強くなるために
―――翌朝
「二人共、朝だよぉ」
「…動きたくない」
「むりぃ…」
……似てるなこの二人。朝に超めっぽう弱いよね?まぁシードは良いよ、仕方ない。お前は許さんぞパル。規則正しい生活せんかい!
そう思いながらパルを足蹴にしてると、彼女が嫌そうに眼を開けてからシードをがっしり掴んだ。
「…朝だってさぁ……」
「ん~」
「…はい没収」
シードを持ち上げると、不服そうにしながら彼女は起き上がり、そのまま私の後を付いてきてリビングへ移動。そして流れるようにソファーに座ったので彼女にシードを渡した。
「朝ご飯作るけど…何が良い?」
「卵焼きとご飯と刺身」
「へいよ」
ササっと厨房へ行って料理を熟し、ご飯が炊けるまで三人でワイワイ雑談。途中でオメガもやって来たので四人で紅茶を嗜みながら色んな事を話した。
「―――おっ、そろそろかな?手伝って~」
「うぃ」
「良いだろう」
「頑張れ頑張れ~!」
「…パルは無しね」
「じょ、冗談だよ!」
「お前はこうなるなよシード。一番見習っちゃダメな人間だ」
「フフッ…分かった~」
「シードぉ…」
色々ありつつも朝食を皆で食べ、軽く雑談をしてから俺は図書館へ移動した。
「ルナテクス~!」
「来たわね。それじゃ基礎からやっていきましょう」
と言う事で鬼の様に基礎を詰め込まれつつ、ちょくちょく他愛もない話をしながら午前中を過ごした。超有意義な午前だったね。
昼を一緒に食堂で食べる事になったんだけど、仲良くなりたいなぁ、とか思ってると突然杖を渡してきた。かなり使ってるらしく、それなりに愛着があると思ってたからこそびっくり。
ほら、自分の愛武器ってあんま他の人に触らせたくないじゃん?大親友とか昔からの仲間ならまだしもさ。…俺だけ?違うよね??
「ど、どうしたんだよ突然」
「そろそろ武器を新しくするからそれ上げる。杖としての機能は多分世界で一番よ。一応仕込み杖になってて、直刀として使える」
「凄いなおい」
装飾はあんまり無い黒い杖。先端に赤色の宝石が付いててかなり綺麗。それに色んな能力があってかなり強そう。
「名前は『無冥』よ。今は扱えないかもしれないけど、必ずシードの助けになる」
「…ムメイ?」
「えぇ。まぁ扱えるように頑張る事ね。僕の愛武器だったんだから」
「…一人称が戻った……」
「仕方ないだろ、前は仮面付けてたし一応ばれないようにしてたんだ」
「人見知りめ」
「そうだよ、悪い?」
頬を膨らませながらナイフとフォークを巧みに扱って肉をパクパク食べるルナテクス。その姿は何というか小動物を見ている気分。
「悪くは無いさ。…ってかお前、食堂で食べるんだな。人見知りって言うくせに」
「君が居るからね。お陰で周りに人が寄ってこない」
「俺一人の時は来るぞ」
「な、何だと…。それじゃまるで僕が避けられてるみたいじゃないか」
「そう言う事だと思うんですが」
「泣くよ?いいの?」
「脅しが酷いな…」
そんな感じで適当に雑談をしながら昼食を食べ、その後は分かれてタルタロスへ向かった。すると館の前で二人が雑談している。
「―――パル!ジェネシス!」
「お~!」
「やほやほ~。ってその武器…杖?」
「うん、貰ったの!」
「メインはその刀と杖になるのかぁ」
「そうそう」
「彼女もそうだったよね~」
「そういやそうだったね!今もなのかなぁ。…あっ、今日はオメガ来れないらしいから。まぁ関係は無いけど」
「仕方ない!…最初はどっち?」
「まずは私が歴史を教えるね。んでおやつの時間になったら休憩挟んで、その後はジェネシスが薬学」
「お~!豪華ラインナップ」
「でしょ!ってわけで始めよう」
中へと入り、ソファーにジェネシスと並んで座る。するとパルはホワイトボードを持って来てから机の上に幾つかの本を置いた。
「歴史と言っても様々な部類があってね、一つ目は世間一般的な0年から今代にかけての正規の歴史。二つ目は古代史。紀元前666666年の1/1から紀元前1年の12/31日までの出来事」
「ふむふむ」
「さらにその前は主に厄災シリーズに名が乗る連中と、極淵シリーズって呼ばれる極みが付くほど好戦的且つ深淵から出てきたんじゃ?って思われるほどの化け物の集団が暴れてた時代。一応真・古代史とか色々呼び方はある」
