10歳の祭事は神様のお告げから!
連続投稿は終わり不定期になると言ったな?
休暇中にもう一本書けたので投稿しました。
鬼人族の親子を村に迎えてから半年が過ぎた。
田植え前に迎えられたこともあってか親子は大活躍。村人と恐る恐る交流しつつ、その凄まじい馬力のおかげで村の敷地は1.5倍まで広がっている。
凄いよね鬼人族、耕すのにも柵作りにも水路作りにも嫌な顔ひとつせず参加してくれて、その分人間だけで行うよりもめちゃくちゃ早く終わる。
まぁその分大飯喰らいで大酒飲みだが、幸いにもこの村はまだ裕福な方だ。年貢を差し置いてもまだ若干の余裕がある為、家族が一組増える程度なら何とかなる。
もうすぐ収穫の時期だし、このままいけば冬も乗り越えられるだろう。
俺自身もこの半年で収穫があった。
なんと無料ガチャで能力ガチャメダルが三枚揃ったのである。
俺は神社の境内で小躍りしながら(山茶花ちゃんには忌諱の目で見られていたが)能力ガチャを回したが、出た能力は『ガチャアイテムインベントリ』だった。
その名の通り、ガチャカプセルを出し入れできる小窓型のウィンドウが出せる能力だ。同アイテムはスタック可。
大したことはないように見えるが、俺にとっては大事な能力。何せ半年分のガチャカプセルがずっと手元にあったのである。正直、邪魔だった。
桜の木の根元の穴じゃ納めきれなくて村の至る所に隠していたのだが、それもようやく終わる。
まぁいくつかは村に隠しておいてもいいかもな。無料ガチャで手に入った物の中には弓と矢束のセットやら銅の剣やら防衛に役立ちそうな物も含まれていた。それらをカプセルとして隠しておけるだけでも役に立つだろう。
まあ俺の能力について一部でも知っているのは黒田さんと山茶花ちゃんくらいなので、他の人から見ると不審物になるんだけど。
山茶花ちゃんには能力について話した。他の人には秘密にしてくれと言い含めた上で、【一日一回だけ何かしらの道具が出てくる能力】と嘘を言っていない程度にボカしてだけれども。
あれだけ付いて回られたら話した方が後々楽だし、この程度なら噂が漏れてしまってもリカバリーは効くしね。
今では神社に二人揃ってからガチャを回すようになった。
たまに簪やら女物の着物やらが出てきて扱いに困っていたので、それらは山茶花ちゃんにプレゼントするようにしている。
スタックできるんだから自分で保存しておけばいいんだろうけど、ひとつあげたところでまた出てくるんだよね。だったら今の内に山茶花ちゃんの好感度を上げておいた方が良かろうという判断だ。
そのせいか最近山茶花ちゃんとの距離が近い気がするけれど、油断してはならない。贈り物程度で仲良くなれるなら前世で童貞を拗らせてはいないのだ。
便利な男だと思われている、と思っているくらいが丁度いい。
今日も可愛いね、ヨシヨシしてあげよう。
◇
そんな代わり映えのしない日々を過ごしていたある日、にわかに村の様子が騒がしくなった。
「アンタと黒田さん家の仗助くんが10歳になるでしょ? それを祝う祭りをすんのよ。主役なんだから今日から黒田さんとこで作法とか習ってきな」
とは母さんの談。
この村では子供が10歳に成った時に『御告の儀』と呼ばれる儀式が行われるのだ。
前に行われたのが三年前、兄さんの時だったのですっかり忘れていた。
内容は確か……。
「10歳になる子が神前で儀式をして、運が良ければ神様からお言葉を貰えるんだっけ?」
「御告の他に、稀に祝福も貰えるのよ。長男の時は『いつか村を出て大成せよ』って言われて《人脈の才》をもらったんだっけね」
そういえばそうだった。
勇気兄さんはその才能(?)のおかげで今では大人気。神様から期待されている人物というのは人間族の中でも上澄みの扱いになるので、領主様からも目を付けられているらしい。
元服したらいずれか名のある御方に引き抜かれるのだろう。
俺は……すでに能力を貰っているし、どうなるんだろうね。大成はしたいけれど、まずは力を付けて村から出ることを考えないとなぁ。
実は一度村の隅々まで探してみたら、一枚だけ『能力ピックアップガチャメダル』を見付ける事ができたんだ。
無料ガチャからは通常の能力ガチャメダルしか出ないっぽいし、多分世界中に散らばって置いてあると思うんだよね。
何にしても、俺はこの村から出なければならない。
元服したら冒険者にでもなるか?
