魔王と聖女
―――それから約一週間が経過したある日の朝
「う~ん…」
屋敷で目覚めた俺はササっと準備をし、杖を持って図書館へと向かい始めた。すると丁度城の中に入った頃、兵が駆け寄り、とんでもない報告を。
「し、神聖王国に動きが!!」
「…すまん、ちょっと思ったから一応聞くが、近隣の神聖王国だよな?」
「は、はい」
「なら良いや…」
最近知ったんだが、神聖王国ってのは地味に幾つかあるらしい。それぞれ信仰してる神が異なるから複数あるとか。
近隣の神聖王国は勇者の排出が多く、異世界人にも結構頼ってる王国で、やっぱ信仰する神が輪廻転生を司る系だからなのかもしれん。
ってかアルマからの伝言で神聖王国よりもニールヒッグ王国を注意しろって言われてた気がしたんだが…気のせいか?
「いや、良くは無いか…。どんな動き?」
「聖女が兵を集めている様です!」
「そうか。…まぁ誰も集めなくて良い。ってかお前、勤務中か?全員休みにしてる筈だが」
「幾つかの部隊のみ、自主的に残っています!…流石にメイドだけだと危険ですので」
「ふぅん…。残ってるメンバーをこの紙に書いて俺に渡すように頼め。そしたら特別に給料払う」
「よ、宜しいのですか!?」
「当たり前だ。…お前の狙いのメイドはムキムキが好きらしいぞ」
「!?」
「お前は前から城の守備隊勤務だろ?何度か見かけた記憶がある。城の外だとヘルム被ってる奴の方が多いから分からんが、中だと被ってない奴の方が多いからさ」
「お、覚えて頂けたなんて…光栄です!!」
「ククッ…まぁ頑張れよ」
「はい!ありがとうございます!!」
「おう」
その後は特に何も無く図書館に付き、ルナテクスと雑談をしてからそろそろ始めようとなった鬨、思い出した。
「神聖王国が兵を!?」
「!?」
「あっ、悪い」
「ぼ、僕の心臓を消す気かい?…ってか神聖王国が兵を集めてるの?」
「そうらしい。兵を集めるのも流石に申し訳ないしどうにかしようと思ってな」
「君の親友に頼めばいいじゃないか。サクリスに事情を説明すればどうとでもなると思うよ?」
「あ~!やってみるか!」
「うんうん、それが良い。まぁ今は授業だけど」
「フフッ…分かってるとも!」
―――お昼ごろ
「ってわけでお願い!」
「別に良いよ。君の言う事なら彼女達も聞くだろうからね。ただし今度手伝って欲しい事がある。まぁ修行の一環と思ってやって欲しい」
「それなら任せて!」
「その修業は三人同行者が居るけど、まぁそれは後日。…うん、一応出れるようにしといたから、用が終わったら戻してね」
「うぃ!」
サクリスに色々話し、取り敢えず二人を連れてって良いと許可が下りた。なのでタルタロスの館へ移動し、二人にも事情を説明。
「合点承知の助!」
「おけまる水産よいちょまる!」
二人が例の黒い戦闘装束を纏い、ニヤッと微笑みながらそれぞれのメイン武器を腰に差した。
「二人共戦闘装束の形状が一緒なんだね!ブーツとか黒いロングコートとかシャツとか」
「まぁね~!一応ヒールもあるんだよ!」
「そうそう、まぁあんまり履かないけど!」
「色々あるんだね~」
と言うわけで神聖王国の領土の遥か上空へ移動し、どの辺に集まってるかを索敵。するとやはり首都に多くの魔力が集まっている。
「あっちだね!」
「うんうん!」
「殺戮タイム!」
――――その頃、大聖堂にて
「…魔族に完全なる死を与えよ」
「か、必ずや…」
「外に全ての兵を集結させている。…失態は許されん。ラプラス神聖王国の名に懸けて必ずや滅ぼすのだ」
「勿論で御座います、父上」
「父上ではない、私は教皇だ。………死ぬなよ」
「……はい」
