台で警戒を担当してね」
「わかった」
俺はツラナの隣に座る。
「皆さんの用意がよければ出発しますよ!」
ツラナが三人の顔を見回すと馬を走らせて俺達は首都農業の町に向けて出発した。




