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ジパンニア戦記 ー奇策士に拾われた俺は召喚ガチャを使い、駒として最強の“変態”騎士となるー  作者: 桜椛 牡丹
牧瀬幸也立志編

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初の異種族交流は鬼人族から!

 はらりと落ちた少女の髪が俺の頬を擽る。

 さらりとした桃色の髪に同色の大きな瞳、白い肌。

 しかし何よりも目を引くのが、少女の頭に生えている二本の角だ。

 額から頭上に向けて伸びているそれは、根元の肌色から徐々に赤みを帯びていて。先端部分に関しては完全なる朱色となっている。

 要するに彼女は“鬼人族”。このジパンニアに古くから住まう由緒正しき種族の一員というワケだ。

 俺も吟遊詩人から話は聞いていたけど、実物は初めて見た。


 「…………」


 「……えっと、さ。とりあえずどいてくれない?」


 「はぅわっ!? すすすすいませんごめんなさい今どきますねっ!?」


 「ああ慌てないで、ここ狭いから。ゆっくり、ゆっくりね」


 「ああああごめんなさい……! ゆっくり……ゆっくり……」


 愉快な子だなぁ。

 女の子は慎重に俺から降りると、端の方でペタンと座り込む。まだ色々と混乱しているだろう。俺だって色々混乱している。

 っと、いけないいけない。今はダルフの群れとあの男女がどうなったかを見なければ。

 縄にたどり着いていれば引っ張りあげられないまでも花火による援護くらいは、なんて思っていたのだが。


 「……ウッソだろ……」


 俺が見たのは、二人が馬を飛び降りてそれぞれの得物でダルフの群れを相手に大立ち回りを演じている姿。

 いやもう強いなんてもんじゃない。男が金棒を振るえば数匹単位でダルフが飛ばされていくし、女が魔術を撃てば直線上にいるダルフがまとめて焼けていく。

 あの二人、この子を守るために手を出さなかっただけで実は余裕で対処できたんだ。

 そしてやはりというか、二人の額にも同様の二本角。


 「あの人達、キミの両親?」


 「……えっ、あっはい! そうですそうです。父の金剛山(こんごうさん)と母の炎陣花(えんじんか)です」


 強そうな名前してんなぁ、流石は鬼人族。

 詳しいことは知らないけど、鬼人族は戦闘力が異様に高いが個体数が少ないのだそうで、子を成すのも大変なんだとか。異世界事情も世知辛いね。


 「黒田さん、俺がこの子を連れて村長さん家に行ったらそれはそれで問題になると思う?」


 「あー……。まぁ大問題だな。ワシが皆の衆に説明すっから、しばらくその子と一緒に傍におれ」


 「はーい」


 まあいきなり余所者が門の内側に居たら厄介だよな。今はダルフを狩っているあの人達だって、それが終わったら今度は村人を蹂躙して乗っ取ろうとしてくるかもしれない。

 村人以外は基本的に信用しちゃいけないくらいが丁度いいんだ。こんな辺鄙な村では特にな。


 「というワケでキミ、名前は?」


 「あっはい。私は山茶花(さざんか)と申します」


 「俺は牧瀬幸也(まきせ こうや)。キミの両親がダルフを倒した後も一悶着ありそうだから、しばらく離れないでいてくれる?」


 「わ、分かりました……」


 素直でいい子だね。俺も疑いたくはないけれど、これも処世術だと思って諦めてくれ。



 ◇



 ダルフの討伐はものの十分程でケリが着いた。

 ダルフもバカじゃないので、群れの損耗が三割ほどになった時点で一目散に撤退したのだ。二人は追撃する気は無い様子で、しばらく警戒した後に武器を収めて北門前へとやってきた。

 おそらくこれから問答が始まるのだろう。俺も巻き込まれた者として一応の同席を許されたので、今は山茶花と並んで門の内側で成り行きを見守っている。


 「お騒がせして大変申し訳なかった! 俺は鬼人族の金剛山と申す者! 緊急事態とはいえ、中に飛び込ませてしまった我が娘、山茶花を引き取らせていただきたい!」


 金剛山は目測で2mを越える偉丈夫である。その体躯に合わせて声もデカイ。つまり威圧感がヤベーのである。

 ほれ、ウチの村の衆が怯えておるではないか。

 他種族というのはどうも俺達のような人間から恐れられている場合があるらしく、それはウチの村でも例外ではない。というかこの辺には鬼人族はいないらしいし、ビビるのが当然だろう。


