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なぜラムトはそこに?

 

 土竜人のラムト視点の話しです。


 今、ぼくは中立国に来ていた。


 『何でぼくはこの国に派遣されたのだろう?』


 突然エルフから

 『魔法神を名乗る魔神が現れてその捜索を手伝って欲しい』 

 そんな連絡が来て聞き慣れない『魔神』と言う言葉と、

 『世界の脅威だから過去の事は一旦置いておいて竜人とエルフが協力し合おう』

 その言葉に聖域の長老達がなぜか乗り気になってしまった。


 『この期にエルフ達に協力して恩を売り、聖域にあるエルフ領を返して貰う』

 長老達にそんな思惑と気運が盛り上がりぼく達が派遣されたのだ。



 今回派遣されたのは長老の一人ドドルボ様とアードリヤとぼくの三人だ。

 そしてぼくが一番の下っ端である。



 『なぜ?』ずっとそう考えていたが、この町に着いてそこの人の噂を耳にした時に疑問が解けた。


 『水竜人のホチネが魔神と関係がある』


 『水竜人のホチネがパーティーを組んでいたフゥと名乗る者が魔神を手引きした』


 『魔神とフゥが建物を吹き飛ばして宿を破壊した』


 『魔神はエルフのヒラネスが自身も怪我をしながらも倒したが、後一歩のところで逃げられた』


 『ただ、エルフが魔神と言っているが本当は魔法神様だったらしい』


 『エルフ達が魔法神様の眷族を殺そうとしていた』


 その噂はいろいろ出て来た。



 エルフ達が広めた噂は『魔神』が現れた。

 少数派だが冒険者達や一般の中立国人の中には『魔法神様』をエルフ達が不意打ちをして殺そうとした。


 長老ドドルボは、ぼくとアードリヤに情報収集を任せて冒険者ギルドでエルフ達と会談を開いていた。


 会談ではエルフ達から土竜人にホチネを取り調べるように要請があり、ドドルボが水の聖域に連絡したところ返答が来た。


 『水龍神様が二年前にタケバの卵と一緒に創られた卵から生まれたのが『フゥ』で、そのフゥが魔神と関係ある訳が無い。

 更にエルフ達が『魔神』と言っている『ラィ』は水龍神様が同等の存在と認めていて、魔神とは言い掛かりも甚だしい!

 土竜人達はエルフの言う事を信じて同族である水竜人の事を疑うとは心外だ!』



 長老のドドルボは水の聖域からの回答でこう考えた。

 『これはエルフ達が竜人族を分裂させる為に仕組んだ罠ではないか』


 そして、ぼくとアードリヤが集めた噂と合わせて、

 「エルフ達より先に『ラィ』と言う魔法神様を見つけて保護する」

 そう宣言した。



 

 捜索はぼくとアードリヤを中心に数人の冒険者を雇って行われた。



 ぼくは最初に魔法神様とエルフ達が戦った宿を調べた。

 宿の一室は殆ど原形を留めない程の惨状だったが、大きな被害はその部屋だけだった。


 何かエルフ達が魔法道具を使って被害が拡大し無いようにしたらしかった。


 宿の従業員に話しを聴くと。


 「泊まっていたのはエルフと竜人とゴブリンに魔道士ともう一人見た事無い四本腕の変わった格好をした種族の五人で、食堂で沢山食事をしてくれるとっても良い客だった」


 「会計は全てエルフの森から貰う契約だったのに、あの事件があってからエルフが支払いを止めて来て、壊した部屋の修理代はフゥさんがこれまで冒険者として貯めてきたギルドの預金から支払われた」 


 「黒猫が現れたのは事件が合った日の朝の事だった。

 その日の朝、町の外に雷が落ちたと思ったら黒猫がフゥさんを訪ねて来て、その日は宿に泊まる事になった。

 本来は動物の宿泊は断っているが、その猫は言葉を話していて私達とも会話をしたので特別に部屋に泊まる事を許可した」


 「あの事件の起こる少し前にゴブリンが一人宿を出て行き、その後エルフ達を引き連れて戻って来た。

 そして、泊まっていたエルフのケレリスさんが冒険者ギルドに報告に行き、竜人のホチネさんが私達宿にいた人の安否確認をしてくれた。

 その少し後、さっきのゴブリンのゴキムロンさんが血塗れで宿から出て行った。

 出て行く時見たエルフ達も大怪我を負っている者が多く、死んだ者もいたようだ」


 「言葉を話す黒猫はあれ以来見ていない」


 「部屋には血溜まりがあってフゥさんが刺されて死んだらしいと聞いた」


 

 ぼくは宿の従業員とその日泊まっていた客に話しを聴き、事件が起こった日の大体の流れを知る事が出来た。

 どうやら朝に魔法神様が現れて、夜にゴブリンの手引きでエルフ達が奇襲を掛けて魔法神様と戦い双方に大きな被害を出した。


 

 ぼくは報告書を纏めると長老ドドルボと聖域に報告した。


 後で聞いた話しによると、その時聖域に研修に来ていたミユネとフゥは仲が良かったらしく彼女はだいぶショックを受けていたらしかった。



 アードリヤは魔法神様が吹き飛ばされたと言われている方向の町の外を冒険者達と捜索していたが手掛かりは全く無く、捜索は赤月が終わるまでとなった。

 エルフ達も同じように捜索しているようだが、向こうも全く手掛かりは無いらしい。





 それからも、ぼくも町の外の捜索に駆り出されたが結局何の手掛かりも無いまま赤月の最終日の夜を迎えた。


 

 ぼくは聖域から出るのは初めてだったので、月代わりを見る為に夜中まで起きていた。


 そんな時だった魔法石がメッセージを受けたのは。


 『ラムト、元気?久しぶり!メチネだよ!覚えてる?

 今、わたし三日月国と中立国との国境の町にホチネといるの!

 それで、月代わりを見ようと待機中でホチネと昔話になってラムトは何してるかなって話になって連絡したの』


 『メチネとホチネか。

 懐かしいな……………ホチネ?

 ホチネ、どうしよう。

 なんて返事したら良いのかな?

 ドドルボ様に報告した方が良いか?

 でも、返信は………まあ良い当たり障り無い事をまず送っておこう!』


 

 『メチネ、久しぶり!

 ぼくも今、月代わりを見る為に待機中だよ!』


 

 ぼくはそうメチネに返信すると急いでドドルボのところに相談に行った。




 結局この日は楽しみにしていた月代わりを見る事は出来なかった。


 

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