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元独裁者が異世界で生きる話  作者: みみみみやっち
1章 新たな世界での日常

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21話 バトロワしようぜ

「なにしてるの?」


アヘナが家から出てきて言った。


「見たらわかるだろ。修行だよ修行……おい、服が」


俺は思わずそう言った。

アヘナの髪は寝癖だらけで更に着てるTシャツのサイズが大きいせいで右肩が出ている。

完全な寝起きスタイルだった。

本人は寝ぼけているのか気にせず目をこすっているが。


「服……?」


「とりあえず顔洗いに行ってこい。鉄真が目のやり場に困ってる」


鉄真が反対向いて視界に入れないようにしてるよ。

真面目だなこいつ。


「ちょ……!アヘナちゃん!」


「なにしてんの!?」


炎華と影葉が慌ててやってくる。

二人も似たような服を着ているがアヘナと違ってちゃんと着ている。

二人は焦ってアヘナを引っ張って連れて行こうとしているが

アヘナのTシャツのサイズがデカいせいで服を引っ張ると見えそうになっている。


「そもそもアヘナの服が大きいのはなんでだよ。寝る前は普通だったろ」


実際、昨日最後に見たときはアヘナはサイズがあったTシャツを着ていたはずだ。

俺がそう言うと影葉が答えた。


「昨日寝る前にもっとゆるい服で寝たいって言って作り変えてたんだよね」


「作り変えてた?」


「アヘナちゃんの服は魔力で作られてますから」


「魔力?……ああ、なるほどな」


思い返してみると分身にアヘナを移した時、姿がアヘナに変わるけど服は最初から着てたな。

魔力で作っていた事実を初めて知ったがよく考えたら納得だ。

アヘナのやつ毎日同じ服着てるし。


「あいつ毎日、無地の白Tシャツ着てるけど服に興味ないのかな?」


「単純に魔力で作るのにシンプルで作りやすいからじゃないですか?まあ、興味ないのもあってる気がしますけど」


炎華と影葉は二人がかりでアヘナを持ち上げ運んでいった。

鬼は種族の特性で身体能力が高いからか軽々と運んでいった。


「ていうか鬼の特性の身体能力って分かりにくいな。魔力纏えば人間でも同じくらいできるし」


「鬼はその高い身体能力に加え魔力による強化があるから身体能力は圧倒的……って言いたいけど

結局は魔力出力だな。でもモノは低い魔力出力である程度動けるし素の身体能力が鬼と同じくらいある気がするんだよな……」


「ふーん。鉄真お前まだ顔赤いけど大丈夫か?」


鉄真はさっきのアヘナによるダメージがまだ残ってるようだった。

ていうかアヘナはなんで起きてすぐにこっち来たんだよ。


「アヘナのが思ったよりデカかったからちょっとびっくりして……」


「確かにTシャツのサイズがデカかったな」


「違う、胸だよ」


「え……急に年相応なこと言いだすじゃん」


確かにアヘナの胸は大きいが別に凄い大きいというわけではなく大きいか小さいかでいうと大きいくらいの感じだ。

さっきのは下着もなくTシャツ一枚だったので衝撃が強かったのだろう。

ちなみに胸の大きさは炎華>アヘナ>震音>影葉だと思われる。


「モノは平気そうだな」


「そりゃ興奮しないわけじゃないけど、あいつらで興奮するのなんか嫌なんだよな……」


「変な意地があるんだな。いや、わかるけどさ」


俺は刀を鞘に納めた。

鞘に納める時に少し指を切ったがそれは再生でごまかす。


「それで、三十分くらい練習したけど慣れそうか?」


「ずっと木刀使ってたから、なんとなくはできるけど……」


「できるけど?」


「木刀握ってまだ一ヶ月くらいだから、そもそもで下手」


「まだそんなもんか。まあ、才能はあるから頑張れ」


鉄真はそういうが、才能があると言われても師匠とかを見てると自信がなくなってくる。

そもそも才能がある、天才と言われるやつは0を1にできたり1教えられただけで100できるやつらのことだ。