 誰もがシンと静まるばかりで、金剛山の声に応えようという者がいない。というか村長が矢面に立つべきなのに未だに家から出てきていないのはどういう了見だ。

 ……仕方ない。出しゃばる気はなかったけど、このままでは彼らの堪忍袋の緒が切れかねない。何せ大事な娘の安否が分からないのだからね、暴れたらウチは全滅するぞ。


 「あー、金剛山殿! アナタ方の娘さんは私が保護している! 豪速球で飛んできた割には無事だ!」


 「おっ、その声はさっきの小僧だな!? お前のお陰で助かったぞ、礼を言う!!」


 お互い大声で話してはいるが、実際は遮蔽物(ただし穴だらけなので割と姿が見える)越しに会話しているだけなのでこんな大声でやり取りする必要はないんだけどね?

 なので俺は山茶花の背を押して彼らに姿を見せる。これだけでも彼らのボルテージは下がってくれるだろう。


 「おお、山茶花! 無事で良かった。怪我はしてないか? 虐められてはおらんか?」


 「大丈夫だよ母様。幸也さんは優しい人間だったから」


 この短期間で虐めるも何もないだろけど、排他主義ってのは何しでかすか分からんからなぁ、不安になるのもよく分かる。

 学のない者が「娘なぞこの村に入り込んではおらん、帰れ帰れ!」とか言い出しかねないのが文明レベルの低い世界故の悩みよ。

 もしも俺が強くて武力で大体を解決できる猛者だったら、そういう風に言われた瞬間に門をぶち壊して村人を蹂躙するだろうし。


 「時に金剛山殿、炎陣花殿! こちらにやってきたワケを教えては貰えんか!? ここは辺鄙な村故に外界の情報が足りんのだ! 迷惑料だと思って答えてもらえると有り難い!」


 鬼人族がこの辺にやって来たのには何かしら理由があるはず。もし魔物の大氾濫なんてあったりしたら我々も村を捨てて逃げなくてはならなくなるだろうし。


 「俺達は行く宛てのない放浪者だ! 他の鬼人族がいる土地なら住めるかと思ってあちこち旅をしている! ……ああ、あの魔物は奴らの縄張りに入っちまったせいだ! 重ね重ね迷惑を掛けてすまんな!」


 放浪者、か。なるほど、隠れ住んでいた土地を追い出されたのかな?

 魔物が住まう世界では安全な土地は貴重だろう。この家族が安定して暮らせていた場所なら、人間が奪い取ろうとしてもおかしくないはず。

 まぁ鬼人族は怖がれているらしいからな。誰かの配下とかそういうのも多分ない。というかこんな強い人を手放す方がおかしいだろう。


 なるほど……なるほどな?

 というか大人達、もっと口を挟めよ?

 俺に交渉役任せててええんか? 俺はこれから面白いことをしようとしてるぞ?


 「お二方、山茶花殿はお返し申すが暫し門の前で待ってもらうことはできるだろうか! 私が村人達に相談して、意見が揃えばこの村に住んでみる気はないか!」


 「おい幸也!」


 父が慌てて俺の肩を掴むが、俺は逆に皆に集まって屈むようジェスチャーする。


 「いいか親父、あの人達はそこらの冒険者よりもめちゃくちゃ強い。それが今家なしで彷徨いてるんだ。あんな可愛い女の子もいるんだぞ? 恩を売っておければ村を守ってくれたりとか、色々利益になるとは思わんか?」


 9歳のガキと思うなよ?

 こちとら一週間前にプラス20歳分の知識と知恵が付いたんだ。舌戦の引き出しならアホほど増えたんだぜ?


 「相分かった。ひとまず山茶花を門の外へ出してもらえんか? その後に一刻ほどは返答を待つ! 住む場所をもらえるなら願ったり叶ったりだ!」


 金剛山殿達は乗り気の様子。山茶花ちゃんはなんか赤面してるけどなんかあった?


 「一刻だな、任せてくれ! 村民全員説得してやらぁ!」


 俺は意気揚々と腰を上げ、ひとまずは山茶花ちゃんが門から出るのを見送る。その後は最低限の見張りを残して、その場の大人達を連れ立って村長宅へと向かった。

 他種族への目としては畏怖や嫌悪が当たり前。

 身体能力が人間族とは違う上に価値観等もズレていたりするから、相互理解までの道はかなり遠い。

 主人公は元々無知なのと、中身が日本人と混ざっているのでそもそも価値観がこの世界の人間族からズレている。


 華奢な鬼っ娘とか可愛いじゃろがい! という一念で未知への恐怖とか吹き飛んでる。

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