武闘派メイド長ソーン
―――30分後
「…此処とかどうかしら」
「い、良いと思う…」
図書館は入口からまっすぐ進めばこの司書カウンターともいえる巨大な机があるのだが、流石に遠すぎるって事で入口から少しだけ離れた場所の脇に移動。
元々本棚まではそれなりに間があり、そこに机や椅子が並んでる。手前側の本棚の本を読めるような場所だろうな。んで真ん中ら辺にもあって、奥側にもある。
「―――ルナテクス様」
「あっ、丁度良い所に。この子は僕が育てた孤児でね、名前はソーン。立派なメイド長さ。他のメイドと違って彼女は部分的にメイド服が赤いからすぐわかると思うよ」
赤い瞳でこちらを見つめるその人は、誰がどう見ても即座に強いと判断できる。魔力が凄く落ち着いているが、それは表面で実際は殺そうって意思が溢れ出てる気がするんだよね。
「一般的な白い部分が赤く染まってるでしょ?赤と黒なの。スカートが長いのは彼女の好み。僕は正直どっちでも良いと思ってるけどね~」
「師匠はファッション興味無さそうだよな」
「無いわけじゃないんだよ?ただ僕に何が似合うか僕自身分からなくてね」
彼女が悩みながらそう言ってる間、俺はメイドの方に目を向けた。すると彼女はこちらを見つめ、小さく頷いた。
どうやら敵対心はあるが、嫌ってるとかではないらしい。恐らく初対面で俺がどういう人物かを分かっていないのだろう。
「着せ替え人形になれば良いんだよ」
「面倒」
「まぁまぁ、そうすりゃ良いのが見つかるって」
「別にそこまでする必要はないんだけど…」
「良いじゃん!師匠可愛いんだし!」
「そんなに必死になる事ある…?まぁ良いわ、暇が出来たらね」
「おう!」
「………」
ルナテクスはやれやれ、と言った感じだがメイドは少しだけ微笑みながらこちらを見ていた。すると彼女は一歩前に出て鍵を渡してくる。
「これがあれば基本的にどの部屋も開けられます。…この後はお暇ですか?」
「え?う~ん…」
「問題無いよ。午後の訓練は先に断っておきなさい」
「うぃ」
パルに連絡すると、どうやら向こう側でも何かあったらしく一週間ほど無理っぽい。まぁ仕方ないよね、こればっかりは。パル達にも色々あるだろうし。
「城内を軽くご案内します。初見で迷子にならず移動するのは不可能だと思いますので」
「ありがと、助かる」
「お気になさらず」
図書館から出ていくと、彼女は通路を直ぐに歩き始めた。何処に行くのかと思って付いて行くと、いつの間にかエントランスに。
暖炉があったり、お洒落な机やソファー、そしてちょっとした本棚があり、外の光が丁度差し込んできている。城の窓はアーチ窓だったり、教会で使われるステンドグラスを使ってたりして綺麗。
「この城は三万年前、私が此処で過ごし始めた日から変わっていません」
「そうなの?」
「はい。外見は変わりましたが中身は何も変わっていません。食器や本が増えていくだけです。それとは対称的に住まう人も減り行く一方ですけどね」
「…今はもう五人なんだっけ?」
「はい。私、ルナテクス様、そして貴方の御師匠であるパルパータ様もその一人です」
「パル!?マジか…」
「残り二名は追々紹介いたしましょう。一名はまだ20代の少女でして、主に前衛が得意かと。一応私と同じメイドですが、それなりに好戦的ですのでご注意を」
「変わってんなそいつ…」
「最後の一人は貴方の事でしょう。既に認めていると言いたかったんだと思います。存在してないので」
「流石は師匠、俺が提案に乗る事は思い通しだったわけだ」
「そう言う事でしょう。さて、一階は主に多くの人が使える場所が多く存在しています。例えば食堂や宴会やパーティーに使うホール、そして大浴場」
「あるの!?」
「勿論あります。男女別々で使えますよ。ただルナテクス様曰く、そっちは従業員で、今度からは旅館という場所のを使うそうです」
「あ~ごめん、それ俺等の済んでる場所にある奴だ。使っても良いんだが…俺も入るぞ?男女別々ではあるんだがうち女子しか居ないし、一人で入るのもあれだから」
「まぁ問題ありません。変に欲情すれば蹴ります」
「怖いわ」
「そう言えば大事な事を一つお伝えし忘れていました。貴方の御仲間ですが図書館へ入る事は出来ません。入れるのは極一部の人間のみです」
「マジ?」
「はい。ルナテクス様が許可された場合のみ入れると思いますが、基本は無理です。入れるのはあの御方が認めた者のみ」
「あの図書館、やっぱ意味が分かんねぇ…」
―――その頃、屋敷
「此処って空気が澄んでるね~」
「わかる」
「余所見」
「「あだっ」」
「あ、あの…」
「おっ、聖女ちゃん!」
「どうしたんですか?」
「シードなら出掛けてる。今は動かない方が良い、迷子になる」
「わ、分かりました」
―――数時間後
「―――我、帰還」
「なるほど、此処が屋敷。周りの景色が無くて殺風景ですが…まぁそこは何かしら作る予定なんですよね」
「そゆこと」
「場所は把握しましたが温泉はどうやって?」
「此処の通路を進めば多分辿り着ける。中庭を通っていくことも可能だ」
「理解しました。では私はこれで。何かあれば念話で呼んでいただいて構いません」
「わかった、ありがとう」
彼女は一瞬にして姿を消し、何故かルナテクスが扉を開けて草原エリアに入って来た。
「……暇?」
「え?あぁ、まぁ」
「ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「うぃうぃ」
彼女の方へ行って玉座の間へ出ると、ルナテクスは形容しがたい表情をしながら部屋を歩いている。
「ど、どうしたんだよ」
「私の部屋って何処かしら…」
「………三階だろ。この階にある筈だ」
「それは分かるよ?ただどの部屋なのかが…」
「知らんがな…。そもそもソーンに頼んだ方が早いだろ」
「確かに。ソ~ン!!」
「―――お嬢様、どうしましたか」
「ちょいちょい、お嬢様は辞めてって」
「良いじゃないですか別に何だって」
「ねぇどうしよう、この子反抗期に入ったんだけど」
「初めての?」
「うん」
「フッ…ドンマイ」
「…煽ってる?」
「まさか」
「ま、まぁ良いや。僕の部屋って何処だっけ」
「案内します。貴方もどうぞ」
「俺も?」
「えぇ。覚えておいて損は無いでしょう」
「図書館か自室にしか僕は居ないからね!偶にどっちにも居ないけど、そういう時はソーンとシードに言うから安心して!」
「言わなかったら追い出します」
「それが良い」
「僕の扱いが若干酷いよね?泣くよ?」
そんな会話をしながら歩いていると突然ソーンが立ち止まった。どうやら到着したらしいな。
「此処です」
「ここかぁ。分かりにくいね、扉をもうちょい豪華にしよう」
「承知しました」
「ってわけで此処が僕の部屋ね!」
「覚えとく!」
「ほんじゃバイなら~。あっ、夕飯僕の分も用意しといて!」
「…前はどうしてたの?」
「え?ソーンに作ってもらって一緒に食べてた」
「そっちの方が良いだろ」
「ではこう言うのはどうでしょう。二人分だけ作るのもあれなので朝は貴方も専用の食堂、昼は自由、夜は私やお嬢を含めて屋敷で」
「まぁそれならありかも」
「決定だね!さぁ行こう!」
「おう」
「…ありがとうございます、シード様」
「別にシードで良いし、お礼を言われるようなことはしてないさ」




