活路(2)
「道化。奴らがどこまで居るか範囲は分かるか?」
「正確にはわかんないけど、大体1キロってとこじゃないかな。術で引き寄せればもう少し狭められるよ」
「任せる」
「じゃ、2人とも、僕の側から離れちゃ駄目だよ。
大技いくからね!」
両腕を軽く広げた少年の足元から、大気が震える。
『我有するは魔・・我属するは星・・我・・求めるは闇・・我創るは門・・!
ヘルゲート!!』
頭上高くに巨大な黒い穴が開いて周囲の異形を吸い込んでいき、同時に穴から迸る黒い稲妻が触れた場所を塵に変える。
フィレットの体が傾ぐ。宵闇が支えて様子を見ると、青ざめた顔でぐったりしていた。
「一発で倒れる様な術使ったのかよ。
ホント、末恐ろしいガキだな」
「道化には道化なりの、多少無理をしてもここを我々と抜けねばならない理由があったのだろう。
次は我らの番だ。せっかくの機を無駄にはできん」
ラグとフィレットを挟むように、背中を向けて宵闇とリークが立つ。
「1つアドバイスだ。
己の魔力と体力をありったけぶつける感覚で行け」
「覚えとく」
穴がすぼまって掻き消え、稲妻が途切れた。
闇の嵐を逃れた者達が数を増やしながら4人に襲いかかる。
「やるぞ!失敗るなよ!!」
「ああ!」
『うおぁあぁああああ!』
渾身の叫びが重なる。
リークが剣を地面に突き立て、見る限り全方向がさながら泡のように薄青の球体で埋めつくされる。
ギシギシと軋む音。
出現した半球を支える様に宵闇は斜め上に両腕を伸ばす。
ギシ・・ギシ・・ミシ
圧力が身体を襲う。
1度は塞がれた肩と足の傷が再び口を開ける。
「ぐ・・うっ!」
たまらず片膝をつく宵闇に、更に巨大な圧力が加えられた。
後ろで鳴る、何かが地面に落ちるような音。
おそらくリークだろう。
(死にたくない。
あいつらも、死なせたくない!)
噛み切った唇の端から血が滲む。
『ヒリーアル』
「!!」
酷かった傷の痛みと疲労感が僅かに和らいだ。
フィレットではない。
自分の後ろで倒れているはずの友人の声だった。
(ラグ、ありがとな!)
圧力が消えたわけではない。目を閉じて、悲鳴を上げる身体の中に意識を向ける。
浮かぶのは遺跡の奥で会った、自分そっくりの青年の姿。
ー全てを護る力は、時に望む結果を生み、時に望まぬ悲劇を呼ぶー
(あいつは、「ならば共に」って言ってた)
「おい、遺跡ん中にいた俺っ!今すぐ力を貸せ!!」
押し殺すように言葉を絞り出す。
「俺の望みは、守ることだ!
俺自身も、こいつらも・・っ!
絶対ぇ、生き残る!!」
破壊は大地を崩し、木々を裂き、赤い異形達を蹂躙していく。
そして、雪が降った。




