終幕(1)
元は鬱蒼と木が茂る森の中だったのが、見る影もないほどの荒野と化していた。
「うまくいった・・・・・・のか?」
無数のかけらの雪が降る中で、宵闇が地面に腰を下ろしかけてやめる。
(今座ると立てなくなっちまう。ゆっくりするのはまだ先だ)
悲鳴を上げる身体を引きずり、後ろを振りかえる。
全員意識はあったが、立ち上がれる者はいないようだった。
仰向けに寝転がったラグの、血の気のない逆さの顔と目が合う。
「そんな状態で術使うなよ。助かったけど」
へへへ・・と力ない笑い声が応える。
「結果オーライ?」
「何がオーライだ。半死人は寝てろって。
すぐ麓の治療所探して・・」
「その必要はありません」
「!あんたは・・」
以前アスベルの部下を名乗った長身の女性が、いつの間にか宵闇の後ろ、少し離れた位置に立っていた。
「セリシアだ~」
フィレットが上半身だけ起こして這って来ようとするのをセリシアが静かに近寄って止める。
「そのような身体で動かれてはなりません」
「だって、キミが来たって事はあっちが片付いたんでしょ?それ早く聞きたくてさぁ」
「・・・・」
座っている白銀髪の青年は、少し離れた場所から無言で女性と少年を睨んでいた。
目を合わせずにセリシアが応える。
「ご安心くださいリーク様。
主に貴方を殺そうと言う意思はございません」
そして、持っていた水晶のような物で地面に線を引き始めた。
ほどなくソレは5人を囲むように繋がって発光する。
「詳しい話は翼島で主にお聞きください」
セリシアが頭を下げた瞬間、景色が反転した。
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「結局、今回の事は何だったんだろうな」
広い空間に二つ並んだベッドの片側の上でラグが呟く。
「さあな。訳分かんねーことだらけだ。
皆ボロボロだったし、明日説明するつもりなのかもな」
そのベッドの横に座っている宵闇はため息を吐いて、手に持っていたコップの水を喉に流した。
アスベル私邸の庭に移動した後大した説明も受けないまま傷を高速で治療され、宵闇とラグはなぜか金貨の詰まった袋を渡され客室に運ばれた。
ラグの怪我は酷く、輸血できない厄介な体質な為一時は危なかったらしいが、内密に知らせを受けたバークオルドがギルドにある治癒所の貯蔵庫から本人の血を運んで来てくれたおかげで、今は普通に会話出来る程度には回復している。
そして先ほど運ばれてきた早めの夕食を摂り、今だ。
「なぁ、お前のあの黒い壁」
「ん?」
「いや、何でもねぇ」
言い掛けた事を取り消して青年は紫眼を閉じた。
ごろんと宵闇に背を向けて右手を振る。
「お前も休めよ。
いつまでも『俺のせいで怪我させた』みたいな顔でいられると気が重くて仕方ねぇ。
あと野郎に添い寝される趣味は無いからな」
「普段の調子が戻って来たみたいだな。
俺もねえよ」
苦笑いしながら腰を上げる。
まだ日が落ちたばかりの時間だったが、1日中寝れそうなぐらい疲労感が酷かった。
少し離れた場所にあるもう一つのベッドに横になると、すぐに睡魔に襲われた。




