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元独裁者が異世界で生きる話  作者: みみみみやっち
1章 新たな世界での日常

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23話 炎牙対鉄真

俺は左手を治した。


「残りの魔力は六割くらいか。

俺の魔力効率が悪いとはいえ再生って消耗凄いんだよな」


アヘナとの戦いでは索敵と纏うことしかしてないから消耗はしていない。

つまり左手の再生だけで約四割の魔力を使用したということになる。


「再生は切り札みたいなもんだな。

戦闘中に魔力がなくなるのはやばい」


魔力がなくなった時の気分の悪さは最悪だったのを思い出す。

体のエネルギーがゼロになっているのだから当たり前といえば当たり前だが。




炎牙視点




地面に仕掛けた魔力が突破された。

魔力に触れることなくこちらに向かってくる。

魔力を高速で動かして狙うが届く前に相手が地面に流した魔力と

ぶつかり合い相殺される。


「炎華みたいな身体能力に物言わせたやり方じゃねえ……上手いな」


あのマトモと狂人の間を行き来してるような脳筋娘(炎華)とは全然違う。

炎華みたいな馬鹿の攻撃なら読めないこともないが

こいつは読まれたとしても上手くやってきそうな雰囲気がある。


「なに考えてるかはっきりとは分かんないけどさ。

多分すごい失礼なこと考えてない?」


俺は鉄真が喋りながら放った蹴りを腕で受ける。

炎華の金棒と同等の重さの蹴りを受けて

俺の左腕は炎華のとき同様に骨がやられた。


「鉄真に対してじゃないけどな……っていうか鉄真。お前強くないか?」


なんで喋りながら放つ蹴りが金棒と同じくらい重いんだよ。

そうぼやきたくなるが鬼の高い身体能力にも当たり前に個人差があることを

思い出し鉄真のほうが身体能力が上と自分で勝手に納得した。


「そう?炎華や影葉と似たようなもんだと思うけどな」


「いや絶対、炎華より鉄真のほうが強いって」


「炎牙は熱に耐性があるから炎華と相性が良かっただけじゃない?」


そう言われるとそんな気もしてくる。

俺が炎華を低く見積もっているのか。

思考が揺れ始めたのでそれについて考えるのをやめる。

どちらにしろ鉄真が蹴りで俺の腕を

壊せる身体能力を持っている事実は変わらないのだ。


「かもな」


俺は会話を切り上げ集中する。

簡単に勝てる相手じゃない。

俺が集中するのを見て鉄真も構える。

左腕はすでに再生させた。


鉄真が動いた。

間合いを詰め木の槍による

シンプルな突きが鉄真から放たれる。


(喉!)


俺は見切り首を傾け回避する。

紙一重でかわした俺の背後では木が倒れる。

回避完了と同時に掴みかかった。

俺の右手が鉄真に触れる直前、右足の下に魔力を感知した。

考えるより先に右足を一歩下げる。

直後、右足があった場所の地面がピンポイントでへこんだ。

右足を勢いよく下げたことにより僅かに重心が崩れ

掴みかかった右手が勢いを落とす。


右手の勢いが落ちたのを瞬時に自覚して

右足を下げた勢いのまま回転して顔に向かって回し蹴りを放つ。

鉄真は槍を手の中で滑らせながら右腕をあげ槍の上部を右手で持ったまま

左手を槍の下部に添え蹴りを受けた。


高めの蹴りで隙ができた俺の足を

鉄真が左手で掴みに来る。

それに対し俺は足周りを爆発させ、その衝撃で

鉄真を牽制しながら無理やり回避した。



爆発の衝撃で後ろに下がったため俺と鉄真の攻防が一旦止まる。

時間にすればほんの僅かな時間の攻防だったが

両者はそれに見合わない量の体力を消耗していた。


モノが提案した遊びと言ってしまえばそれまでだが

二人は戦いに限界まで集中していた。

すなわち全力だったのだ。


落ち着いた二人の思考は一致する。

それはモノへの怒り。

怒り、そのように表現すると大袈裟だが

要は二人とも


((最下位は嫌だ))


そう考えているだけである。


順当にやれば提案者であるモノが敗者側になり

馬鹿にされる側になることは間違いない。

というか戦闘をやる時点でモノが馬鹿にされることは確定。

仮にモノが同じく実力が低めのアヘナに勝ったとしても敗者側。

アヘナに気を使いながらになるだけでどちらにしろモノが馬鹿にされる。

モノが聞いたら怒るか冷静にツッコミをしてきそうだが

それは疑いようのない事実。


だがバトロワだと誰が最下位になるかわからないのだ。


(一応強い側の俺がモノより下は絶対馬鹿にされる。

馬鹿にされなくても炎牙モノより下だったね……、

とか馬鹿にして笑うことすらできず微妙な空気になる。それは最悪だ)


炎牙はそれを確信していて


(モノを率先して馬鹿にするのは影葉。

俺がモノより下だったら絶対馬鹿にされる。

炎牙なら影葉とまだ出会って間もないから遠慮されるかもだけど

俺は長い付き合いだから絶対あいつも遠慮なく馬鹿にする)