「――――私さぁ、音楽とかそれなりに好きだけど聖なる歌が死ぬほど嫌いなんだよねぇ」
「分かるわぁ」
「そんなに酷いの?」
俺達は天井を突き破って内部に侵入し、パルと俺で神炎を至る所に放って燃やし始めた。
「おっ!この間の聖女さんじゃァないか!全く、君って子は…つくづく愚かだね~」
「今代の教皇は馬鹿らしい。…昔の教皇とかやばくなかった?人辞めてたよね完全に」
「昔のお偉いさんは化け物揃いで楽しかったなぁ。…に比べて今じゃ自分は玉座に座って偉そうにするだけ。ササッ、シード!」
「うん!…俺はお前達が滅ぼそうとする魔族の王だ。別に今なら何もせず手を引く。…あぁうん、まぁこれの修理代は自分で何とかしてくれ。手を引かないなら消すぞ」
「我等が引ける立場に無い事はお前達が一番知っている筈だ」
「お前達が老害の圧力に屈してて引けないって意味で良いか?」
「…そうだ。私もそれなりに歳だがまだ59。だが国を支える六芯は全員が300越えの化け物だ」
「………六王みたいな奴等?」
「そだよ」
「さっき殺した奴等?」
「そうそう」
「なら良かったな、残骸があるぞ」
国を守る結界内に入った瞬間、そいつらが襲って来たんだよねぇ。まっ、悲しい事にパルが聖魔法を全て切り裂き、ジェネシスが全員を完全に凍らせた。
それの証拠に、凍り付いた彼等の残骸をアイテムボックスから取り出してその場に並べていく。
すると兵が中に入ってくる音が聞こえたので、この場に通じる扉を封じて強固な結界を生み出した。
「…何が望みだ」
「手を引け、ただそれだけだ」
「嘘かもしれんぞ」
「次は無い」
「……神聖王国が付く国は全てにおいて魔を嫌うぞ」
「そうか。俺はそもそも大半の人間が嫌いだ」
「………」
「お前が聖女だな。…金輪際関わらないと誓え」
「私は…」
「………」
「………」
「分かった分かった。お前は優柔不断何だな。いざって時に判断出来ない役立たずと言うわけだ」
「ッ…!」
彼女はムカッと来たのかこちらに向かって聖なる槍を複数本、しかも無詠唱で放ってきた。だが結果は目に見えている。
それらは俺が放った魔弾によって相殺された。それから飛ばした短剣で肩を射抜き、杖を彼女の方へ向ける。
「攻撃したって事は宣戦布告で構わんな?」
「ッ……」
「…お父様」
「何だ…」
「…私は…一度魔物の国に行ってみたいと思います」
「は?」
「はぁ?」
「「大胆だァ」」
「私は正直言って魔族は本当にクソしか居ないと思っていました。…というか学校教材に魔族は理性を失った人の形をした化け物と書いてあります」
「ひっどいな…泣いたろか」
「なのでこの目で確かめたいんです。魔族の在り方等々を」
「いや、しかし…」
「聖女の留学とか無理なんだが?」
「貴方は黙ってください」
「???」
「ドンマイ」
「そんな日もある」
何故か怒られたことを不満に思いつつ、取り敢えず黙って待つこと数十分。そろそろ大聖堂の天井が落ちるんじゃないかってところで漸く話がまとまったらしい。
「行きます」
「断る」
「!?」
「何で行けると思ったんだよ、馬鹿かお前。魔族が聖女を嫌って無いと思うなよ?」
「どうにかしてください」
「立場で言えばお前が下だ。図に乗るな」
「………」
「面倒だからもう帰る。やってられねぇ…」
翼を広げてから飛び上がろうとした瞬間、彼女が腕を掴んだせいで彼女事宙に浮いてしまった。
「おまっ…離せ!」
「離したら怪我するじゃないですか!」
「知らねぇよ!」
「お父様、暫くあっちで暮らします!取り合ず兵士は抑えて!」
「せ、性格が変わったか…?」
「もう抑制される生活は嫌なんです!」




