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魔王の生き様~遠い未来で君と共に~  作者: 赤天アリス
四章 新たなる時代の幕開け
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聖女、それは一人の子供

――――おやつ時


「………あの…」


「何だ」


「これって本当ですか?」


「事実しか載せない筈だ。著者は魔族だが、魔族のした悪い事も良い事も全て書いてるだろ。だからすべて正しい筈。…そもそもこの著者に嘘を付くメリットがない」


「じゃ、じゃあ魔人が住まう村をヴェルロイド王国の騎士団が強襲し、殺戮やそう言うのをしたのも…」


「事実だろうな」


「聖騎士の話も…」


「真実だろうよ」


「……その…ごめんなさい…」


「――嬢ちゃんが謝る必要は無いんじゃねぇか?」


「俺もそう思うぜ~」


「同感ね。あっ、シード様、この本を借ります」


「うぃ」


「えっと…」


「確かに人間は何度も村を襲撃してくる。何もしてないのにだ。だがそれはこれから俺等がする事と変わらない。俺達だって世界征服の為には村を襲い、少なくとも兵士は皆殺しにするだろうよ」


「今まで襲撃された事は許せない事だけど、貴方がしたわけじゃない。それに貴方がしたとしても恨むつもりはないわ。必然だもの」


「だそうだ。到底許されざる行為だが、どうせ俺達もする。ヴェルロイド王国だって現に俺達の手で滅ぼされた」


「でも奴隷は助けたと聞きました…」


「そうだな、気紛れで助けた。…結局人間と魔人は分かり合えない。その理由は互いに侵攻し合うからだ」


「ではもし、もしの話ですが…不可侵の条約を結べれば仲良くなれますか?」


「どうなんだろうな」


「互いに差別しないって条件も出来るなら私は良いわよ」


「無理だろうけどな。でも俺もそれならありだ」


「だそうだ、出来るのか?…でもスケルトンとか納得するかなぁ」


「もしかしてスケルトンとか会話をしてるんですか?」


「あの骨の音で会話してるらしいぞ。一種の念話だな。…冒険者ってのはゴブリンやらを殺して金を稼ぐそうだが、野生のだってお前等と同じで会話をし、日々を生きる生命体だ」


「………」


「ダンジョンで生成されるのは意識が無いから別に殺そうと何だろうと関係ない。だが覚えておけ、その辺で生きてる奴等だって生命体なんだ。殺せばレベルが上がる、だから殺していい。なんて思ってる冒険者が多いが、それを魔族風に言えば、人間のガキを殺せばレベルが上がる、だから殺していいって事」


そう言って三人に本を渡すと、彼等はその通りだと言わんばかりに頷き、聖女に同情の目を向ける。


「…冒険者ってのは数が多いらしいからな。あれはお前の権力でも無くせないと思うぞ。冒険者はそれを生業としてるんだろ?…別にその行為を否定する気はないけどさ、無理だと思うぜ」


「そう…ですよね…」


「まぁ野生の魔物は敵だけどな」


「でも見分けられません」


「そりゃ簡単だぜ嬢ちゃん。俺達だって魔物の討伐はしょっちゅうしてる。ゴブリンの肉だってあるぞ」


「えぇ…?」


「意外と美味いオークの肉とかもあるわよね」


「「あるある」」


「ど、どうやって見分けるんですか…?」


「野生の生物は確かに人間の様に会話して生活してるけど、あんまり知性が無い。何ていうんだろ、おはよう、とか初歩的な会話しか出来ない。故に少し動きを観察すれば分かる。人みたいに過ごしてるか、ただボケっと過ごしてるかのどっちかだ。その辺で寝てたら大抵野生だな」


「なるほど!」


「だが冒険者はそれが出来ない。観察しろ、と言ってもゴブリンを見つければ即座に殺すだろうよ。それにお前達の事だ、不可侵を結ぶ時、互いの領域内での行動を許可し、俺達の領土の薬草やら魔獣を狩り尽くす」


