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Lost fragment ーロスト・フラグメントー  作者: Konori
第2章 黒翼島跡地編
50/60

疑念(3)

連れ出すのに使った理由は本当の事だ。


 城の端、騎士立ち寄所の裏。

一本の木の前に二人は立っていた。


 手を伸ばしても枝に届かない位には成長した、日を遮る広く伸びた枝葉が風を受けて僅かに揺れている。


 葉の間に、薄い緑色で少し先の尖った握りこぶし弱の大きさの実が、鈴なりに生っていた。


「まぁ、とても大きな実がつきましたね」


 薄い水色の瞳の眼を細め、嬉しそうに呟くエレーナにリークも頷く。


「はい。これだけ大きな実が沢山生るのを見たのは、私も今年が初めてです」


「この木を送ったのは、確かあなたが騎士団に入った日でしたね」


 憂いを帯びた声。


 葉は煎じれば熱冷ましになり、実を潰した汁は怪我に塗れば良く効く。


(あの時母上は、どんな気持ちで私にこの木をくださったのだろう)


 リークの目線が下を向く。

 リークが産まれてすぐ、男として生きるよう決められた事。

 その事をリーク自身が割り切り、そう生きることを自らに課した事。


 自分に関するそれらが、隣に立つ女性の心労を深めている事はよく判っている。

この木は、彼女の優しさと心配の象徴だ。


(それでも面倒事の情報源として、母を連れ出す理由に使う私は、父や兄と同類なのかもしれんな)


 心の中でそう思いながらもリークは顔を隣に向けた。


「母上」

「何か聞きたい事があるのでしょう?」

「!」

「そんなに驚かないで?」


 くすっと笑って、エレーナは木から娘へと顔を向ける。


「これでもわたくしはあなたの親ですもの。

それにメリアは真っ直ぐだから、とても分かりやすいわ」

「すみません」

「謝らないで。呼びに来た理由が何であっても、あなたがこの木を気にかけていてくれたのは、とても嬉しいもの」


 朗らかに笑い、リークの手をそっと握る。


「それで、聞きたい事は何かしら?

わたくしで力になれれば良いのだけれど……」


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