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Lost fragment ーロスト・フラグメントー  作者: Konori
第3章 獣人島編
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人形


「本題に入りますが、主は襲撃者の存在そのものに思う所があると。

探査(たんさ)』の届かない場所を探せば答えが出てくるはずと言っておられました」

「存在そのもの?」

「はい」


 リークが鼻を鳴らした。


「アスベルもそれを言うということは、嫌な予想が当たったか……

しばらく戦えば想像がつく。

奴は人形の類いだろう?」


(人形?)


「どーゆーことだ?

お前さっきまで、んな事一言も言ってなかったじゃねぇか」


 怪訝な顔をする青年に、「それを言っても意味がなかった」とリークは首を振った。


 セリシアが説明しようと宵闇(よいやみ)の方を向いて口を開く。


「あのならず者に手を焼いている原因は、空間破砕を使っていることだけではありません。

どうやら、致命傷を与えても直ぐに完治するようで。

むしろそちらが厄介なのですよ」

「え?」

「あれは傷が治るなどと言う次元じゃない。

破砕を当てようが、威力の高い術を貫通させようが、数秒で完全に回復して来たんだ。傷どころか服までな。

もっとも、痛覚や意識はしっかり持っているようだったが」

「マジかよ」


 実際にそれを見た訳でない青年も、想像して嫌な気分になる。

だがそれが本当なら、


「何で黙ってたんだ。

あの(じょう)さん危ないだろうが」


 傍らで聞いていたグルムも、青い顔で同調した。


「そ、そうですよ!

た、確かに怪我が治るのが速いみたいだって皆が言ってましたけど、そんなになんて!

すぐ嬢様(じょうさま)を助けに行かないと!」


 セリシアが少し目を伏せる。


「自分たちが駆けつけても、逃げるか力尽きるまでその場で延々と戦い続ける事になりかねません。


 そして宵闇殿を除いて、我々は破砕を防ぐことが出来ない。ディーラ様のように破砕を避けるほどに動けるわけでもない。


逆に足手まといになります」


 冷たい言葉の内容にグルムが「そんな……」と肩を震わせた。

 その少年を宥めるように、リークがいつもより柔らかい声音で続ける。


「グルム、もう少しお前達の『嬢様』を信用しろ。


断言してもいいが奴は破砕使いとして見るなら下の下だ。たとえ異常な再生能力があろうが、ディーラがそう簡単に不覚を取るはずはないさ。


私達には私達の出来る事がある。

あちらの加勢に行けないのは辛いが、何としてでも奴の目的を探り、厄介極まる不死身を無効にする手段を探さねばならない」


「…………」


 グルムが無言のまま何度か頷いてごしごしと涙を拭った。


「で、その手段ってのが『門』なのか?」


 宵闇が話を進める為に口を挟む。

 この島の幻将がどれほど破砕に強かろうと、急ぐに越したことはない。

 リークは考えるように口元に手を当てた。


「いや、『門』は奴の目的を潰す手掛かりであって、奴を倒す手段としてあてにはできない。むしろ遺物の一つなら、見つけてすぐ破壊するべきだ。


奴は自分の持つ破砕の剣を『写し』だと言っていた。

これは随分と飛躍した仮説になるが、もし奴自身も『写し』なら、あの異常さも納得できる。

だからアスベルも『探査』で読めない場所を探せと言ったんだろう」


(そう言えばーー)


 以前リークがフェルグランドの遺跡に行ったのも、あの場所が『探査』で読めない所だからだったか?と、宵闇は記憶を探る。


「発動してるフラグメントは術が通じにくくなるんだっけか?」


 リークから頷きが返された。


「そうだ。だから逆にそれを利用してある程度まで場所を絞り込める。

術が得手でない私では、見れる範囲もたかが知れているがーー

セリシア。何か分かったか?」


 セリシアは片手を耳に当てるようにして眼を閉じていた。瞼を上げながら答える。


「はい。

この島の半分ほどをすでに粗方調べました。

二ヶ所、術が乱されて読めない場所があります」


 青紫の瞳が宵闇の背後に広がる湖へと向けられた。


「一つは谷沿い。おそらくはリーク様の剣でしょう。

もう一つはそこの、泉の辺りです」

「泉の辺りって、もしかして水ん中か?」


 そこまでは、と灰銀の長いポニーテールが振られる。


「『その辺り』だと解るだけですが、隠していることを前提とするなら可能性は高いでしょうね」


 はぁ……

 重たいため息が思わず出る。自分が今、かなりげんなりした顔をしていると宵闇は自覚できた。


「何かすげえ水に縁あるな俺……」

「お前まさか探しに潜る気か?」


 驚くリークに「行くしかねえだろ」と短く返事をする。


「あっちの相手をいつまでも嬢さんにさせとく訳にはいかねえし、探さねぇことには始まらねえんだ。

俺一人で行く。何かあったら水晶で連絡取ろうぜ」


 もう一度息をついて泉の方へと足を向けた。

 数歩歩いた所で、セリシアへの用を思い出し、足を止めて振り返る。


「あ、そーだセリシアさん」

「?」

「これ」

  

 言葉と同時に持っていた銀色に鈍く光る小石を投げる。大きく弧を描いて無事に女性の手のひらに落ちた。


「それに『侵径探査(しんけいたんさ)』っての使って調べといてくれよ。詳しい事はリークが知ってる」

「わかりました」


 再び歩き出した青年の背を見ながら、セリシアは横に立つ白い服の青年へと問いかけた。


「分かれて調べた方が確かに効率的ですが、彼一人で平気でしょうか?

グルム殿に頼めば、泉の水を抜く事も出来るかと」


 リークは首を横に振る。


「あいつが出来ると言ったんだから、多分出来るんだろう。

谷で助けられた時に気付いたが、宵闇のフラグメントは防御壁を作るだけが能ではないらしい。


それより、その石の事だが――」


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