「そんな事は!」


「…嬢ちゃんを信じてないわけじゃないが、無いってのは言えないだろ?」


「流石にね」


「無理よね~」


「…魔獣は俺達だって食べるんだ。お前達が食べるように俺達も食べる。薬草も必要だ」


「それは分かってます!だから…」


「不可侵って分かってるから侵略は出来ない。だが許可しないにせよ、一部の連中は互いに互いの領域へ行き、争いを起こす。結果それは戦争の原因となるんだ」


「………」


「人にも悪人は存在する。魔族もそれは同じだ。その悪人は己を悪と認識せず他者を悪と思うからこそその行為が普通に出来る」


「じゃあ…どうしたら…」


「この国にはな、元奴隷の人間が住んでる。だがそいつらとうちの連中は最初こそいがみ合ってたが今じゃ仲良しだ。お前だってそいつらに信用されてる」


「手伝ってくれたんすよ!」


「そうそう、廊下の掃除をメイドさん達とやってたんすけど、この子がね!」


「本当に助かったんです!メイドにも御礼を言われてましたよ!」


「フッ…良かったな。でも…全員が全員そんな感じで仲良くなれない。だから一つに統一する必要がある。一つになれば生き残ってるのは全員俺かフロルに忠誠を誓う者。そいつら同士が喧嘩するのはあり得ない」


「………」


「だがまぁお前が魔族を少々見直したのであれば……ふむ、俺も少しは人を見直すとしよう。人は変われるという事をしかとこの胸に刻んでおく」


「本当に!?」


「あぁ本当だ」


「ほら、シード様は優しいでしょ?」


「本当でした!」


「あ?」


「な、何でもありません!」


「失礼します!!」


「退散だ退散!」


「何なんだ一体…」


「あの…」


「何だ」


「…明日、私を聖王国に連れて行ってください。お父様と話しをします」


「死ぬぞ。正直言ってお前の父親は完全に染まってる。あんな風に言ってたが、悲しい事に兵をこっそり動かしてる」


「え!?」


「内通者が居るから分かるんだよ。変に戻れば拘束が強まるし、それこそ魔族を守る発言をすればお前は死ぬぞ」


「………」


「覚悟があるなら俺は別に構わんけどな」


「それは…」


「お前が国を作り替える自信、そして計画を考えたら俺に言え。内容次第では協力してやらんでもない」


「!?」


「だがそれは父親を、お前を育てた奴等を殺すことになる。それを考慮しておけよ」


「……私は全てを制御出来ないかもしれません」


「俺もだ。王は必ずしも完全じゃない。だから信頼出来る仲間を傍に置き、支えて貰うんだ。それでも制御出来ぬのならば、それはお前の力不足であると同時に、その輩がお前を認めていないという事」


「そう言う時、シード様はどうするんですか?」


「俺はそうなる前に手を打つ。…逆らうならば死を。覚えておけ、反感を覚える奴は早めに殺さねば背後から刺されるぞ」


「逆らうなら死を…」


「聖人であれ。だが悪人でもあれ。…多くの人はなれないが、そうあらねば頂点には辿り着けない」


「シード様も?」


「俺は理解してるつもりさ。自分の行いが正しいと思う反面、それが悪と認識されてることを知ってる。人はそれを理解できない。他者を悪と認識し、己を正義と認識して譲らない」


「確かに…」


「他者の道を認める、若しくは自分も悪人であると認める、そのどっちかが出来る人間は極僅かしか居ない。…だがどっちも出来た上で己の道を貫ける奴はもっと居ない」


「それが出来る存在が…」


「真なる強者だと思ってる。…他者を認めると、その道に行きやすくなって自分が決めた道から逸れていく。んで悪人だと認めると、自分の道を否定しがちになるんだ。ってお前にこんな話をするのはちと早かったか」


「…私は夢を否定され、夢を望む限りは悪人と言われ続けてきました。だからその…分かります、言ってることが」


「……そうか。ならその経験の上で行動しろ。だが復讐に駆られるなよ、それは本当のお前が望む道では無い」


「分かっています」


「なら良い」

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