深淵でスローライフ
最早主人公
―――約一か月前、タルタロス
「鍵は開いてるんだねぇ」
「お前が言うからだ。…ただし結界の外には出れぬぞ」
「まぁその程度は別に良いけど。だってこの結界、一集落程度の大きさはあるじゃんか」
「あぁ。…好きに暮らせ」
「ほ~い」
さてさて始まりましたよ、タルタロスでの暮らしがね!そう言えばレイとかパラサイトとかも死界に来るらしいんだよね。
え?何で知ってるのかって?そりゃぁアルマが言ってたから。彼女の情報は9割正しいもん。何でもシードの道に異論を出しそうだし辞めようって。
正しい選択だとは思うけどね。嫌われない為には出ていくしかない。その道を勧めないなら対抗するか出ていくかの二通り。
「流石パル、これでより一層気楽に過ごせる!」
「よし、畑を耕そう!」
「???」
「ダンジョンメーカーの能力を存分に生かすとしよう!」
「ごめん、もしかして私も働く?」
「同居人」
「いや…」
「大親友」
「うぐっ…」
「私のお陰」
「分かったよぉ…」
「一つ聞きたいんだけど、食料とかどうなってるの?」
「前は冷蔵庫に直接転移で送られてた」
「ふぅむ…。サクリスに何か言う事ってできないの?」
「…分かんない!」
「結界壊すか」
「それすると絶対来るけど怒られそう」
「う~ん…」
暫く悩み続けていると、冷蔵庫から物音がした。何かと思って開けてみると、確かに食材とかが入ってる。しかも食器も。
「料理は自分で作って、食べ終わったら食器を戻すの。すると自動で送り返される。時間が決まってるから、その時間までに入れないとダメ」
「…それだ!よぉし、紙」
「ほい」
渡された紙にペンで色々と書き、食材と食器を取り出してからその紙だけを先に置いておいた。それから厨房へ移動。
…屋敷がかなり大きいせいで未だに迷うんだよねぇ。でも許す。何せこの旅館、和風だから。温泉、しかも露天風呂もあるし、畳の部屋が基本。ただ全部が和室ってわけじゃない。
館自体が和風と洋風の半々。まぁ玄関で靴を脱いでその後は基本裸足何だけど、なんて言うか和室と洋室がくっ付いてたりする部屋もある。
露天風呂はダンジョンの能力を使ってて、私の城にあった感じ。内風呂は普通に屋敷内にあって、内風呂にある転移門を使うと別空間にある露天風呂へ行ける。景色は自分で変えられるから最高ですわ。
んで厨房は色々とあってよく分からない。レシピも多すぎて理解不能。
「………」
「私が作ろうか?」
「一緒にでしょうが」
「おぉ~!」
「任せる気だったの?」
「一人で行っちゃうから」
「それはメンゴ。…今日はカレーでも作るか」
「いいね~!オメガが来そう」
「来るなら農業に必要な道具を持ってきてほしいもんだけどね。あと海を作って欲しい」
「海て…」
と言うわけでカレーライス君を作り、ご飯を盛り始めた時だった。突然オメガが厨房に出現し、勝手にご飯もカレーも私達の分まで盛りやがったのだ。
「「???」」
「まさかカレーを作ってるとは思わなかったぞ。あぁそうだ、手土産に鍬やら種やら色々と持ってきた。序でに池を作っておいた」
「池?」
「あぁ。ダンジョンにしても良いと思ったんだが流石にな」
「ダンジョンって…もしダンジョンにすればあれだよね?外見は小さい部屋でも中身は大きいとかが出来るって事でしょ?」
「それは空間系の魔法と併用すればだがな。そんな事を出来るのはお前ぐらいだろうよ」
「そう?まぁ良いや、食べよう!」
「「いただきます」」
と言うわけでいざ実食したのだが、私はやはり料理のセンスがあるようだ。めっちゃ美味い。あとはラオが居ればなぁ。でもまぁいないから仕方ない。
彼女には私が居ない間に城の管理を任せてるし。大丈夫、別に彼女一人に任せるわけじゃない。シードにもお願いするように手紙には書いておいた。
「そう言えばさっき何を書いてたの?」
「え?あぁ、幾つか苗を頼んだの。あと釣り竿とか?」
「スローライフする気満々だねぇ…」
「四人分頼んであるから」
