そして三年の月日が流れた その2
魔物の発生源とされる結晶体を破壊しようとしたところ、金剛山師匠から待ったをかけられた。
「コイツを壊したところでまたすぐに穢れ石ができるだけだ。だからぶん殴ったって意味はねぇ」
師匠曰く、この結晶体は地脈から湧き出た不純物の塊みたいなもの。
破壊してもまたすぐに結晶体となってしまい、魔物はすぐにでも湧いて出てくるのだそうだ。
人間で例えるなら毛穴から出てくるニキビ。潰しても潰しても、原因を絶たなければまたすぐに復活する。
だったらどうするのか、というと。
「コイツは神子様が作った浄化の札だ。コイツを穢れ石に貼る」
神子様、というのは京にいらっしゃるやんごとなき身分の御方らしい。読んで字のごとく『神様の子』らしく、政治には一切関与しないものの神事や魔物対策等、そういった方面に強い御方らしい。
らしいとしか言えないよな、実際目にしたわけでもなし。
「この札は冒険者や兵士なら誰にでも配られる。魔物対策でもあるが、その辺で野垂れ死んでもこの札があればその場に集まる穢れを軽減できるって寸法よ。昔、戦場跡を放置してたらバカでかい魔物が生まれたらしくてな、その教訓を活かしたってやつだ」
穢れってのは地脈の不純物でもあるし、人や動物の死や怨念にも寄ってくるものなんだそうだ。
神様ってのが実際にいる世界だ、そういうファンタジーも起こり得るワケね。
「この札を貼っておけば、少し時間は掛かるがゆっくりと周囲を浄化してこの土地を癒す事ができる。防水加工もされてるから、基本的には貼ってしまえばそれで魔物退治は終了、みたいなもんだな」
師匠が穢れ石に札を貼ると、糊もなしに吸着して剥がれなくなった。こうすることで次の魔物は生まれず、ここの穢れ石は実質無効化されたということだ。
「さて、終わったら戦利品漁りだ。この成果次第でお前らの晩飯が豪華になるぞ!」
「「おー!」」
戦利品漁り。
魔物は死ぬと死体を残さず塵になって消えるが、その魔物の核となった鉱物だけは残る。
その鉱物は魔物によってマチマチで、一説には高ランクで強い魔物ほど核となる鉱物が大きく珍しい物になる。
何故鉱石が核になるのかは不明だけど、一説には地脈に溜まる穢れが鉱石に集まるからではないかと言われている。
空気中の塵に水分が集まって雨になる、みたいな感じかな?
こちらの科学はそこまで判明していないのでこの例えは誰にも通じないんだけど。
「さて、とはいえ倒したのはDランクのダルフ。大した物はないんだろうな」
その辺に転がっていた小石、それらをまとめて分析にかける。元々あった石を除いた内訳は……。
金鉱石×3
銀鉱石×5
銅鉱石×5
ルビー×1
サファイア×2
エメラルド×1
うーん、どことなく感じる牧〇物語感。日課の畑仕事の後に坑道潜ると大体こんな感じの戦利品になるよね。
「まぁまぁだな。ダルフだから粒も小せぇ、全部売ったら銀貨5~6枚ってとこか」
銀貨5枚……現代日本円換算なら大体五千円くらい。
銭とか両はどこ行ったんだって言いたくなったけど、この世界平気でドワーフとかエルフとかいるからなぁ。俺の知る歴史は当てにならんと思った方が良さそうだ。
「微妙?」
「いや、この群れの規模なら儲けた方だ。規模がでかくなる前に潰せたのは大きい。魔物は飯の必要もないのに習慣だけで動物を襲ったり畑を荒らしたりするからな」
儲けよりも近隣の安全を守る方が大事。過去に小規模の穢れ石を放置したら翌週には村ひとつが滅ぼされた、とかあったらしいから、魔物に関してはサーチアンドデストロイが基本なんだそうだ。
強い魔物が相手だと高ランクの冒険者を雇うしかなくなるし、自衛できる戦力のないウチの村みたいな所は群れの規模が小さい内に撲滅してしまいたいよな。
今はこの金剛山夫妻がいるだけで安泰なんだけども。
「んじゃ、明日はこの鉱石を売りに町まで行くぞ。売れたら酒場で飯だ!」
「「おー!」」
こうして、俺達の初めての魔物退治は楽勝で終わった。
御告によれば今年のどこかでオレの迎えが来るらしい。それでどのように俺の人生が変わるかは分からないけど、まぁきっと何とかなるだろう。
「酒場のご飯、楽しみだね♡」
「そうだな、美味い肉とか出るといいな」
こうして隣に山茶花が居てくれるなら、俺はきっとどこでもやっていけると思うから。
・魔物
地脈の澱みから生まれた動物に似た姿を持つ、穢れた魔力の塊。
姿形は様々だが、基本的に角が生成されるのでそこで野生生物との見分けがつく。ただしペガサスとかドラゴン等は魔物ではないので注意が必要。
『殺した時に塵になったら魔物、死骸が残ったら生きもの』と語る者もいるとか。実際その通りだが、角のある野生生物はどれも強力な為下手に手を出したら返り討ちに遭うことも。
魔物は己の核として、地脈から浮き上がった際に鉱石を体内に宿して出現する。
この鉱石の大きさや性質によって生まれる魔物が変わるとされ、大きくて珍しい鉱石を宿した魔物は災害にすら例えられることも。




