疑念(3)
連れ出すのに使った理由は本当の事だ。
城の端、騎士立ち寄所の裏。
一本の木の前に二人は立っていた。
手を伸ばしても枝に届かない位には成長した、日を遮る広く伸びた枝葉が風を受けて僅かに揺れている。
葉の間に、薄い緑色で少し先の尖った握りこぶし弱の大きさの実が、鈴なりに生っていた。
「まぁ、とても大きな実がつきましたね」
薄い水色の瞳の眼を細め、嬉しそうに呟くエレーナにリークも頷く。
「はい。これだけ大きな実が沢山生るのを見たのは、私も今年が初めてです」
「この木を送ったのは、確かあなたが騎士団に入った日でしたね」
憂いを帯びた声。
葉は煎じれば熱冷ましになり、実を潰した汁は怪我に塗れば良く効く。
(あの時母上は、どんな気持ちで私にこの木をくださったのだろう)
リークの目線が下を向く。
リークが産まれてすぐ、男として生きるよう決められた事。
その事をリーク自身が割り切り、そう生きることを自らに課した事。
自分に関するそれらが、隣に立つ女性の心労を深めている事はよく判っている。
この木は、彼女の優しさと心配の象徴だ。
(それでも面倒事の情報源として、母を連れ出す理由に使う私は、父や兄と同類なのかもしれんな)
心の中でそう思いながらもリークは顔を隣に向けた。
「母上」
「何か聞きたい事があるのでしょう?」
「!」
「そんなに驚かないで?」
くすっと笑って、エレーナは木から娘へと顔を向ける。
「これでもわたくしはあなたの親ですもの。
それにメリアは真っ直ぐだから、とても分かりやすいわ」
「すみません」
「謝らないで。呼びに来た理由が何であっても、あなたがこの木を気にかけていてくれたのは、とても嬉しいもの」
朗らかに笑い、リークの手をそっと握る。
「それで、聞きたい事は何かしら?
わたくしで力になれれば良いのだけれど……」




