会合(2)
数時間後
フェルガリアから南西にある小さな街。
狭い路地を紺髪の青年は歩いていた。
黒っぽいインナーに砂色の上着。胸の前に左手で少し大きめの紙袋を抱え、右手は腰のベルトに挿された短刀の柄にあてられている。
(心気臭ぇ町だなぁ)
そんな事を思いながら歩を進める。
街と言うより村と言った方がいいかもしれない。
ラグがここに着いたのはついさっきで、外にいる人影ももう見当たらなかった。
「さぁて、と」
窓から光を漏らす一軒の宿屋に足を運ぶ。
「いらっしゃい。一晩かい?銀十になるけど」
笑顔で迎えた女将らしき中年の女性に、ラグはへらりと顔を緩めた。
通常片田舎の宿屋で一泊なら相場は一桁違うが、高いなどとはごねない。
「ああ、一晩泊めてくれ。食い物買ってたら日が暮れちまってさぁ」
「この辺りは夜出るのは危ないからね」
「獣に食われちまうからな」
「夕食、部屋まで持って行こうか?」
「いや、疲れてて寝たいんだ。だから飯はいいよ」
一言ニ言おかみと会話しながら、差し出された宿泊簿にペンを走らせる
“リック=バートン”
紙面に残されたのはラグが使っているもう一つの名だった。
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「もっほひんきくへぇ(もっと心気臭ぇ)ごくん、もんかと思ってたけど、そうでもねぇんだな」
城の一室の端で食べ物を乗せた皿を手に、宵闇は珍しそうに周りを見渡した。
テーブルクロスの掛かった長テーブルが並ぶ室内で、立食パーティーのような感じになっている。
来たのは幻将だけではないようで、その場にいる人数も宵闇達や給仕を含めて二十人弱いた。
「食べながら喋るな。あと周りをキョロキョロ見るんじゃない。
公で行う重々しい会議じゃないんだ。当然だろう」
横で不快そうに眉をよせながら言う白銀髪の青年に、宵闇は首を振る。
「お前にとって常識でも、俺はこんな場所に来た事なんか無ぇんだよ。
あー、落ち着かねぇ」
言いながら空いている方の手で自分の服をつまんだ。
ニ時間程前に、「これに着替えておくように」と給仕を介してアスベルに押し付けられたのは、白と青を基調に金の刺繍が所々に入った高そうな礼服。
因みに髪も城の使用人たちに捕まって、強制的に整えられてしまっている。
「こういう場所ではそれなりの格好をするものだ。凄く意外だが似合ってるぞ?」
式典用にあつらえてあるのだろう、所々ローブの要素を足したような軽装鎧を身につけているリークが、軽く茶化す。
「嬉しくねぇ」
重く呟いた宵闇の背中にケラケラと笑い声がかけられた。
「君には窮屈かもしれないねぇ、その格好☆」
「道化か」
リークが宵闇の後ろから歩いて来た、金髪の少年へと目を向ける。
フィレットは、流石に先日見た赤い道化服ではなく、薄黄色のローブと、同色の紅玉飾りのついた鍔のない帽子を身に付けていた。