俺は10を何度も教えられて10できる、それだけだった。

少なくとも息子のジディは0を1にできた。

俺が出会った人の中でジディは最も天才という言葉が相応しかった。

あの底しれない才能がどうなるのか見てみたい気持ちもあった。

俺が未練なく死ねたのは殺したのがジディだったからというのもあるだろう。

父親としてもジディの才能に魅せられた人間としても、これ以上ジディの邪魔をする前に殺されてよかったと思う俺がいる。


「モノ?どうした?」


俺が急に黙ったので鉄真が心配してくれた。

師匠二人も心配そうな視線を向けてくる。


「いや……ちょっと息子のことを思い出してた」


「息子?なんで急に?」


「鉄真が俺に才能があるって言っただろ?息子は……ジディは天才だったんだ。俺が人生で出会ってきた人の中で一番の」


「師匠より上?」


鉄真の質問は答えにくかった。

俺はそう思っていたが俺の中で答えは決まっていたのだろう。

口は勝手にその言葉を発していた。


「ああ。ジディのほうが上だ」


これは親目線の贔屓があるのかもしれない。

それでも俺が見てきたジディなら、その才能なら師匠にも劣ることはないだろう。

ジディが戦う姿なんか見たことがない。

なのにそう言い切れるほどの凄さがジディにはあった。


「凄い驚いてるな」


俺が迷わず言い切ったことに鉄真は驚いてるようだった。

実際俺も内心では迷っていたはずなのに断言できた。


「師匠の凄さは散々見てきたからな。でも冷静に考えると何らかの才能、その一点に絞るならおかしな話じゃないのか……」


「そうじゃな。わしらより凄い才能を持った人なんていくらでもおる」


「そうですねぇ。ですがモノがそこまで言い切る息子には一度あってみたいものですよ」


師匠たちは驚いてないようだ。

でもそうだ、才能だけでは人を測れない。


「それは無理っすよ。別の世界なんで。それに会えたとしても俺は嫌われてますし」


「残念ですねぇ。流石のわたしでも別世界に行く魔法は使えませんからねぇ」


「ほらモノ!さっさと修行再開しようぜ!影葉やアヘナに勝つんだろ?」


急に鉄真が手を叩きながら言った。

前の世界の話で俺が暗くなり始めたのを察しての行動だろう。

俺がいつまでもウジウジしているとみんなに心配をかけてしまう。

俺は頬を両手で叩き意識を切り替えた。


「そうだな」


「おっと!誰に勝つって?」


「ふっ……ようやくお目覚めか」


「それだけ聞くとモノのほうが上みたいになるからやめてよ」


アヘナが身支度を整え戻ってきた。

Tシャツのサイズはちょっと緩いが問題がない範囲に変わっている。

髪も寝癖が消えきちんとした黒髪ロングのストレートになっている。

いつも通りアホ毛があるが。


「え?お前まさか自分のほうが上だと思ってんの?」


「対等だから。なに上下関係作ろうとしてんの」


「まともな返ししてきやがって」


俺とアヘナが言い合ってると影葉と炎華もやってきた。


「朝から夫婦漫才してるの?」


影葉が定番っぽいツッコミをしてきた。

俺が返す前にアヘナが喋りだす。


「夫婦じゃないよ。まだ同棲カップルくらいの関係」


「お前それ俺の体の中に住んでるだけだろ。同棲のレベルが違うんだわ。ていうかカップルじゃねえし」


同棲は同棲でも住んでるのは家とかの建物じゃなくて俺の肉体なんだよ。

アヘナがカップルじゃなかったの?みたいな疑問顔してるけど違うからな。

そもそもアヘナが俺のことを恋愛的に好きかは微妙なとこだろ。


「じゃあモノはアヘナと炎華どっちが大事?」


「アヘナ」


「即答なんだ」


鉄真から即答に対するツッコミが入ったがアヘナは体の中にいるから、愛着みたいなのがあるんだ。

別に恋愛的に好きなわけではないがアヘナは頼りにはなる。

多少腹立つ事もあるけど嫌いではない。

炎華のほうは出会いの瞬間に殴り飛ばされたからな。

嫌いじゃないがアヘナのほうが上だ。


「あれ?これ私がダメージ受けてませんか?私は対等じゃないんですか?」


