赤月から白月に
月が赤から白に代わる日。
ホチネは夜空に浮かぶ赤月を眺めていた。
「この赤い色が白に代わるのよね。
ワクワクする」
「わたしは気にした事無かったな」
「メチネは月代わり見た事あったの?」
「無いよ。あんまり興味なかったんだよね」
「そうだった、メチネは前から体動かす事にしか興味無かからね」
「エー、ホチネもそっちだったよね?
どっちかって言うと、わたしよりホチネの方が頭で考えるより先に体が動くってイメージだったけどな?」
「いやいや。あたしはメチネの方がいつも先に突っ込んで行く感じだと思ってたけどな?
訓練の時だって火竜人なのに接近戦が得意で真っ先に突っ込んで連携が無茶苦茶になった事もあったでしょ?」
「それは最初だけでしょ!」
「最初だけって、次からはあたしがカバーしてたからね!」
「エー?ホチネが?
ホチネもわたしと一緒に並んで突っ込んでたと思ってたけどな?
カバーしてたのは本当は一番接近戦に向いてる筈の土竜人のラムトだった記憶があるけど?」
「アー!ラムト、ラムト!
本当にラムトには迷惑掛けた自信があるわ」
「わたしも!懐かしいね。
今頃、ラムトは何してるかな?」
「連絡してみようか?」
「そうだね。わたしからメッセージ送ってみるよ」
メチネが魔法石でラムトにメッセージを送ると返事が直ぐに帰って来た。
「ラムトも今、同じように月代わりを見ようとしてるって」
「そうなの?
今どこにいるか聞いて?
もし近くにいるようだったら久々に食事でもしたいって」
「分かった」
メチネはまたメッセージを送るが今度はなかなか返信が無かった。
「返事無いね。
忙しかったかな?」
「そんな事無いでしょ。
月代わりを見ようとしてるって言ってたんだから」
「そうね」
そんな会話をしているとツラナがジールンと飲み物とつまみを持って来た。
「そろそろ代わる時間ですね。
ホチネとメチネさんはリンゴのお酒ですよね。
ここに置いておきますよ」
ツラナはコップとつまみの皿を置いてジールンの隣に座った。
「ツラナ、わたしの事はメチネって呼び捨てにしてよ!
ジールンとは普通に呼び捨てし合ってるのに、わたしだけいつまでも堅苦しい呼び方なんだから!」
「ハイ、メチネ、ですよね」
「まだ堅いけどいいわ」
「おお、もうすぐ代わるぞ」
ジールンは月を指差した。
月が真ん中から白く色を代えて行く。
だんだん赤い色が白に代わって行き完全に白になった瞬間、回りの空気なのか温度なのかが変わった。
「なんか少し寒くならなかった?」
「それはそうでしょ?
暑い赤月から涼しい白月になったんだから」
「そうだった。あたし青月から赤月になる時は寝てたからこんなにハッキリ温度の変化を感じなんて思って無かったわ」
「そうだったの?
同じ月でも雨の日や日差しの強い日では多少温度も違うけど、月代わりはそんな変化とは比べられないからね。
これも妖精神様の力だけどさ。
妖精神様ってどんな姿なのかな?
龍神様は見て知ってるけど妖精神様と魔法神様は見た事無いのよね?
ねえホチネ?魔法神はどんな姿だったの?
教えてよ!会ったんでしょ!」
「魔法神様ねえ……猫だよ。
猫の姿に翼と前足?手が四本があって、言葉を話して雷魔法を使う」
「そうなんだ。なんか想像とかなり違った」
メチネはホチネの説明を聞き、聞いた事を後悔したような顔になっていた。
「そろそろ寝るますね」
ツラナが立ち上がった。
「わたしもそろそろ……
ラムトから返事来た。
ラムト、土の聖域からエルフ領との国境の町に来てるって。
なんか事件の後始末を頼まれたらしいよ?
ホチネ、最近までその町にいたよね?何か事件なんてあっ…………たよね」
「その事件ってあの事?」
「そうみたい。
『魔法神を名乗る魔神が現れた』ってエルフが土の聖域に忠告して来たらしいよ」
「面倒くさ!
どうせラィとフゥが悪く言われてるだけでしょ?」
「そうらしいね。
どうもエルフ達、翼の生えた六本足の黒猫を探し回ってるらしいよ。
その猫、さっきホチネが言ってた魔法神様だよね?」
「そうだね。魔法神様だね」
ホチネはうんざりした気分でそう答えた。




