20話 新しい武器
鬼玄師匠と家まで帰ると鉄真が刀を持って家の外にいた。
「なにその刀」
俺は鉄真に聞いてみた。
家に帰ったら武器持った人がいるって怖い。
「モノの武器」
そう言うと同時に鉄真が刀を俺に向かって放り投げた。
俺はキャッチしようとした。
キャッチしようとしたのだが刀は俺の体に当たり普通に地面に落ちた。
刀に鞘と言うものがあって良かったと思った瞬間だった。
「取れよ……」
「違う……急だったから……」
鉄真の言葉が突き刺さる。
横を向いたら師匠がこっち見てるし。
そんな目で見ないでよ。
言い訳すると刀が初めてだったからビビったんだよ……急に刀が来たらビビるでしょ。
「ていうか鉄真が刀を普通に渡せばいいじゃん。なんで投げるの?」
「いや……ごめん。ちょっとカッコつけちゃったな。普通に取れるもんだと思って」
カッコつけるなよ……鉄真がカッコよさを重視したせいで、すごくダサい人が出てきたじゃんか。
「じゃあ気を取り直して説明いいか?」
「よし……うん、オッケー。頼む」
「と言っても説明することはほぼないけどな。手入れの仕方と魂のことくらいだな」
「魂……?急にファンタジーじゃん」
「基準が分からないけど今までも大概ファンタジーじゃないか?」
それはそうだな。
確かに魔法とか思いっきりファンタジーだ。
ていうか魂?なんで武器の話で魂?武器に魂が宿ったりするの?
「じゃあまず手入れの仕方から……」
「なんでだよ!確かに手入れは大事だよ!でも魂のほうが気になるよ!」
食い気味にツッコんでしまった。
仕方ない、手入れの重要性も分かるけど魂が気になるんだ。
まあ魂のほうもなんとなく予測はできるんだけど。
「じゃあ魂のほうから話すか」
「そうしてくれ」
鉄真の説明によると物を大切に扱うと魂が宿ることがあるらしい。
らしいというのは詳しい事はよく分かっていないからと言われた。
魂が宿ると脳内に物が話しかけてきたり、稀にだが物が能力を得るなどの事例が記録されているそうだ。
あと魂が宿った物は普通に意思を持つので気に入らない持ち主に対しては能力を使わせなかったりすると言われた。
「武器が能力って凄いな」
「だから高値で取引されてるんだ。まあ気に入られなかったら無駄なんだけどな」
そりゃ高値で取引されるよな。
万が一にも武器の能力が使えたらお手軽に強くなれる訳だから。
「じゃあこの刀に名前を付けてあげようかな」
「モノ、それはあまりよくないんじゃ」
師匠が唐突に言ってきた。
鉄真を見ると頷いてる。
「なんで?」
「最初に名前を付けとくと武器に魂が宿った時に武器が稀にその名前を嫌がることがあるんじゃ」
「そうそう。イタい名前つけたせいで武器に魂が宿ったのに能力もなにも使えなかった例が存在するんだ」
「じゃあいつ付けるんだよ。ずっと名無しってこと?」
「武器と話し合って決めるのがいい。この武器に魂が宿るわけないって確信してるなら名前をつけてもいいけど」
それを聞いて名付けできるかよ。
もし俺がこの刀にイキった名前つけたら能力使わせてもらえない可能性があるの?
最悪じゃん。
「じゃあ名前はこの子に魂が宿ったら考えるよ……」
「それでいいと思う」
それから俺は鉄真に手入れのことなども教えてもらった。
少しして妖玄師匠も来て四人でしばらく雑談してた。
「全然あいつら起きてこないな」
「昨日遅かったからだろ」
そんな会話をしてた時ふと俺は思い出した。
昨日、影葉やアヘナをボコると決めたことを。
ていうか全員巻き込む気だった。
「あの、鬼玄師匠と妖玄師匠の索敵とかどうなってるんですか?」
師匠二人の戦い方を真似れば影葉やアヘナたち相手にも勝てる可能性は出てくるかもしれない。
「あんま参考にならないと思うよ」
鉄真がそんな事を言ってくるが知らん。
聞いて損はない。
「そうですねぇ……私の索敵の場合は精度より範囲よりの索敵だねぇ」
「範囲?それはどんくらいなんですか?」
「最低で半径500mはありますよ。頑張ればもっと広げれるますね」
最低で500m?俺は全力で10mくらいなんだけど。
しかも精度も悪いからなにかあるってことしか分からないよ。
「ちなみに鉄真は……?」
「俺は全力で50mで基本30m。仮にできたとして常に妖玄師匠みたいな範囲で使ってたら俺の脳は情報で死ぬ」
そんだよね、脳を魔力で強化して情報処理能力を上げたとしてその範囲内の情報を処理するのは無理だよね。
脳に纏う分も索敵の分もそもそもの魔力出力が足りないんだよ。
あと多分、素の脳みそがもっと強くないと無理かも。
「鬼玄師匠は……?」
「わしは婆さんとは逆で範囲より精度じゃな。範囲は50mほどで全力戦闘の時は10mほどに狭めて精度を上げとる」
「ちなみにどれほどの精度で……?」
「未来が見えるくらいじゃ」
「相手の肉体や魔力を完璧に見切る索敵と予測を極めた神業ですよ」
妖玄師匠が説明してくれたけどよく分からない。
なるほど、無理だ。俺では師匠に勝つことは不可能だ。
今更ながらに完璧に理解した。
「そんなの他にできる人いるの?」
「鬼玄師匠のはいないと思う。妖玄師匠のは精度を気にせず範囲を広げることだけに集中したらいるかもな」
鉄真が解説してくれたけど、つまりは鬼玄師匠の索敵精度は世界トップクラスってことか?
