終幕(2)
薄暗い通路で光を漂わせた少年を、法衣の男が呼び止める。
「もう帰るのかい?」
「うん。
あの事が片付いたから、僕がここにいる理由は無いよ。
仕事山積みだし帰らなきゃ」
笑って去ろうとする背中を、翡翠の瞳が見つめる。
「その前に、1つ質問に答えてくれないかい?」
小さい肩が少し揺れて止まった。
「やっぱりバレてた?
怖い人だなぁ」
「ああ。
なぜ彼らをすぐに助けず、様子見をしていたのかがすごく気になってね。
君は、彼らが手遅れになっても良かったんじゃないのかな?」
「・・・・」
「君の所からあれが盗まれたのは本当だろう。
だがあの愚かな老人の行動は、君にとって脅威であると同時に利用出来る点もあったはずだ。
リークの剣も等しく脅威だからね」
「それって、僕がリークを殺したがってたってこと?」
「正確にはフラグメントを使う者。リークと、宵闇君かな?」
「ほーんと怖いヒトだよね、アスベルさんは」
くるんと体を回転させてアスベルに向き直る。
大きな青緑の瞳は静かだった。
「僕はロスト・フラグメントなんて得体の知れない危ないモノ、存在しない方がいいと思ってる。
見捨ててもいいかなーとか考えちゃったのは確かだけどね。
あれは、天秤にかける間ってやつだよ」
「その天秤が彼らを助ける方に偏ったと」
「そゆこと。リークがあれを持ってるのはかなり前からだし、2人とも悪い事考えて使う性格じゃないもんね。見捨てると後が面倒だったし。
結果的に頑張ったんだから、少しの気の迷いぐらいは見逃してくれると嬉しいんだけど?」
お互いに、口の端が上がっていた。
「やれやれ、怖いのは君の方だよ。フィレット」
「貴方に褒めて貰えるなんて光栄だね。
話が終わったんなら行くよ」
そう言って光を纏う少年を、アスベルは面白そうに見送った。




