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ジパンニア戦記 ー奇策士に拾われた俺は召喚ガチャを使い、駒として最強の“変態”騎士となるー  作者: 桜椛 牡丹
牧瀬幸也修行編

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町中の乱闘 その2

 お嫁さん候補である仮称Aさんを守るべく、俺は木刀を片手に星光団の一派と向かい合った。

 数は四人。町中で得物を抜いたものだから周囲にいた野次馬は全員逃げてしまい、援護は期待できそうにない。

 誰かしらが警護隊にでも連絡してくれればいいけど、それを待つ間に決着が着くだろう。


 「ぶっ殺してやるぁ!!」


 最初に挑発に乗った男がシミターを手に斬りかかってきた。

 上段からの袈裟斬り。もちろん当たれば痛いじゃ済まないが、こちとら『鬼』に鍛えられた優秀な門下生である。


 「くらえっ」


 必殺、1000ルーメンのタクティカルライト!


 「ぐわぁぁぁぁ!? 目が、目がぁぁぁぁぁ!!?」


 この時代ではまず拝むことのないであろう光量による目潰しだ。

 使えるものはなんだって使う。それが『鬼』の強さだと教わった。だから俺は悪知恵で戦うのさ!


 「ひとぉつ!」


 まずは一人目を木刀で殴り倒す。この木刀には麻痺属性が付いているから、入ればほぼ一撃必殺みたいなもんだ。


 「ふたぁつ!」


 次にやってきた相手にも目潰し。開いた脇腹に思いっきり木刀を叩きつけ、倒す。


 「みっつ!」


 三人目は流石に目を覆って隠していたが、そんな状態で俺の木刀を避けられるはずもない。顎をかち上げて終わり。


 「最後は……!」


 劣勢と見て背を向けたお前に木刀をシュウウウゥゥッ!

 超☆エキサイティンッ! な感じで木刀が命中し、倒れた。

 これでこの場に残った星光団は一掃だ。案外呆気なかったな。



 ◇



 この場で倒した星光団は全員縛り上げたのだが、ひとつ問題がある。

 実は彼らは人攫い“未遂”なだけで、まだ何もやってなかったという点だ。

 確かに町中で剣を抜いた時点で悪者は確かにコイツらなのだが、かといって『どうしてこうなった』という説明を求められると非常にマズイ。

 手配書は偽物だし、彼らが星光団だという証拠も……それは懐にシンボルを忍ばせているみたいだからいいか。


 まぁ事前に察知して対応しました、なんて説明が簡単に通るとは思えないのだ。最悪は俺までしょっ引かれることになりかねない。

 なので、俺にできる最善手はこれ。


 「よし、じゃあ俺はこれで! 気を付けて帰ってネ!」


 守るべき者は守った。これ以上は付き合う必要はないだろう。ということで脱兎の如く退散する!


 「お待ちなさい」


 一歩目を踏み出す直前、不意に袖口を掴まれて後ろへと引っ張られる。

 後ろを見遣れば、そこには仮称Aさんの姿。

 というかようやくマトモにその姿を見たが、美人さんだ。

 亜麻色の髪をした犬人族の女性で、背格好は俺より若干低いようだが厚底ブーツみたいなのを履いていて目線はほぼ同じ。

 犬種としては……多分チワワかな?

 ケモ度の話をすると一部から怒られそうだけど、この子はほぼ人間の身体に犬耳と尻尾が付いているくらい。


 護衛の人は多分ドーベルマン。

 美しい黒髪をウルフカットにしている女性で背が高く、三白眼。ケモ度はAさんと同じくらい。

 この人は一見帯刀していないように見えるが、服の至る所に暗器を忍ばせているみたいだ。忍者かよ。


 そして二人とも恐ろしく身なりがいい。攫ってくださいと言わんばかりに一目で高級そうと分かる衣装に身を包んでいる。

 ……まぁ、火鼠の皮衣の方が高級感としては上なので、着てこないで良かったと思えてしまうな。

 デカイ町とはいえ、ここは城下町ではないんだ。流行の最先端、みたいなのはめちゃくちゃ目立つんよ。


 「……あのぉ、できれば離してもらえると……?」


 ワシは警護隊に捕まってなどおられんのじゃ!

 山茶花や師匠が待っている、というかもう待たせているに違いない!

 このままでは怒られる所の騒ぎじゃなくなってしまうのじゃあ!!

 という気合いで袖を引っ張るも、Aさんはビクともしない。何だこの人、強いぞ!?


 「貴方が早急にこの場を去りたいのはその顔を見れば分かりますわ。けれど、名乗りもしなければ御礼も受け取らないだなんて、そんな非常識が許されると思っていて?」


 常識?

 そんなもんが田舎っぺに備わってると思うなよ!


 「いやぁすまない、私は義を見て助太刀に入っただけの田舎者、名乗るほどの者ではない。実はこれでも急いでいてね、離してもらえるととても嬉しいのだがー?」


 このままだと袖をちぎることになるんだが?

 最悪の場合、騒ぎを聞きつけた師匠がこの場に現れてしまうんだが??

 騒ぎを起こすんじゃねぇぞって念入りに言い含められた俺が罰を受けることになるんだが???


 「……はぁ、分かりましたわよ。クロエ」


 「はっ」


 クロエと呼ばれた護衛の人が徐ろに近付いてきて、俺の目の前で懐へと手を入れた。

 なんだ、武器を出す気か?

 俺が攻撃される理由はないはずだが、黙って殺られるくらいなら抵抗するぞ?

 なんて思っていたら、反対の手で握っていたらしい何かを吹き付けられた。


 「ぷわっ!?」


 なんだこれ、香水?

 毒の類ではない、はずだ。

 修行の過程で毒耐性は獲得済。トリカブトやベニテングタケの毒くらいなら重度の下痢で済むんだから凄いよな。三日三晩苦しむだけで生還できるんだから(一敗)。


 「はい、じゃあもう行っていいですわ」


 香水を掛けられただけなのに、パッと手を離され解放された。

 なんだってんだまったく……。


 「そ、そうか。ではな、次は人攫いに注目されないよう注意するんだぞ!」


 「はい、ではまた後で」


 俺は急いで現場を走り去り、指定された飯屋近くの物陰で認識阻害3点セットを外す。

 そのままなに食わぬ顔で飯屋へと入れば、そこには先に来ていた金剛山師匠達の姿があった。

 どうやら間に合ったらしい。やれやれだぜ、全く。


 ……ん? “また後で?”

・犬人族

 見た目は人間族とほぼ変わらないが、人耳の変わりに犬耳と、それぞれの犬種の尻尾が付いている。

 ケモ度の高い、全身毛むくじゃらのようなタイプもいるにはいるが、その人達は『神の血を濃く引いている』とされていてまず集落から出てこない。そして人間種とも交わらない。


 ちなみにこの世界には普通に犬や猫も存在しているので、同一視とかされたらブチギレる。

 首元にチョーカーを付けていたらそれは『婚姻の証』。奴隷落ちとかして首輪なんかされようモノなら自害を選ぶくらい誇り高い。

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