強襲(2)
赤黒い身体、
落ち窪んだ目、
裂けた口から覗くびっしりと生えた牙、
腕から伸びる金属製の刃物。
明らかに人に近い形をした、しかしどう見ても人とは呼べない異様な者達がそこにいた。
幾本もの鋼の針が深く刺さっているが、痛がる様子は微塵もない。
『我有するは魔・我属するは星・我求めるは風・我放つは雷・・ヴォルト!!』
石室天井近くに発生した雷が針に降り注いで異形を焼いた。
その中を高速で動き回る残像。
炭と化して倒れる集団の中に突っ込み、短刀を振るうと同時にベルトから小瓶を抜き中の火薬をばらまいて爆破させる。
轟音と煙の中から飛び出して来た背中を、宵闇がとっさに支えた。
「っと!宵闇、帰ってきたのか」
支えられたラグが振り返る。
「遅ぇよ。見ての通り、結構面倒なことになってる」
「何なんだありゃ」
「知らねえよ。
急に『結界』とやらが解かれたらしくて押し寄せて来たのさ。
倒しても倒してもわんさと湧いて来やがって、うざってぇったら無ぇ!」
視線を爆煙に戻して苛立った様に言う。
その言葉を証明するかのごとく、石室の入口、倒された仲間を踏んで新しく何体もの赤い姿が現れた。
「結界が消えたのは、単にこの場所が役目を終えたからだろう。
宵闇がモノを受け取ったから、護る必要がなくなったんだ」
リークが数歩進み出て、抜き身の剣を前に突き出すようにして立つ。
「ここにいても仕方がない。
とりあえず外へ出るぞ」
「気を付けてくれ。1回や2回斬ったぐらいじゃ、そいつら構わず向かって来るぜ」
ラグの忠告に白銀の髪を揺らして顔だけ振り向く。
「アレには2度襲われているから十分知っている。問題無い。
要は、頭と心臓を潰せばいい!」
宵闇の目に、リークの剣から波状に広がる青白い光と、異形に重なるように浮かぶ大小の円がはっきり映る。
ガガガガガガガガガガガッ!!
直後、耳を押さえたくなるほどの堅い音が響いたその後には、前にいたはずの異形が見る限り全て倒れ伏していた。
無言で出口へと走り出した白い背を、宵闇とラグが慌てて追う。
走りながら、ラグがヒュゥ!と感嘆の口笛を鳴らした。
「すげーな。何の手品だこれ?」
通路の途中で痙攣する赤い身体は、その全てが身体の半分以上を失っていた。
宵闇の背に怖気が走る。
「多分俺の肩裂いたヤツだ。こんなやべぇのだったんだな」
「マジ?よくあの程度で済んだな」
「まったくだ」
ラグの言葉に澄んだアルトの声が同意する。
前で半透明のカケラを散らしながら走るリークだ。
「一般人に毛が生えた程度だと思っていた雇われ者に、この力が防がれるとは思っても見なかった。
あれほど驚いたことは無い」
「?お前もしかして悔しがってるのか?」
「五月蝿い」
間髪入れずに憮然とした言葉が返ってくる。図星らしい。
「もうすぐ出口のはずだ。呑気に喋り余裕はなくなるぞ」
走っている薄暗い通路の奥に、うっすらと光が入り込む。
石のアーチをくぐって、月の光が降る森の中へと飛び出した3人は、一様に足を止めて顔を強ばらせた。




