閑話 脳裏に刻め、最高の宴会
―――紀元前666665年12/31日
「うぃ、今年一年お疲れさまぁ!」
「「お疲れ~!」」
グラスをカツンとぶつけ合い、中に入ってる酒を口の中へと注ぎ込む。それからわいわい騒ぐ皆をゆっくり観察。
…此処は淵海から行ける特殊な場所で、通称『淵獄』と呼ばれる場所。特別な桜の樹が常時結構な数生えており、その中で一本だけ巨大なのがある。
それの下で私達は今宴会をしているのだ!メンバーは厄災シリーズの面々と、極淵シリーズの中で交流可能な面々。極淵の奴等は大半が交流を拒んでる化け物だからねぇ、仕方ない。
とは言えそれでも結構な数いるのでこんな感じで時折集まって遊んでる。とは言え集まれるのはこれで最後かなぁ。もう暫くは会えない気がする。
「リームング、泣きそうだから感動の一曲」
「泣く気満々やないか~」
彼女はリームング。超絶歌が上手い人魚で、その歌は死を齎すこともあれば降伏を齎すこともある。ただし友人に振る舞う時は幸福以外齎さない。極淵シリーズの一体である。
「でも如何して泣きそうなの?」
「だって此処に居る大半は眠りにつくんでしょぉ?」
「そうだねぇ、私も寝る予定。別につまらないとかじゃないんだけどさ、遊びすぎて疲れちゃったから!」
「悲しいなぁ」
「終焉シリーズたる五人はずっと起きてる予定なんでしょ~?まだ良いじゃん!」
「まぁねぇ。でもリームングの歌はもう聞けないし、ババ抜きのラスヴェイン、七並べのローバンとも遊べないし…」
ラスヴェイン、ローバンは邪神であるが、主にこっちで活動している変人二名。ラスヴェインは生粋の女性だが、ローバンは女性っぽい男性。見た目はどう見ても女性だが、男である。
これは彼の親友であるラスヴェインが言ってるし間違いない。序でに男だけどローバンは男性が好きらしい。まぁ偶にいるよね。でも極淵と厄災シリーズの男性は興味が無いとか。
まぁその辺は私には分かりませんわ。取り敢えず最高の友達の一人!七並べで勝ったことはない!
「まぁ歌うね!」
「皆、リームングが歌うってさ!!」
「「お~!」」
彼女が歌い始め、全員が黙ってそれを聞いた。それは過去の楽しい記憶を思い出させながら、もう直ぐ別れの時だよと告げてくるそんな曲。
歌が終わると拍手喝采の中で彼女は泣き崩れ、人の姿だったコラプスが彼女の近くでその背中を摩った。
普段は泣かないジェネシスが泣きながら私に抱きついてきたので、倒れ込みながら彼女の背中を優しく撫でる。
「パル…」
「…大丈夫…また皆と会えるよ」
―――楽しくも悲しい宴会、それは珍しくゆっくりと進んでくれた。普段なら早く感じそうだけど、今だけは…ゆっくりと。
「…ローバン、あんたいい加減彼女作りなよ」
「居ないんだよ。ってか誰も誰かと付き合ってないじゃん。ラスヴェインだってそうでしょ?」
「そりゃそうだけども」
そう、そうなのである。やっぱり、ってわけでもないけど誰も恋愛に興味がない。ローバンだって好きなのは男だけど、恋したいとか思ってるわけじゃないんだよねぇ。
「パルは好きな人とか居ないの?」
「うぇ?…居ないかなぁ。友達としてなら皆好きだよ~」
「そりゃ私も」
「私も~」
「……ってか今更だけどさ、男女比率可笑しくない?」
「まぁ女性多いよね」
「でもあっちの方にそれなりに居るよ?女性も居るけど…まぁ取り敢えず男性陣もそれなりに。…全員気が狂った奴だけど」
「パルには言われたくなかっただろうね」
「それな」
「おい」
あっちの方で飲んでるのはマッドサイエンティストの代表格やリヴァイアサンの体内に突っ込んで研究してた変人、ベヒモスと相撲をする奴とか…意味が分からないオールスター。
最早恋愛より研究、恋愛より相撲と言った感じの人間ばかり。その中でカレーを食ってるのがオメガだね。多分一番気が狂ってる。
恋愛、というか友達とカレーを同等のレベルに並べてる変人。もう意味が分からないよね。多分66万年経っても理解してないと思う。
「ふと思ったんだけどさ、私達恋愛しない癖に美男美女多いよね」
「それな」
「めっちゃ分かる。まぁ美男子は揃って変なのが多すぎるから嫌だけど」
「…どうしてこんな狂った奴等にこの美しい体与えてしまったんだろう」
「まぁ天才美少女たる私は言いとしても、他は謎だよね」
「パルって変だよね」
「多分一番変」
「???」
納得がいかない事もあるなぁ、と思いながら樽を取って一気に飲み干した。
「ん~!美味い!!」
「―――パル、飲み合おう!」
「ハハッ、勿論!」
すると男女問わず酒豪が揃い始め、遂に宴会のメインイベントである酒飲み大会が開始!!
――――思いっきり飲み合い、思いっきり爆笑し合い、とにかく思いっきり過ごしていたら…いつの間にか0時近くになっていた。
「…っし、そろそろ締めだね」
そう言いながら立ち上がり、巨大な桜の樹をじっと見つめる。それから皆を見渡し、一息つく。
「男女問わず私達は幾度となく殺し合い、そして戦いの中で絆を深め合ったからこそこうして此処に集い、宴会とかを開いてる」
桜の花びらが掌に落ち、それを少し眺めてからギュッと手を握る。
「今日この日まで過ごせて本当に楽しかった。だけど此処に居る大勢は一度眠りにつく。…でも私は忘れない、君達という友が居たことをね」
「俺もだぜ!」
「私もよ!」
「忘れはしない」
「…楽しかった」
「最高だったな」
「次は何万年後か分からんが…また会おう!」
「当たり前だ!」
異なる種族、異なる専門家が集い、ただ仲良く宴会を開く。これは多分…私達だからこそ出来た。お互いの分野をリスペクト、とは言わないけどある程度認めていたからこそ出来た。
「…また何時か会える日を…楽しみにしてる」




