推察
ボスン!と音を立ててラグが側のベッドに仰向けになり、宵闇は少し離れた椅子に座る。
「なーんか……」
「な」
依頼の内容自体に不満があると言う意味では無かった。むしろ真っ当すぎて拍子抜けしたぐらいだ。
しかし、どうも気持ちの悪さが拭えない。
フェリオンが外部に助力を頼んで来た事や、幻将である彼を中途半端な手練を雇って狙っている所から、第ニ翼島内部……時期的に見ればフェリオンの言う通り、以前遺物を使ってリークを殺そうとした、ウェルズとか言う奴の仲間かと推測できる。
確かに鬱陶しいだろうが……
「いくら生け捕りが難しいからって、手間省くために俺達呼ぶか?」
「あー。暗殺者に狙われてひと月以上も生き残ってるってのは表彰モンだぜ。
オマケに命懸けで狙って来る相手に対して、丸腰で買い食いするほどと来たら、な」
なぜか少々むくれ気味に横にある枕を叩き、紺髪の青年はその手を顔の前に掲げる。
「今んトコ考えるとしたら、だ。
一つ、狙われてるって事自体が演技の可能性。
ニつ、あいつとあいつの部下が単に無能。
もしくは立場やら何やらであまり動けない。
三つ、アサシン共を捕まえるのはあくまでついでで、目的はお前と何か話をする事。
四つ、向こうの雇い主がマジで前の件に絡んでて、厄介な遺物持ってて手に負えない」
指を一本ずつ折りながら推測を口に出し、「どれだと思う?」と顔を自分の方に向けた友人に、宵闇もしばし考える。
「とりあえず、一は多分無い」
「その根拠は?」
「ちょっと心当たりがあるってのと……部下どうこうして、自分の家の屋根焼いて、リークや俺達はともかく、仮にもフェルグランド幻将のあいつが、アスベルの旦那や陛下に弱味見せてまでそんな演技する必要無えだろ」
島が離れているとは言え、他国の幻将や宵闇の動きを翼島王やアスベルが全く把握していないとは考えにくい。
まぁ、宵闇に関しては「壁を創る能力」など、大した驚異にならないと捨て置かれている可能性が高いが。
「まーな」
「最悪考えると四だが、俺としては三がありがたい」
答えた友人の顔を横目で見、ラグはベッドから身を起こして座る。
「話ねぇ……」
紫の瞳を瞼の下に隠して短い溜め息を吐いた。
ベルトから抜いた針を数秒指先で弄んで投げる。
ポキッ!
一直線に宵闇に向かって飛んで行ったそれは、黒い壁に遮られて小さな音と共に折れた。
「危ねえ」
「わりーわりー。
もう完璧に使いこなせてるんじゃねえか?それ」
「前に比べて出し易くなっただけだ。使いこなせてるって感じはしねえ」
開いた自分の手のひらを睨む黒髪の青年に、ラグは何とも言えない気分になった。
およそ一ヶ月前。
宵闇達がキャスグローブから帰って来た時は、街の外に出ていたのでどんな様子だったか詳しく知らないが、次の日バークオルドに呼び出されて聞かされた言葉に一瞬耳を疑った。
「宵闇が、ギルド抜けてぇと言ってきた」




