最高に鬼畜で優しい
―――――そろそろ閉館時間となった頃、珍しくこの時間に人が入って来た。
まぁそろそろとは言ってもあと一時間ちょいはあるし別にそれ程驚く事ではないんだが、何処かで見たことがある。…あぁ思い出した、王国に奴隷として捕らえられてた奴だ。
「どうした」
「本を借りに来ました!」
「仕事は終わったのか?……丁度終わった時間か」
「その通りです!」
「…一時間後に閉まるからな」
「は~い」
刹那、扉が開くと同時に魔法陣と対面した。理解が追い付くまでに約3秒かかったのだが、驚くべきことに三秒後にはそれが起動して薄緑色の風で出来た竜が突っ込んできた!
「ッ…!?」
「???」
だがそれはカウンターの目の前で消滅し、ただの突風となって後ろの窓の隙間から外へと流れていく。かと思えばいつの間にかルナテクスがカウンターの前に立っていた。
「司書の仕事は本の整理や期限を過ぎてるのに返さない愚者をぶん殴って本を奪う事、そして図書館で騒いだり魔法を放つ人を成敗する事よ」
「………」
「全く、その位はちゃんと―――あだっ…な、何するのよ!」
「だって…魔法放ったから」
軽くだがチョップをすると、彼女は困惑しながらこっちを見てくる。だが俺の発言で少々納得しつつも、若干不服そうにしながらカウンターの中に入って来た。
「取り敢えず後は引き継ぐよ。明日は未明に図書館に来て。鍵を開けておくから。そしたらその後は別の場所に移動する。数万とある本の中から選んでもらうよ」
「そんなに?!」
「全部私が書いた奴だから。まぁ変なのもあるけど気に入ってくれると思う。偶に変な魔物を封印してたりするけど…一緒に付いて回るから」
「なら安心出来る!そんじゃまた明日~!」
「えぇ、また明日」
図書館から出ると、聖女は俺の後ろを普通に付いて来た。何故なのか、何故ついてくるのかを疑問に思いながら歩く事数分、城の外へと出て中庭に。
「…お前、自由に過ごして良いんだぞ」
「え?分かってますよ」
「なら何で付いてくる」
「一番安全な気がするので」
「……それで良いのかお前…」
「十分楽しいので大丈夫です!」
「変わってんなぁ…」
「えっ!?」
何か色々言ってくるが完全にスルーして歩き続け、気付けば屋敷に付いていた。のでそのまま中に入って少し休んでからボロスにマッサージをしてもらう事に。
「最近頑張ってるね」
「まぁな~。前回の戦争で己の無力さをつくづく実感したし。…お前もありがとな、二人の特訓相手」
「別に良いわよ。私ももっと強くならないと意味無いし」
「フフッ…そかそか」
相変わらずのマッサージの上手さに感服しつつ、弾む会話を堪能しながら夕飯までの時間を過ごした。
途中でアトラスとプレイオネが帰って来て騒がしくなったが、雰囲気がさらに上がるだけなので全く問題無い。…構って欲しいだけの二人だから、ただただ可愛い。
――――そんな感じで平和に過ごし、気付けば眠っていて…起きた時にはもう翌日。だが空はまだ暗い。
「…行くか……」
ササっと着替え、若干の小走りで城の中へと入って行く。兵は昼より少なく、メイドは一人もいない。なのでちょっと変な感じになりながらも図書館へ。
「…来たわね。早速移動するよ」
「うぃ」
転移が発動し、何時も通り魔の森へ移動。すると今日はそこから移動して例の廃城の中へ。重々しい鉄の扉が以外にもすんなり、しかも勝手に開いてくれた。
城の敷地で最初に迎えてくれたのは中庭。誰かが手入れしているのか、かなり綺麗な状態であり、その先にある噴水は今でも起動している。
「この城は嘗ての魔王、デミウルゴスやレイ、テンペストが使用していた。この城は勇者を迎え入れ、死を以って送り返した魔王城よ」
「あの伝説の…」
「入れるのは現在の城の所有者に認められた存在のみ」
「所有者…?やっぱ居るのか、まだ此処を使う人が」
「えぇ、勿論居るよ。…今はもう五人しか居ないけどね~」
「その内の一人が師匠と」
「そゆこと。まぁ僕は所有者だけどね!」
「へ?」
すると彼女は噴水の前で足を止め、こっちを向いた。かと思えば美しいと思える洗練された魔力が放たれ始める。
そしたら地面が大きく揺れ、城の表面の汚れ壁等々が崩れ落ち、黒く美しい壁が姿を見せ、更には新たな塔が出現し始める。遂には城の敷地周囲が眩く輝き、一瞬で広範囲が消滅。
後ろを見ると門の先から魔の森に向かって直線の幅広い橋が生成されていき、生み出された魔の森との間には天から大量の水が注がれていく。
「えぇ…?」
「破壊魔法の応用で地形を消し飛ばしたの。淵海に到達してる筈だから、飛び込めば行けるよ?」
「今水を注いでるのは此処に海でも作るつもり?」
「そうね。ほらあるでしょ、水堀。あれ作ろうと思って。魔の森は開拓して街でも作ればいいのよ」
「昔は街だったんだよね」
「そうね、当時は大国だったわ。魔の森を歩けば当時の家屋の残骸とかあるかもしれない」
「ってかルナテクス、お前結局何者なんだ…?」
「僕はテンペスト時代の四天王の一人、そして…テンペストの師匠だよ」
「!?」
水飛沫が時々こっちに飛んで来て互いの顔や服を濡らす。だがそれが気にならない程に俺は驚いていた。…だが当たり前だ、何せテンペストは魔法に関して歴代最高の魔王だもん。それに師匠って…。
「僕はとある変人以外に無敗でね。まぁそいつは単に相性が悪いから一旦置いておいて、基本全勝なんだよ」
「…信じれるんだよなぁ、何故か」
「フフッ、ありがとう。…この施設は全て僕の思うがまま。そこで君に一つ提案がある」
「提案?」
「僕は知っての通り面倒事が嫌い」
「だろうなぁ、よく知ってるよ」
「面倒事を色々やってくれるなら此処を拠点として使って良いよ?面倒事、と言っても図書館の掃除と整理を手伝ってくれればいい」
「マジ?」
「大マジ。序でに…こんな感じかな?」
空中に見覚えのある屋敷が作り出される。それは…うん、どう見ても俺が普段住んでいる屋敷。
「見て分かる通り敷地がかなり有り余っててね。好きな場所にこれを置いて良いよ。あんま私生活が見られたくないなら良い場所がある」
「おぉ!何処?」
「ダンジョンメーカーの能力を僕は持っててね。玉座の間に幾つかの転移門を作ってる。その中の一つに草原エリアに通じる場所があるんだけど、そこにどうかな?そうすれば入れるのは玉座の間に立ち入れるメンバーのみ」
「最高やん」
「まぁあれじゃなくて今使ってるのをそのまま移動させるのもあり」
「あ~確かに。…フロルに何て言おうかなぁ」
「新しく作るから宜しくで良いんじゃない?」
「それもそうか」




