活路(3)
「どうやら終わったようですね」
アスベルは、見る者をゾッとさせる雰囲気を纏ったまま部屋の真ん中に立っていた。
冷たい視線の先には、部屋の隅で僅かに震える肉塊
「化け物が」
「やれやれ、悪魔の次は化け物ですか。私も随分と酷く言われたものです。
今のご自分の姿を見てから仰ったらどうですか?」
アスベルを囲んでいたモノ達は既に姿すら無かった。あるのは、おびただしい血痕。
呻く老人の右半分は、皮膚が溶けて赤く光っていた。じわじわとその部分は、人の形をしている場所を浸食している。
「貴方が扱うには過ぎた代物だと言ったでしょう?」
老人の右手の辺りには淡く明滅する金属片が埋まっていた。
「使う度に自身が呑まれていることにも気付かなかったようですね。
その腕を落とせば助かるかもしれませんが、答えて頂かねば・・
貴方に欠片のことを教えたのは、誰です?」
「・・・・同胞は、売らぬ!特に、貴様の様な輩には!」
「それは残念」
凄絶な形相で睨む肉塊に、あまり残念でも無い様子で男は笑みを浮かべた。
片手をゆっくり回す。
アスベルの前に現れた白い光の円は揺らめきながら、半分異形と化した老人を囲むように降りていく。
『分かつ世界を』
白光からせり上がった硬質なガラス光沢の壁は、彼の右手と胴体を切り離して身体の方を閉じ込めた。
小さな湿った音を立てて絨毯の上に落ちた金属片を、淡く光を纏ったアスベルの手が掴む。
「『隔絶』の術には色々使い方がありましてね。
その壁は徐々に狭くなっていくようにしてあります。
残された時間を、せいぜいそこで有意義に過ごして下さい」
言葉と翡翠の目に嘲る様な色を宿して踵を返した白い法衣の男に、掛けられた言葉は無かった。