鉄真は炎牙と違い鍛冶がメインの自分が強い側とは思ってないが

同じようにそれを確信していた。


どちらもモノを馬鹿にしているが二人ともそこは気にしていない。

というか最近、魔力や戦いを覚えたやつに負けたら

こっちのプライドがズタボロになる。


モノが嫌いとかではなく、仲もいいし認めてもいるが

戦闘の実力となると、どうやってもモノは劣るのだ。

正面戦闘の実力は低いけど立ち回りが上手いとか

指揮ができるとかならまだ強いと言えるかもしれないがそれもないのだ。

才能は間違いなくあるが経験が足りなすぎるのが現在のモノである。


そんなことを考えていた二人だが聞こえた戦闘音で思考を戻す。


「誰かが戦ってるな。あっちの決着が……」


あっちの決着がつくまで一旦休憩しないか?

俺がそうと言おうとした瞬間に鉄真が突きを繰り出した。


「ちょ……!」


俺は右腕で受けながら避ける。

右腕にヒビがいった。

俺は治しながら後ろに下がり距離を取る。


「せめて話は最後まで聞けよ!」


「分かってる。あっちの決着が

つくまで休憩しようって話だろ?」


「分かってるなら……」


「自分より下は多いほうが安全だから」


「モノが戦ってなかったら無駄な犠牲を増やすことになるだろ!」


モノが最下位になるのがベスト。

最悪モノじゃなくても自分以外の誰かが最下位になるならセーフ。

自分がモノより上の順位になることが重要なのだ。

あの戦闘がモノじゃなかった場合は誰かが最下位になりひとまず安心。

モノだとしてもモノが最下位になるか誰かがモノに負け矛先がモノに負けた

そいつに向くからセーフ。


お互いが最下位にならないように一旦休憩しようと

俺が提案してるのにこいつ……!


「やっぱお前、炎華と影葉と幼馴染だよ!

絶妙に狂ったとことか似てるわ!」


「あいつらと似てるは微妙に傷つくからやめてくれない」


「ああごめん。じゃなくて俺達が最下位にならないように

一旦休憩をしようって!」


結構マジなトーンで言われたので思わず謝ってしまった。

それでもさっきのことがあるので警戒をしながらもう一度提案する。


「いや炎牙がここで負ければ俺の最下位はないから」


「あぁ駄目だこいつ、話通じねぇ!」


鉄真が槍を振る。

俺はそれに合わせて先の蹴りで槍に付与した魔力を爆破させた。

槍の軌道がぶれたのを見て消えない炎、獄炎を薙ぎ払うように出す。

下から生えてきた土壁に俺の薙ぎ払った右腕と獄炎が止められる。

土壁を爆破させた。

俺と鉄真を魔力を纏った土の弾丸が襲う。

お互い後ろに下がるが全ては回避しきれず傷が増えた。


「せめて武器はやりたかったな……」


警戒されていたのか鉄真の木の槍は爆破したのに壊れていない。

付与した魔力が少ないというのもあるだろうが

十分壊せるはずだった。

壊れてないということは爆破の瞬間に気を抜かず爆破以上の

魔力を纏っていたということだ。


「ちゃんと警戒してたから」


鉄真はそう言って地面に魔力を流した。

俺は鉄真の魔力に自分の魔力をぶつけ相殺を試みるが

そっちに集中したところで鉄真の突きが来た。

それを避けたことで魔力操作が乱れすべてを相殺することはできなかった。

地面が隆起して生き物のように襲ってくる。


左から突っ込んでくる地面を殴りながら爆破させる。

俺の意識が迫る地面に向いた瞬間を狙い

鉄真は終わらせる気で突きを繰り出した。


「ぐぇ……」


俺はその突きを腹で受けた。

変な声が漏れるほどの衝撃がきて

吐きそうになるのを歯を食いしばって耐えつつ

槍を掴み半身を下げながら引っ張る。

そしてバランスを崩し前のめりになった鉄真に空いている左手を

握りしめ爆破させ、その勢いも利用して拳を当てに行く。


鉄真は冷静だった。

前のめりになった姿勢から冷静に左足を動かす。

自分の右足を後ろから左足で蹴り上げ強引に

危険極まりないバック宙のような動きを開始する。


鬼の身体能力で強引かつ高速で行われたその動き。

鉄真は両足が宙に浮いた状態から右足を跳ね上げる。

俺の拳が回避しきれなかった鉄真の側頭部に当たった直後、

勢いがついた鉄真の右足が俺の顎を捉えた。


「がっ……」


「ぁ……」


その場に打撃音が連続して響く。

そして鉄真は宙に浮いた状態で殴られたため

軽く吹き飛び地面を転がり。

俺は視界が暗転してその場に倒れた。


炎牙と鉄真は二人同時に仲良く脱落した。


次回は今週中には更新します……多分。

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