最も厄介なアンデッド
ンンン
――――その頃、ニールヒッグ王国
「ふむ、今が好機か」
「かと思われます。聖王国が動く様子を見せておりますので、我々がある程度譲歩すれば協力してくれるかと」
「ありだな。…ヴェルロイド王国が滅んだ今、それを理由に人間の反撃とすれば民も疑わぬだろう。そしてある程度の領土を貰えれば我等は満足」
「その通りです、王よ」
「外に集めている兵はその為か。私が断ったらどうするつもりだったのだ」
「断らないと踏んでおりました」
「ククッ…そうかそうか。まぁ良いぞ、兵を出せ!」
「ハッ!」
「―――それは困るなぁ」
「「!?」」
扉の近くに座っていた男の体を椅子諸共消し飛ばし、綺麗な椅子を作り出してからそこに座る。
「いや、まぁルカ・フロード帝国に手を出すのは良いんだけどそうなると彼が困っちゃう。それは私にとって都合が悪くてね」
「何者だ貴様!」
「へ、兵よ!こいつをさっさと捕らえろ!」
「「ハッ!」」
「フフッ…命は一瞬、君等人間は直ぐに朽ち果てるんだよ。その命は大事にした方が良いんじゃないかな」
槍先に触れ、それを一瞬で消滅させる。それからゆっくりと立ち上がって王の方へとゆっくり歩み寄った。
「私はゼノ。今の人々は知らないのかな?」
緋色の王冠を取り出し、王に見せつけてから再び仕舞う。すると顔が一気に蒼白くなったのでニッコリ微笑んで席の方へと戻った。
「私は何も君等を殺したいわけじゃない。時期尚早と言いたいんだよ」
「ど、どういうことだ。何故…」
「物事にはタイミングがある。君達が今動けば盤面は大きく変わる。そうなると私も動き方を変えなきゃいけない。…君達のせいで私が変えなきゃいけなくなるんだよ」
「…わ、分かった、辞めよう」
「王!?な、何故この女の言う事を!?」
「馬鹿者!こ、この御方は…古来より恐れられる『臨廻』ゼノ様だぞ!」
「良いよ良いよ、0年、いや…紀元前666666年以降私たちの活動はかなり減った。知る人が少ないのも仕方ない。この部屋で私を知るのは君だけだし」
そう言いながら王に助言をしていた男の背後に移動し、怨念を流し込んで肉体を強化。そして一度殺して即座にスケルトンとして復活させた。
「君は今からシードの元に行って伝言を伝えるんだ。ニールヒッグ王国はまだ動かない、とね」
「ぎょ……い…」
そいつを転移で第二魔界に送り、私は壁を軽く破壊して外の空気を部屋の中に流し込んだ。
「さてさて、どうでも良いんだけど君は誰なのかな?」
「私は――――」
「あぁ君じゃない。ってか知ってるし」
そう言いながら骨の手を作り出し、隠れている魔人の首を掴んで壁に押し付けた。そして魔力を少しだけ解放し、何とも言えない表情を浮かべてる彼女と、その隣に居る奴を見た。
彼女の隣に居る奴はきっと他の人には見えてないのだろう。先ほどの声にも誰も気付いてないみたいだし。流石としか言えないね。まぁ無視でいっか。
「痛いんだけど…」
「暗殺者としても優れてるけど他の部類も得意なんだね。君は一体何者かな?あぁいや、知ってるけどさ。だって君は遥か昔から生きる魔人だもんね」
首を絞める力を弱めると、彼女は息を整えてからこちらを睨んだ。
「………」
「厄災を起こしたことが無いからその名が有名じゃないだけ。…今になって君が動くのはどういうつもり?」
「気になっただけ。あとちょっと痛い」
「まぁ見てただけだもんね、メンゴメンゴ」
力を弱めると、彼女は軽く溜息をついてからこちらを見つめてくる。今ので苦しくもないってのは流石だね。
「えっと…何か用かな」
「私はこれから魔王の所に行く」
「ん~っと…どっちの?」
「魔王シード」
「あぁそっち!何しに行くの?」
「私は彼の下に付く」
「どして」
「強者の下に付くのは必然」
「まぁそうだね!それじゃ頑張れ!…でも彼、君より弱いよ」
「それは現在の話。貴方も知ってる筈。彼はまだ強くなれる事を」
「まぁね。…行ってらっしゃい」
「うん」
―――彼女が姿を消してから、私は王やその家族、臣下を洗脳してニールヒッグ王国を乗っ取った。それから数分後、シードとルナテクスがやってくる。
「お前は…」
「気を付けてシード、彼女が…ゼノよ。…イメチェンした?」
「フフッ…」
一歩前に近付き、こちらを警戒する彼の頬にそっと触れた。彼は驚きながら後退り、私を睨んでくる。
「お、お前…何者だ!」
「ゼノだよ」
「いや、あり得ない…。お前は…」
「シード、どうしたの?彼女の前での焦りは禁物」
「違う、違うんだ…」
彼の様子が変なのを見ながらクスッと微笑み、骨の槍を生み出してルナテクスに牽制攻撃。その間にシードの目の前に移動。
「最近戦った死霊魔法使いは強かったよ、本当にね」
「………」
「シード!って…どうしたの?」
「死霊魔法は…殺した人の姿を完全に模倣できる。…緋色の髪に瞳、黒い瞳孔の女性で右頬に傷がある人。そしてその顔と魔力は…多分一人しか居ない…」
「誰…?」
「…死霊魔法に於いて俺の師匠だった人、アリエナだ。俺に色んな事を教えてくれた人で、デミちゃんとかレイちゃんにも言ったことがない。…最近ワールスとかの三人に話しただけ」
「知らないわね…。でも相当凄い人だったんでしょ」
「当たり前だよ。…だからこそ…俺は…」
「アハッ…!シードが怒るのは分かるけど君が怒るのは理解できないかなぁ、ルナテクス!」
「…馬鹿な弟子が心から尊敬してた師匠なのよ」
「で?」
「その姿を真似て、こんなことをするのはおかしいでしょ!貴女は…そんな人じゃ無かったのに!!」
他の人間を全て他の場所に移動させ、外に居る兵士を操作して解散させる。それから首都に居る人間全てを支配し、私達を感知しないようにさせた。
それから一気に後退して飛んでくる獄炎の球体を、右手に纏わせた黒いオーラで消し飛ばして彼女を見つめ、シードを見つめる。
「………」
「ゼノ…」
「…また何時か会おう」
それだけ言い、指を鳴らして黒い髪と瞳、緋色の瞳孔に戻した。
「頬の傷も治せよ…」
「フフッ…ヤダ」
「ッ…」
その表情を見つめ、それから私は二人を転移で送り返す。そして玉座の間に入って王を殺し、私がその座に座った。
「この老いぼれの姿になるのは嫌だし…このままで良いや。…さてシード、存分に藻掻くんだ。今君が必要なのを何か思い出さないと」




