強襲(6)
フィレットが助けに入ってから、すでに何時間経っただろうか。
空が白み始めてもまだ事態は好転しなかった。と、言うより確実に悪化していた。
1体1体は敵ではないレベルだが、世界を縮小して例えるなら“軍隊アリ対小動物”だ。
まだ軍隊アリの方が少ないかもしれないとまで思えてくる。
4人全員が肩で息をしており、特にラグは見るからに限界だった。
1番長く戦い続けな事もあるが、元々ラグは対多数で長々と戦うのは苦手なのだ。
髪に着けている魔力貯蔵術具のピンも2本減っている
(せめて、さっきの黒い壁が出せれば)
自分がやったと言う自覚はあっても、造り方がわからなかった。
(『近づくな』って念じるのじゃ駄目みたいだしな・・)
「宵闇!!」
鋭い声に振り向くと、目の前に異形の顔があった。
(まずい!)
ドカッ!
反応しきれない宵闇を横から衝撃が襲う。
流れる視界の端に映ったのは、紺の髪に衣服の黒。
そして、飛び散る赤い水滴。
「・・にボーッとしてんだよ、馬鹿」
紫の瞳だけが宵闇の方を向く。
その下の首には異形の牙が食いこみ、背中からは血で濡れた刃物が生えていた。
「ーーーっ!!」
こちらの異変に気付いたリークとフィレットが走って来る。
宵闇の線が噛みついた異形の首を落とすと同時に、親友の身体はゆっくりと地面に倒れた。
『ウォール!』
少年が四面に防護壁を造り出し、色白の腕が首に噛みついたままの頭を剥がす。
『月の光よ再生をここに』
傷は塞がっていくが出血があまりに酷かった。
宵闇は半分混乱しながら、近付く異形を倒していく。
「おい」
傷を見ていたリークが宵闇を呼ぶ。
「ラグは!?」
「すぐにでも治療所に運んで数人で治さねばまずい」
「なら、頼む!
俺は翔べねぇから、できるだけ奴らの動きを止める!」
「無理だ。私とて1人抱えて高速で翔ぶ余力はない。奴らも付いてくる。道化1人でも運べん。
取るべき方法は、短時間で奴らを滅すること」
「それができりゃ、こうなってねぇだろうが!」
「方法に1つだけ心当たりがある。
危険すぎる賭けだがな」
そう言って、リークは意を決した様に真っ直ぐ宵闇の眼を見た。




