活路(1)
もう何度か聞いた割れる音。
一部分だけねじれた景色と飛び散る半透明の欠片。
「な・・
何考えてんだ!!」
宵闇は目の前の青年に大声で怒鳴った。
倒れたラグの傷を塞ぎながら悩むような顔をしていたリークは、急に真っ直ぐ宵闇を見上げたと思うと、フィレットに時間稼ぎを頼んで宵闇に剣を向けたのだ。
「いきなりとんでもねぇ真似しやがって!壁がなかったら怪我じゃーー」
言い掛けて、はっと言葉に詰まった。
「壁がなければ、だろう?
お前を囲んでいるソレは何だ?」
1秒弱の沈黙の内に、壁はすぐに薄れて消える。
「さっきまでいくら出そうとしても出なかったのに」
「あの遺跡にあった力、不可侵の結界と言い、守りに特化しているようだからな。
思った通り、私の剣が持つ空間破砕も防ぐようだ」
言いながら1人で異形相手に立ち回っている少年を助けに走る。
「空間破砕?」
「そうだ。定めた空間を破砕する力。
本来、いかに強固な盾や魔術でも破壊を逃れることは出来ない。
お前の創るあの壁を除いてな」
「まさかとは思うが・・」
ラグを背後に庇う位置で防戦する宵闇の予想は当たりのようだった。
「失敗したら、どうなる?」
「言うまでも無いことだと思うケド」
空中から氷の矢を飛ばして異形を地面に縫い付けていたフィレットが答える。
「僕ら全員、良くて判別のつく死体だろうね。
でも今の状態じゃ、僕も君の友達を背負ってここから離脱するのは無理」
「持ち主である自覚もなく、使い方も知らない奴に私とて命運を任せたくはないが、1番全員が助かる可能性が高いんだ。
賭けに乗るかどうかはお前が決めろ」
「・・・・」
さっきまで自分を囲っていた壁の辺りに視線を落とす。
(俺があれを使えれば、助かる)
(失敗すれば・・)
(他の手は、無いよなそんなもん)
(できるのか?)
(恐え)
(恐がんな俺!!)
「ーーーー・・」
顔を上げる。
黒線で襲い来る赤い影を凪ぎ払う。
一息吸い込んで、
「おい、リーク、フィレット。
俺は、その賭けに乗る!」
返って来たのは無言の頷きだった。




