フェリオン(3)
話している内に、更衣室代わりになっている、来客用の個室の扉が近付いてくる。
「はー……。やっとこの窮屈な服が脱げるぜ」
「着ていたのはただの数時間だったろう」
「それでもしんどかったんだよ」
それぞれ割り当てられた部屋に入り服を着替え……
出て来た宵闇はいつもの白いシャツと黒のズボン、暗緑のマント。
リークも白で統一されたハイネックに、ノンスリーブの寒そうな服にズボン、首から下げた何かの石と鉱板を組み合わせた飾りと言う、変わり映えのしない格好。
そして……
「「………………」」
向かいの部屋から出て来たフェリオンを見て、ニ人がしばし無言になる。
「何だ?」
「いや、本気で街で過ごす気なんだなーって」
「変かい?」
きょとんとする当の本人の格好は、襟の付いた黒っぽいシャツに、少し明るめの赤茶色のベストとズボン。
ベストの下に紐が隠れるようにして、腰にやや小型の革鞄を吊るしており、鞄の端から突き出している紺色の布で包んだ何かは、おそらく腰に差していた2本の短剣だろう。
どこからどう見てもただの旅人のソレだった。
「全然。むしろ馴染みすぎてるぐらいだ」
宵闇の答えを聞いて、よかったと笑う青年に、さっきまでは辛うじてあった凛々しさは無い。
(性格までさらに軽くなってる気がするのは気のせいか?)
そう思うが、見ていると何となくギルド仲間を彷彿とさせるので悪い気持ちは起きない。
が、流石にその後フェリオンから出て来た言葉には目が点になった。
「って訳で宵闇、街の事は詳しいと思うからいい酒場に案内してくれると助かる」
「あんたな…………」
「正気かフェリオンっ」
リークが青筋を立てながら声を荒げる。
元々城住まいの王族である彼女には宵闇以上に全く理解ができないようだ。
「いくらなんでも自由すぎるだろう!もう少し幻将を名乗っている自覚をーー」
「俺酒に強いし、名乗らなければバレないさ。
俺の昔貯めてた金で飲むから、それなら問題ないだろ?」
ある意味頑固と言うべきか、すでに行く事は決定らしい。宵闇が案内しなくてもこの青年は自分で探すだろう。
「宵闇」
なぜかリークからドスの効いた声と刃の視線を向けられた。
「な、何だよ……」
「万一何かあったら事だ。明日の仕事まではフェリオンと行動しろ。
もし青毛の予定が空いていれば、仕事の間護衛を頼んでおけ」
「一応聞くけど、お前は?」
「この髪と目で街をうろつけと?騒ぎはごめんだ」
リークの指がセイン家の印とも言うべき白銀の髪と翡翠の眼を指す。
隠しても慣れていない分フェリオンより悪目立ちしそうだ。
「わかったよ」
後ろ頭をガリガリ掻いて宵闇が渋々引き受ける。
「あんた、頼むから馬鹿をしないでくれよ?
情報屋とか、それこそ賊の親戚みたいなのも結構いるからな」
念を押された青年は、「分かってる。大丈夫さ」と、笑いながら返事を返した。