確かに未来まで見れて上の方じゃなかったらおかしいけどさ。
「あー……でも魔王とかならできるのかもな」
「そうじゃのう……わしも魔王とは出会うことがないから分からんのう」
「魔王……?なに魔王って。この世界にそんなのが?」
唐突に恐ろしい単語が出てきたので俺は聞き返す。
やっぱ異世界って魔王とかいる感じなんだ。
「モノは知らないんだな。魔王ってのは魔力ある生物の王。魔力を扱う生物の中で国家が定めた強さを上回り国家に認知されたやつが魔王って呼ばれてるんだ」
「といっても認知されてない強者も存在するからねぇ。認知されてない強者は魔王級って呼ばれたりするんですよ」
「なら師匠たちは魔王級?」
「魔王と認められる強さの基準がはっきりしてるわけじゃないから難しいな。俺の予想では今の魔王たちより強いんじゃないかと思ってる」
俺は改めて師匠の凄さを再確認した。
魔王とは関わりたくないな。
この世界の魔王の定義が違うとしても魔王って悪いイメージあるからさ。
俺はそんなことを考えてて気づいた。
「そっか。その基準だと魔王って複数人いるのか」
鉄真が魔王たちと言ったことで気付く。
一定以上の強さのやつが魔王なら複数人がその強さの基準を超えててもおかしくない。
というか、それなら悪い魔王がいてもおかしくないんじゃないだろうか。
「そうそう。えっと、今何人だっけな……」
「5人じゃなかったかのう……」
「5人も?」
「そうじゃな。その5人が個としての戦闘力がもっとも高い生物じゃ。まあ、個としてのじゃから勝つ方法は色々あるんじゃが……」
「国も魔王が怖いし倒すための戦力もあるけど、戦いになると、どれほどの被害になるか分からないから何もしてないんだっけ?」
「魔王は今のところは大人しくしとるからのう……」
確かに数の暴力には勝てないか。
それに戦いって純粋な戦闘力だけじゃないもんね。
そんな事を考えてると唐突に鬼玄師匠が立ち上がり俺と鉄真を引っ張っていく。
「「なにこれ」」
俺と鉄真は同時に聞く。
いや予想はできるよ。どうせ修行でしょ?
でも一応ね。
「2人も魔王になれるように修行じゃな」
「鉄真、どうやら俺には予知の才能があるらしい」
「奇遇だなモノ。俺にもあるみたいだ」
ちなみに俺と鉄真は必死に鬼玄師匠の手を外そうとしてる。
全然外れないのだが。
まじでどんな力してんだ。
「ていうか鉄真!お前は昨日、朝から修行するの嫌がってなかっただろ!」
「昨日は深く考えてなかったんだよ!深夜テンションだったから!ていうか朝からハードな運動してられるかよ!」
俺と鉄真は庭まで連れてこられた。
ここまで来ると逃げる気も起きない。
どうせ逃げれないんだから最初から抵抗するなって?
人間最後まで足掻くもんさ。
「ていうか鉄真の武器って槍なんだな」
鉄真は木の槍を持ってた。
ちなみに俺はさっき貰った刀である。
師匠がせっかくだからそれを使えと言ってきたのだ。
「一番得意なのは槍だな。色々使えるけど」
「色々?」
「鍛冶師として色んな武器の使う側の気持ちを知っとかないといけないからな」
鉄真が修行してるとこ全然見たことないけど、当たり前に俺より強いな。
魔力の扱いとかも俺より上手いだろうし勝ち目ないな。
「じゃあ二人でかかってくるんじゃ」
「よし、行くぞ鉄真」
「了解、モノ」
俺と鉄真は同時に動く。
俺は刀で斬りかかり鉄真は槍で刺しに行く。
俺はここで違和感に気づいた。
というか今まで気づかなかった俺は馬鹿なのだろう。
俺の隙だらけな大振りの一撃が師匠に迫る。
普通に隙を狙われカウンターを貰った。
「モノ!」
ちなみに鉄真の槍は普通に避けられてる。
あ、俺のせいで動きが鈍った鉄真がやられた。
「モノ、なにしてんの……?」
「この刀……いつもと感覚違う……」
「そりゃそうじゃろ」
いつも木刀を使ってたのに今は真剣である。
色々と感覚が違う。
なんで俺は何も考えず普通に攻め込んだのだろう。
「1時間で馴染ませる。よっしゃ行くぞ!ぼーっとすんな鉄真!師匠をぶっ飛ばすぞ!」
「おう……そうだな」
そうして俺は影葉やアヘナをボコるため、必死に刀に慣れようとするのだった。