何やら天皇様や公家等の支配が弱まっている、なんて噂があるらしいので、日本の歴史をなぞるならばもうすぐ戦国時代に突入するのではないだろうか。
各地の大名が天下人に成らんと名乗りを上げ、争乱の続いたあの時代。一介の村人からしたらいい迷惑だけど、名を上げたい俺からしたら渡りに舟みたいなもんだからな。
あー、前世(幸太郎)の良心は痛むらしいけど、俺は牧瀬幸也なので。
こんな能力を貰ってるんだ、有効活用しないとね。
◇
稲の収穫も終わり、ぼちぼち冬支度を始めようかという頃。
俺と仗助くんは儀礼服に身を包み、普段有効活用させてもらっている寂れた神社の拝殿で儀式を執り行っていた。
儀式と言っても簡単なものだ。神前で恥ずかしくないような礼儀作法を覚え、その通りに動いて最後は深々と頭を垂れるというだけのもの。
身も蓋もない言い方をするなら、それぞれの家や各家の村人が心ばかりの供物を並べ、それを対価に神様へと『お言葉を頂けないでしょうか』とお伺いを立てる儀式だな。
この世界では神様という存在は日本よりも身近にいるらしい。あっちじゃいくら祈っても借金は膨れるばかりで助けてくれなかったからな。
お言葉ひとつでも頂けるなら、むしろ天皇様や公家大名方よりも身近なんじゃないか?
なんて考えていたら、仗助くんが一連の動作を終えて御告を待つ段階となった。
頭を垂れ、しばしの静寂。ここで御告を頂けるか、神主が終わりを告げるまでこの沈黙は続く。
……これ、やってる側は拷問に近い時間だよな。
自身がどれ程の人物になれるか、このタイミングで決まってしまうのだ。御告があればヨシ、祝福があればなおヨシ。
逆に何も無ければ、その人の人生はただの村人として終えることになる。
立身出世を求めない人ならばそれでも良いだろうけど、俺はどうにか偉くなって歴史に名を刻みたいのだ。
御告が頂けなければ冒険者として名を上げて、どこかの大名様に拾って頂く道を模索するしかないかもな。
《──汝、北を目指せ。その地で出会いがある》
「……っ」
思わず声を出すところだった。
これが御告というやつか。兄さんが御告を聞いた時は俺は外で遊んでいたから、きちんと聞いたのはこれが初めてなんだよな。
祝福を頂けるならば御告の後に天から光が降り注ぐのだそうだが、仗助くんにはそれがない。
祝福は受けられなかったようだが、それでも御告が貰えただけマシなのだろう。
長男が村から出ていくことを定められた黒田家にはちと同情するけど、それも仕方のない事だ。
時代的にも御告に逆らうような生き方はできないだろうしな。
仗助くんは立ち上がり、再び深々と頭を下げると退室した。
次は俺の番だ。
「が、がんばって、ね?」
「おう」
山茶花ちゃんも応援してくれているし、どうにか御告だけでも頂かないとな。
俺は拝殿の中央へと歩み出て、事前に習った所作を行い、神前へ。
その場で正座をし、三指を立てて床に額を擦り付けるつもりで頭を垂れる。
これでしばらく待って、御告がなければそこで儀式は終わりだ。
御告が貰えなければ大成しない者として捨て置かれることはないまでも、モブみたいな生き方まっしぐらとなるだろう。
前世の記憶なんて特別な背景がある俺は、はたして神様からどのように見られているのか……。
そうしてしばらく待つ。待つ。待つ。
……御告がない。
そういうこともあるのか。まぁ、ありうるか。
「……そこまで」
神主がついに声を上げた。
そこで俺の儀式は終了となる。
《あいや待たれい!》
突如、声。
俺じゃない。村人の誰でもない。女性の声。
《いやいやスマンの。■■に代わってもらうよう交渉しておったら時間が掛かってしもうたわ!》
その声は不思議な魅力を振り撒きながら、どこからともなく聴こえてくる。
……なんとなく信じたくはないが。これはまさか……。
《待たせてしもうたな。吾は……なに、名乗るなと? あー、分かった分かった。細っかいのう》
《──さて、御告の儀じゃったな牧瀬幸也。吾が担当しようぞ》
なんかすっごいフランクな女神様の声が響いた。