「私とパルと偶に来そうなオメガ、後…」
「そりゃぁシードでしょ」
「そんなに来るかなぁ」
「彼の師匠たるレイやらデミウルゴスやらは彼と己の信念等々が合わないと判断してあの場所から姿を消すはず。となれば頼れる強者は私しかいない!」
「いや、旧屋敷にまだ残ってるらしいけど」
「…私なの!!」
「お、おう…」
「必至だな。…まぁお前の元には少なからず訪れるだろうよ。どう対応するかで回数が変わるだけだ」
「どう対応するかって…そりゃ………どう対応すれば良いの?」
「「………」」
「…まぁ追々考えれば良いや。そう言えばオメガ、冒険者やってるんだっけ」
「そうだな。冒険者もだが商業ギルドの方にも通ってるぞ。と言うか本業的に後者だがな」
「絶対所属する意味無いっしょ」
「はっきり言ってないな。それにもう私には関係ない。ルカ・フロード帝国で道具屋を営むのだから。あそこは商売をしてよい権利やら何もかもを現在はシードが色々としているらしいからな」
「彼も大変そうだねぇ…。でもそれなら変な商人は居なそうだね、彼は誠実とは言わないけど変な輩は嫌うだろうし」
「そうだな。真っ当な商人しか居なかった。奴隷売りもまともな奴で少々驚いたさ」
「それは驚くだろうね…」
「彼の国、そう言えば一度も廻った事無いなぁ…」
「何時か廻れるだろ」
「まぁね!…冒険者の方はどうするの?」
「あれは魔物を売るのに適していただけだ。今度から直接シードにでも売りつける」
「確かに買ってくれそうだけども」
「せこい」
「せこくない」
「……ってか…よくその美貌で襲われなかったね」
「Sランクとの決闘で瞬殺して以降変な輩は誰も来なかった。後輩には慕われていたがな」
「「………」」
「信じてないな?」
「誰が信じるの???」
「無茶言わんといて」
「お前等…」
オメガが魔力を解放した瞬間、窓からでっかい魔獣の姿が見えた。
「…魔獣持ってきた?」
「ダンジョンから出てきたんじゃないか?」
「コカトリスって水陸両用だっけ」
「「違う」」
「……あれはどういう事??」
「サクリス曰く、この館の下にタルタロスって言われるダンジョンがあるらしい。そこから偶に魔物が漏れ出すとか」
「湧く場所が稀にこっちになっちゃうって事か。道理でこの館に付与されてる結界量が凄い訳だ」
グラスを持ち上げてワインを飲み、それを置くと同時に奴の足元に魔法陣を生み出して槍を生成。それを放ってしっかり殺した。
「…ダンジョン制覇して私達のモノにするかぁ。そうすれば地下に楽園を形成できる。理想は巨大な研究所だね!」
「制覇した後は魔物とかもどんどん召喚して飼えるもんね!適当なフィールド作って城とか国を作るのもあり!」
「夢が膨らむねぇ~」
「……カレーの研究所か」
「「無いから」」
「…ちっ」
「た、確かダンジョン攻略してコアを自分の魔力で上書きすれば手に入るんだよね?」
「その認識で間違いない。というかパルパータに教わった事が無いのか?」
「教えても覚え無さそうだが良いかなぁって。…上書き後は宝箱も全て消滅し、ダンジョンがリセットされるんだよね?」
「あぁ。そしてダンジョン自体も一層になり、コアが置かれる部屋のみとなるはずだ」
「そこからダンジョンポイントを稼いでいく必要があるって事だね。あれが無いと領域広げられないし」
「うむ」
「私にはわからないけど、そのダンジョンポイントはどうやって手に入るの?」
「自動で溜まる。あとダンジョンに入ってくる侵入者を倒せば」
「要するに…」
「…自動で溜まるのを待つしかない。序でにダンジョンメーカーのスキルはコアが無くても発動できるよん!」
「便利???」
「超便利。ただ部屋の空間拡張とか別空間の生成とかしか出来ない。それもダンジョンポイント使うんだけど、100万近く生きてると結構溜まってるからこの間の城はあんな風に色々出来た」
「納得!」
「理解できた。…さて、どうしようか」
「まぁカレー食べて温泉入りながら決めましょ」
「賛成!」




