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ジパンニア戦記 ー奇策士に拾われた俺は召喚ガチャを使い、駒として最強の“変態”騎士となるー  作者: 桜椛 牡丹
牧瀬幸也修行編

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町中の乱闘 その1

 【悲報】お嫁さん候補に会いに来たら人攫いに囲まれている件について【不運】


 なんてふざけている場合じゃないよな。

 急を要する事態、にはまだなっていない。人攫い共はまだ遠巻きに件のお嫁さん候補(今は仮にAさんとしよう)を囲っている状態で、徐々に輪を狭めているに留まっているからだ。

 多分、Aさんの傍に護衛がいるからだな。護衛がいるような存在が俺の嫁さん候補になるのか?

 とはいえ護衛は一人。腕が立つのかは不明だが、まだ人攫い達に気付いてないなこれ。

 放っておいたら多分真っ先に処分されるだろう。


 ……ならばもう、仕方ないか。

 この前丁度いい物も手に入ったし、早速使ってみるとしよう。

 ということで装備しますはメガネと帽子と真っ赤なマフラー。

 これで完全に人相を隠し、周囲の人の記憶にマフラーしか残らないようにするのだ。

 しかもこの三種の道具、何と特殊能力が付与されている。

 その名も『認識阻害』。

 読んで字のごとく、これらの内一個でも装備していると、周囲の人間からは装備者が誰なのか分からなくなるらしい。

 これはもういくらでも悪用できそうなくらい便利。

 まぁ念には念を入れて全部盛りするんだけどね。


 そして完全に人相を隠した俺がまずする事と言えば……?

 そうだね、奇襲だね。

 今いる通りはそれなりに人通りがある。だからこそ人攫いも紛れる事ができているワケだが、それはつまり俺も紛れることができるってワケよ。

 最初は囲いの一番外に居て、倒れても視認されない奴から絞め落としていく。


 気配の消し方は習っている。足音を立てずゆーっくりと相手の背後へと近付き、右腕を相手の喉へと回す。

 絞め落としのやり方は相手の呼吸を止めるのではなく、頸動脈を圧迫して脳へと血が流れない状態を作りだすのが正解。

 そうすると相手は一時的に低血圧状態に陥り、数秒から数十秒もあれば……はい、一人陥落。

 周りの人が気が付いて騒ぐ前に二人目。人が倒れたと誰かが声を上げた所で三人目。

 よし、順調順調。しかしもう人攫いは警戒し始めるだろうし、騒ぎに乗じて逃げる可能性もある。そのまま人攫いを強行する線は薄いが……ゼロじゃない。

 だから多分、正解はこうだ。


 「おやおやおやおや!」


 俺はわざと声を上げて周囲の注意を引く。

 これで人攫いのタイミングはズラせるし、Aさんも護衛も気付くだろう。

 気絶させた内の一人を引っ掴み、ズルズルと引き摺りながらAさんの方へと近付く。そうすれば自然の人と波が引いて、ポッカリとした空間ができあがる。

 出店のおっちゃんには申し訳ないが、しばらく営業妨害をさせてもらおう。


 「どうして町中にこんなにも“星光団”の人間が入り込んでいるんですかねぇ! もしかして、この女性を攫おうとか考えてましたァ!?」


 情報は的確に、大声で。

 こうすれば野次馬と化した民衆らは自分達に紛れた“星光団”を探そうとするし、逃げたらそれこそ一員だと教えているようなもの。

 つまり犯人達をこの場に押し留めることができるというこだ。

 幾人かには『頭のおかしいやつ』という目で見られているが、気にしない。


 「あっ、テメー! 加賀美を殺りやがったな!」


 はい、馬鹿一人が釣れた。

 確かに今のままでは俺が一方的にこの男性を倒した異常者に見えるだろう。だけど俺には秘策があるんだなぁ。


 「加賀美、ね。加賀美(かがみ) 新(あらた)。星光団の若きエースにして稼ぎ頭。うんうん、こ(・)の(・)手(・)配(・)書(・)の(・)通(・)り(・)だねぇ」


 俺は後ろ手に持っていた手配書を野次馬達によぉ~く見えるように広げる。

 それは今しがた気絶させたこの男の顔と名前、そして『生死問わず 金貨1枚』と書かれた簡素なものだ。

 実はこの手配書、俺の『浮窓の写本』による捏造だったりする。この三年間で出た能力の内、幾つかは写本に統合されてより便利になった。

 だからこんな紙っぺら一枚の手配書なんかその場で即興で作って印刷してポンと出せたりするのだ。

 俺の能力、詐欺師に向いてるな。


 でまぁ、そんな物的証拠(捏造)を出した男の仲間となればソイツも間違いなく犯罪者として見られる。なのでさっきこの男を加賀美と呼んだ奴は、もう逃げるか開き直るかのどちらかしかないわけだが……。


 「くっ……! 小僧が、ただで済むと思うなよ!」


 開き直るパターンであった。

 ご丁寧に町中で剣まで抜いてしまったのでもう言い逃れはできない。他の星光団の皆さんは……加勢が半数、逃走が半数といったところか。

 逃げる野次馬に紛れて去っていたのはとりあえず置いておいて、今は残った四人の始末を考えよう。


 「失礼、状況に着いていけず傍観しておりました。加勢致しますか?」


 背後から護衛の人らしき方からのお声が掛かる。

 ちょっと低い声だが、女性か。


 「有難いですけど、貴女が離れたところでそちらの方が狙われたら本末転倒なので。身の安全を第一に考えてください」


 こっちは慣れない芝居までして割って入ったのだ。暴漢は倒しましたがAさんは攫われました、なんてなったら目も当てられない。なので、


 「なぁに、こんな雑魚共は俺一人で十分ですよ」


 挑発と自身への鼓舞を兼ねて、そんな言葉と共に竹刀袋から木刀を取り出す。


 「へぇ……」


 背後からまた違う女性の声。Aさんかね。何かに感心されたご様子だが、まぁいい。

 さぁ、今こそ修行の成果を見せる時!

・幸也の持つ木刀

 もちろんガチャ産。

 能力は『叩いた相手を一定確率で麻痺させる』『とても頑丈』


・星光団

 アルデバランを“神々の住む星”として崇める宗教。

 ジパンニア各地に拠点があり、信者の数はそれなり。

 “生きるに際し多少の悪事は神様もお赦しになられる”という教義を悪用し好き勝手やる一派がいる。ソイツらのせいで迷惑を被っている派閥もあるが、仲間内で粛清したりはしない。

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