「深淵から出てきたって…」
「ん~っと、深淵って覗かない方が良いって言われるでしょ?」
「うん!」
「そんな覗かない方が絶対良い場所から出てきた奴って絶対やばそうじゃん?」
「確かに」
「絶対やばいよ!って思って欲しいから、極淵シリーズって呼ばれてる。好戦的の極み且つ深淵から来たと思えるヤバい奴って事!」
「超納得!」
「ってわけで何処からが良い?結局全部やるんだけどさ。おすすめは近代史、古代史、真・古代史の順番。暗記量が後半になるにつれて増えるけど、結構楽しいから」
「じゃあその順番!」
「おけまる!」
と言う事で授業を受ける事三時間。想像以上に分かり易くて感動しつつ、字が丁寧過ぎる事に感銘を受けてぼーっとしたり、肩に寄り掛かって寝てくるジェネシスを眺めたりしたせいで若干しばかれた。
拳骨は痛かったね。あとあれ、頭をぐりぐりしてくるあれ。死ぬかと思った。
「―――よし、そろそろ休憩にしよう!あっ、復習はちゃんとやるんだよ?授業の最初に前回の復習はするけど、一応自分でも」
「うん!」
「フフッ、いい子だね!…ジェネシス、起きて」
「んぅ…終わったの~?」
「ぐっすりだったね!」
「いやぁ、流石に私近代史と古代史は全部知ってるからさ~」
「流石~」
「おやつ出してきて~。紅茶も」
「わたしゃ雑用係かっつーの」
とか言いながらも彼女は紅茶を淹れ、おやつと共に持ってきてくれた。意外に優しいんだなぁと思いつつ、近くに置いてある刀に目を向ける。
「…パルの大太刀に似てるね、それ」
「おっ、分かる~?何れ教えるけど、これ結構凄いの何だよ!」
「そうそう、そうなのよ。私の大太刀もだし、ジェネシスの刀、アルマの持つ杖と短刀、オメガの持つ槍、コラプスの持つ両刃の戦斧が凄い武器の代表」
「そんなに?」
「それぞれが何かしらに特化しててさ!それに加えて本人の能力がある程度強化されるようになってるからかなり強い!」
「確かに大太刀なんて魔法使い殺しの上に、万物全て切っちゃうしな…」
「そうそう!」
―――そんな雑談をしながらゆっくり過ごし、その後にジェネシスの薬学。
「まぁ薬学とは言っても回復ポーションに使われる薬草の種類やポーションを作る方法を主にやるよ~」
「お~!」
「時間があれば危険な毒草とかも説明するよん♪」
彼女はそう言いながら瓶に入った薬草を数種類机の上に置いた。
「まぁこれは結構その辺の草原にも生えてるポーションの元となる薬草。これだと低級のしか作れない」
「薬草の種類で違うの?」
「えっとね、大まかに言えば作成者の技術と薬草の種類が影響する。あとはポーション作り専門の人と錬金術師じゃ作り方が異なるからそこでも変わる」
「違うん!?」
「勿論!錬金術師は魔力を使用して色々する。専門家は水で一晩寝かせ、その水と薬草を鍋に入れて煎じ、その後は液体だけを別の鍋に入れて煮沸消毒すれば完成」
「薬草は捨てるの?」
「人によっては捨てるかな!本当は残しておいたほうが良いんだけどねぇ。寝かせたり煎じただけで成分全てを使えるわけじゃない。魔力を込めた魔力飽和水でやったなら捨てて良いんだけどさ」
「魔力で生み出した水って事?」
「ノー!魔力で生み出してもただの水なの。魔法で聖水を生み出したなら良いけど、ただの水を出したならダメ。勘違いする人が多いけど、生み出した物は別に魔力を100%含んでるわけじゃない」
「?」
「詠唱する人たちって込める魔力量を操作するのも大変なの。そりゃぁパルが水を作る時、魔力を限界まで込めた水球にしてって言えば適用量の水に魔力が100%込めれるよ?でもそれが出来るのは極一部の天才とかだから」
「なるほど!だからそういう人は水を生み出した後に魔力を込めるんだね!」
「そ!」
「…別の疑問になるけど、魔力を込めたら水の量が増えない?」
「思考の問題かなぁ。大きくしたいから魔力を込めるんじゃなくて、飽和水にしたいから魔力を込めるの。魔術師なら多分魔法陣の何処かの要素を脳内で組み替えるだけだと思う」
「魔術師は想像と魔法陣のどっちでも行けるから凄いよね」
「「分かる~」」