「友達としては対等。でも同棲ボーナスがあるからアヘナの勝ち」


「そうですか。でもモノさんに好かれたところで嬉しくないですけどね」


「なら聞いてくるなよ」


炎華が議論を壊した。

ていうか俺に好かれても嬉しくないってちゃんと失礼だなこいつ。

でも俺はこういう会話も普通に楽しんでいた。

というかこの世界の出来事は基本全て楽しい。

修行も嫌だと言ってるが楽しんでいる。

仲いい人とわちゃわちゃやるのが楽しいと言うことは前の世界にいたままでは一生理解できなかっただろう。


「そういえばモノさんは昨日ボコボコにしてやるとか言ってましたけど、今からやるんですか?」


「やる」


俺は即答した。

ここでやらないと舐められたままな上に、さっきまで修行してた意味がなくなる。


「一晩空いたのにまだやる気なんですね……」


炎華が呆れた顔をしてるが武器を手に入れたからテンション上がってんだよ。

流石にこいつら相手に真剣でやる気はないけど自分の力を試したい。

え?師匠相手に真剣を使ってた?師匠相手に力を試せばいい?

実力がかけ離れた相手に遠慮はいらない。それに強い相手にずっと負け続けたら萎えるじゃん。


「よし、まだ寝てるやつを叩き起こそう。あいつら全然起きてこねえ」


「モノが起きるの早かっただけで、みんなが遅いわけじゃないから」


「もういい時間じゃから起こしてきたらどうじゃ?」


「師匠がそう言うなら起こしてきますね」


炎華が起こしに行った。

あいつ師匠の言葉は割とすんなり聞くよな。

まあ、仕方ない。俺もそうするもん。

今まで積み重ねた関係とかもあるだろうしな。



それから少しして全員起きてきた。

なんか全員が凄く面倒そうにしている。


「モノがボコボコにするのは影葉とかアヘナだろ?なんで俺らまで起こされたんだよ」


「炎牙くん。いい質問だ」


「ふざけるのはいいから」


ちょっと調子に乗ったら怒られた。

俺は咳払いをして気を取り直して。


「せっかくなら全員でバトロワ的なことをやりたいなって」


「バトロワ?最終的に誰が残るかってこと?」


「そうそう。この森で誰が最後まで勝ち残るかって戦い」


俺がそう提案したがあまり盛り上がらない。

俺があれ?となっていると炎華が心配そうに口を開いた。


「バトロワだと索敵範囲の狭いモノさんが不利じゃないですか?それに狙うべき相手を狙えないような気が……?」


「それについては問題ない」


「なにか対策があるんですか?」


「俺は一対一だと勝てない。だから戦わなくても上位に行けるバトロワで勝負だ」


「は?」


みんなが何いってんだこいつ、みたいな目で見てくる。

言いたいことはよく分かる。

あんだけ言ったくせに結局ビビってるだけと言いたいんだろ?

もちろん俺は戦いになったら全力で勝ちに行く。

だが勝てる確率は低い。つまり保険をかけてるのだ。


「ていうかこんなの師匠のどっちかが勝つに決まって……」


「師匠二人は審判」


「えっチキ……るよね、当たり前に」


これはみんなから賛同を得られるんだな。

師匠二人は縁側に座って俺達の会話を聞いているが特に文句はないようだ。


「じゃあ武器は木製なら何でもOK。魔法も能力もOK。撃破数は関係無しでやられずに残ったやつの勝ち」


「刀使わないんだ」


「素人が使うと危ない」


「そっか」


アヘナは俺が真剣を使わないことに疑問を覚えたようだが、あれを使うと相手も危ないし俺も危ない。

そして俺は軽く準備運動しながら妖玄師匠にお願いする。

妖玄師匠ならこの森に転移でみんなを上手く配置させれてやられた人を転移でここに戻すことができるのだ。

頼り切ることになるが一番簡単な方法なので仕方ない。

今回はアヘナを戻してないので純粋な俺の実力だ。

そこが不安だがそのためのバトロワ形式だ。


「それじゃあ行きますよ」


妖玄師匠の言葉と同時に景色が変わった。

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