初めての町訪問
魔物退治の翌々日。
俺達は村から一番近い町までやってきた。
金剛山夫妻が村に来る時に使っていた馬に乗り、朝イチから走らせて宿場で一晩休み、翌朝の到着である。
いやーもう、遠い遠い。
日本と同じ地形やろって甘く見てたら魔物の存在があるせいで人が迂闊に生活圏を広げられないんだこの世界。
俺達の住んでる開拓村はだいぶ攻めた所にあるというか、人里から遠いダンジョンからほどほど近い場所に人が住めそうな環境があるから、そこに村を作って宿場として活用しようみたいなノリで開拓された場所な気がしてきた。
魔物は確かに少ないし生きていくのに不便は少ないが、流通とかは絶望的だったからなぁ。
寺子屋である程度の勉学を教えられる元冒険者が居着いてくれただけマシな方だったのかもしれない。
話を聞く限りだと、この世界の人間族って結構識字率低いらしいからね。他の種族は知らない。
「これが朝倉町かぁ。なんつーか、思ってたんと違うな……」
前世の知識的に、こういう町は木造建築が大量に立ち並ぶ長屋ばかりの場所、みたいなイメージがあった。
実際は町を大きく囲む石壁に堀、立派な門に検問所。そしてファンタジー作品でよく見るレンガ作りやら石壁で出来た家々の方が多く、木製の長屋なんて町の隅っこに少し残ってたくらいだった。
魔術が存在するだけでこうも文明レベルが違うのか。こういうことのできる魔術師が開拓村まで来て家を建ててくれんかね。
「ここは城下町じゃあないが、交通の要所になってるから規模がデカいんだ。元々は開拓村だったらしいから、居着いた奴らが勝手にデカくしてったんだと。前に酒場で聞いた」
真偽の程が分からない情報だけど、それっぽい話ではある。
というか金剛山師匠、割と博識なんだな。
もっと大雑把な性格だと思ってたけど。
「私達鬼人族は常日頃からやっかまれてるからな。情報収集を怠ったらいつ襲われるか分からないだろ?」
とは炎陣花師匠の談。世知辛い。
「出入りが多い分、変な輩も多い。お前らなら大丈夫だとは思うが、一応注意しろよ」
「「はーい」」
町に入る時に検問所で色々質問されたけれど、質問に淀みなく答えられたらOKみたいな感じだったしな。
もちろん師匠達がAランクの冒険者ってのもあるだろうけど、嫌な顔ひとつでとりあえず通されたのは面倒事を嫌ったのか何なのか。
とりあえず注意もされたので『探索』を使ってみたけれど……あー、確かに危ない町だな。
俺の『探索』能力は、その範囲に入った物や人物全てを色で識別できるようになった。
味方は青、敵は赤、無関係は白。後は色合いによって度合いが違うみたいな感じ。
今俺の視界に見えているのはオレンジ色が三割、白が六割、青が一割という、なんともまぁ世知辛い光景だった。
金剛山夫妻はとにかく目立つからね。鬼人族に良い印象のない人は共連れである俺への当たりは強いだろう。
まぁそこはいい。町中でおいそれと襲ってはこないだろうし、大抵の相手なら撃退できるだけの戦闘力は手に入れた。
だが問題はそこではない。
「なんなんだこの光る人物は……」
探索範囲のギリギリの位置にだが、黄金のように輝く人物がいる。
実際には輝いていないだろうけど、あまりにも特異なせいでびっくりしてしまった。
あの光り方、フリクトは何か分かる?
【お嫁さん候補ですね】
お嫁さん候補。
【将来的にマスターの妻になる可能性がある人物です。その判断基準は■■様の縁結び効果が及ぶかどうか、だそうです】
……へぇ、縁結びの神様かぁ。
相変わらず名前を知ることはできないようだけど、勿体ぶる理由は何かあるのだろうか。
で、その縁結びの神様イチオシの女性がいる、と。
一目でいいから見に行きたい。行きたいが……今は無理だ。
ひとまず冒険者として登録だけでもしておかないと身分証がないので、そちらを優先しなきゃならない。
それにずっと不安そうに服の裾を掴んでいる山茶花を置いていくなんてできないし。
今晩はこの町に一泊する予定なので、明日の帰りまでに縁があれば、くらいの気持ちでいよう。
しかしお嫁さん候補ねぇ。
可愛い子だといいな。まだ会ってすらいないけど。
そもそも顔を合わせたところで俺にナンパなんてできる気しないし、候補は候補ってことで今回は見送りだろうしなぁ。
“縁があったら”また会える時もあるだろう。
──なんて、タカをくくっていられたのはたったの数時間だけだったのだが。
・冒険者登録
自由業とはいえ一応職業となるので、冒険者になる者は皆冒険者組合で登録する決まりになっている。登録できるのは12歳から。
登録しておかないとダンジョンに入れて貰えなかったり、魔物を倒して手に入れた鉱石も『盗んだんじゃないか』と疑われる羽目になる。
登録しておいて基本的に損はないが、有事の際に最初に引き合いに出される事になるので一長一短と言ったところか。
登録すると冒険者カードとランクを示す首飾りが貰える。
ランクはA~Fまで。
番外としてSランクもあるが、これは人外レベルのバケモノを指すためのモノなのでAより上、という扱いではない。機嫌次第で簡単に町が滅ぼされるからどうにかご機嫌取りをしようとなって出来たランク。




