残月
――――それから約一か月後
「あの…」
「師匠、知り合い?」
「ううん、知らない」
「…何方?」
「私はアウローラと申します」
そろそろ朝日が昇るという時間に図書館に訪問してきたその人は、何というか見覚えがある。気のせいかな。
「冒険者時代に助けて頂いた恩を返しに来ました」
「あっ、ダンジョンで死にかけてた人か」
「知り合いなので。なら…ソーン、応接室案内してあげて」
「―――承知しました」
「ごめんね師匠」
「構わないわ。行ってきなさい」
「おう」
と言う事で応接室に移動し、二人っきりに。彼女の事はそれなりに知ってる。冒険者時代に結構助けたことがあるしな。飲んだ事もあるっちゃある。
「えっと…どうしたの?」
「好きです結婚してください」
「はい唐突。お兄さんびっくりだよ」
「安心してください、心はあれですけど身は綺麗です」
「そういう問題じゃないんよ。そもそも身を穢される人って奴隷が多いし」
冒険者は危険って言われるけど、そう言っておいた方が安全だから言ってるだけで実際はそう言う事を無理やりされちゃう人少ない。怖いお兄さんが守ってくれるからね、そういう輩から。
怖い人、厳つい人ほど案外優しい。危ない人って結構ギルドに所属する特別な兵士が見張っててすぐ対処されるから。だから案外少ない。
「私はシード様の為に強くなったんです。あっ、元々魔人ですよ」
「…地味に凄い奴?ギルドのあの装置、真偽を見極める瞳って言われる程に凄い奴だぞ」
「隠蔽が得意なので!」
「そうなの?まぁ…結婚じゃなくて配下なら喜んで迎えるけど」
「では忠誠を誓わせていただきます」
「いや突然真面目だなおい。…ってかお前絶対強いと思うんだが、どうしてあの時死にかけてたんだ?」
「フッフッフ…良くぞ聞いてくれました!何時聞いてくれるかずっと待ってたんですから!」
「えぇ…?」
「実はですね、自分で言うのもあれですが好奇心旺盛でトラップに敢えて引っかかる系の人間でして」
「おう」
「毒ガストラップを10回連続で引いたら流石にHPが馬鹿みたいにある私でも死にかけたんです」
「よし、クビ」
「ちょっと待ってくださいよぉ!」
「フフッ…冗談さ。でもお前は信頼できる、それだけは分かってるぞ」
「え?」
「俺は自分と少しでも関わった人間を徹底的に調べるんだ。変な輩なら殺すし、変じゃないなら何もしない。上位冒険者の特権でそれくらいはできる」
「お~」
「お前は身分を隠しまくってて全然真相に辿り着けなかったが、少なくともお前は得た金の大半を孤児院に寄付してた」
「その通りです。…あっ、私はシード様の前では決して嘘はつかないと誓いますね。命の恩人ですし、何より貴方は私の王に相応しい」
「どういうことだ?」
「冒険者である以上裏切りとは必然です。御存じの通り彼等は他者より己。強敵と出会えば仲間を捨ててでも逃げる」
「ふむ」
「ですが貴方は違いました。明らかに困難な相手でもその脳と力を生かして仲間が逃げる時間を稼ぎ、その後は自分も撤退」
「可能性が結構あったからな。ないときは真っ先に逃げるぞ」
「勿論知っております。仮にも私はS級、シード様の事も調べました」
「ほぉ?」
「確かにシード様は数名の冒険者を置き去りにして帰った事があります。しかしその者は全員が数日前に酔った勢いで胸を揉んだり、冒険者を殴ったりしているならず者。故に殺すのは正しい行為と言えましょう」
「……そこまでは乗ってない筈だが」
「フフッ…私は調べる事が得意なので。でもこれからは全て配下に任せる事になると思いますけどね」
「だろうな。…部下をどう扱うかはお前に一任しよう。とは言え九月まで増えないけどな」
「問題ありません!私は一人でも十二分に活躍できます」
「なら結構。所でお前…その髪色は何ていうんだ?」
「暁色です!」
「へぇ…綺麗だな」
暁色の長髪と瞳孔、黒い瞳が彼女。暁色と黒の二色で構成された衣装を黒のロングコートの下に纏ってて、恐らくそれらが戦闘装束なのだろう。
「戦闘装束はその一式か?」
「そうです!一応ロングコートの下にこれじゃなくてシャツを着る事もありますけど、基本はこれです」
「なるほどな。…軍服をうちの国は採用しようと思うんだが、一般兵は赤の予定なんだよ。あと幹部とか」
「良いと思いますよ!でもあれですね、一定以上の役職者は色を変えたりした方が宜しいかと」
「俺もそう思ってる。色は追々考えるけどな。見た目は同じだけど色だけ違うと分かりやすそうだろ?」
「ありですね!」
「だろだろ!そだ、お前は何処に住む?」
「城です!」
「まぁ空き部屋あるし自由に使ってくれ」
「はい!」
「それから図書館は多分入れない」
「え?」
「今回は師匠が許可したからだろうけど、普通は入れない」
「え~?本好きなのに…」
「そうだよな、そういう人の為に別途で図書館を作る予定だ。ほら、敷地結構余ってるだろ?」
「余ってますね…。予定地の看板が経ててありましたけど、それでもまだ結構余ってました」
「だろ?ってわけで近くに図書館とか作る予定だ」
この城の敷地は本当に狂ってるからな。最近はちょっとした城壁がアップグレードされて強固な城壁になったし。あと謎に飛び込み台もある。リームング用だと思うけどね。
「お~!」
「使えるのは一定以上の人だけで」
「一般兵は?」
「兵士の訓練場は主に北側に作る予定だ。ほら、橋が四本あったろ。んでそっちの方に作ろうかなって」
最初は一本だったが師匠が増やした。んで城の正門は東側にあるから、東側は恐らく一番栄える場所になるだろう。北側はさっきも言った通り兵士の訓練場とかにする予定。
大事なのは海に落ちないようにあの水堀の周りに柵を作る事だな。城は城壁があるけど、街の方からは普通に落ちる。一応山に囲まれてるから川とか作ってあの水堀に繋げるけど、川と水堀の接触場所には柵を作って子供とかが流れないようにしないとな。
「住民も使えそうですね!」
東側の橋から北側の橋がある場所まで水堀の外側を歩いた結果1.5時間掛かる。何も無いから疲れるけど、街が出来れば馬車も通るし、休憩場所も出来るからまぁ大丈夫だろ。序でに橋の長さはたったの300mでっせ。
水堀の外周は合計で24㎞近くあって、この城が存在してる敷地は大体だよ、大体7.4㎞×7.4㎞って感じ。水堀の直径が凡そ8㎞で橋が0.3㎞だからまぁ計算上間違ってない。
「詳しい説明とかは色々するけど、取り敢えず休んでくれ。部屋は今適当に案内しよう」
「有難う御座います!」




