強襲(1)
「戻って来た、ようだな」
冷たい石の上でリークは起き上がる。
床に剣の先端で素早く円を描く。
『偽りし形骸の面』
全身を襲う痛みと同時に、白い青年の身体は普段の姿に戻ってゆく。
月術の中でも使えるものが少ない高位術・『偽形』だ。
戻った体で無言のまま秒速で剣を抜いて振り、鞘に戻す。
「よし」
手を握ったり開いたりして体が異常なく動くことに頷いて隣に目を向けると、片膝をついた宵闇がいた。
「戻るぞ。さっさと立て。
おそらく遺跡の防護結界が解けている。このままここに留っていても良いことはない」
「あ、ああ」
リークの声に応えた青年の周りには半透明の揺らぎが生まれていた。立ち上がると同時に薄れて消える。
「・・・・」
それを見た二人の間で数瞬の間沈黙が流れたが、どちらともなく足を帰る方向へと向けた。
早足で通路を引き返すにつれ、嫌な音が響いて来る。
爆音と刃物の音だ。
「この音・・ラグが闘ってんのか!?」
「予想はしていたが早いな。入れるようになるのを待っていたか・・」
「なっ、お前分かってたんなら言えよ!」
「言えばお前は付いて来なかっただろう。
あの青毛もそれなりに腕が立つと思ったから言う必要もないと判断したんだ。
だが気配からしてかなり沢山いるようだ。急ぐぞ」
「お前に言われるまでもねぇよ!」
走ること数分。宵闇の視界に見慣れた姿が入る。
肩を揺らす友人のその奥には、数え切れない数の赤が犇めいていた。




