長期休暇
――――二週間後
妙に揺れるせいで目が覚めると、俺は誰かの背中に抱きついて馬に乗っていた。だが馬に乗った記憶も、誰かに抱きついて寝た記憶もない。
あるのはパルパータを倒し、満月を見た記憶だけ。…それと俺がシード=プルニーマになったという事だな。
「…アルスか」
「!?」
「帰国中?」
「は、はい、その通りです。ワールス様とエトワール様は少し後方の荷台にてフロル様が介護中です」
「ふむ。…所で俺がいつ勝ったか分かるか?」
「11/4の深夜です。…一応11/5の0時だと思われますが」
「ハハッ…まぁその辺って分かってるなら良いや。あれからどのぐらい経過してる?」
「約二週間程になります。シード様はずっと眠っておられました」
「まぁ…相当疲れてたしな」
「伝言は三つ。一つ目はコラプス様から」
「彼奴ぅ?」
「今度遊びに来てね、だそうです」
「無理だろそれ」
「二つ目はオメガ様から」
「服関連だな」
「いえ、街で道具屋を営むから場所の確保を頼むとの事です。後日伺うと」
「あ~そっちか」
「三つ目はアルマ様から」
「アルマ…」
「神聖王国は動かないけど、ニールヒッグ王国は動くだろうから気を付けてと言ってました」
「ニールヒッグ?…確かにヴェルロイド王国領には近かったな」
そんな会話をしていると、馬を走らせてファームが近くまでやって来た。
「起きたんだね」
「ファーム!無事だったか」
「うん、シードのお陰で此処に居る全員が助かった。一同感謝している!」
「…俺は俺のすべきことをしただけさ。ってか…そう言えばラスハントは?」
「あっ」
「え?」
「……鎖に拘束されたままかも」
「…まぁ何時か戻ってくるだろ」
―――それから約二週間後
「…漸く帰国だな」
「はい!」
アルスを後ろに乗せ、俺とフロルが並んで先頭。その後ろにラスハントやファーム、ワールスにエトワールが。
そう言えば今回は新六王も来ていたらしい。過去の六王達が選んでくれた奴等で結構役に立ったとか何とか。
「開門!!!」
国を守っていた僅かな兵士達の声が轟き、城壁のアダマンタイトの柵門がゆっくりと上がる。それと同時に歓声が聞こえてきた。
「…本当に帰ってこれたんだね」
「あぁ。…お前が居なきゃ負けてたぞあれ」
「…フフッ、でしょうね!」
そんな会話をしながら門を潜ると、多くの住民が出迎えに!俺は驚きながらも手を振ったりしながらメインストリートを進んだ。
城の正門は北側にあるからこのまま進めば着くはず。まぁ南から入った場合でも南に門あるから問題は無い。ただ城の正面ではないけど。
そして気付けばもう城の前に付いており、メインストリートを兵士と住民が完全に埋めていた。
取り敢えずそこで止まり、俺とフロルは馬から降りる。そしてフロルが作ったちょっとした台の上に立って皆を見下ろす。
「…疲れてると思うからフロルから一言、俺からちょっとした話で終わる」
「暫く休暇を与えるからしっかり休んで頂戴!」
「「!!!!」」
休暇は凄く嬉しいだろうな。…本当はこの後に色々とありそうだから頼みたいが、まぁ…休息も大事だ。
「休んでる間に自主練程度はしろよ。次に招集する時は少なくとも来年だ。一か月は全員休暇がある。城の訓練場や食堂も開けておく予定だから適宜使え」
「「はい!!」」
「お前達の健闘に心からの感謝する。そして全員…母国の為に命を尽くした戦友に敬礼!」
全員が北側の方を向き、そして住民だろうが兵だろうが関係なく全員が一斉に敬礼。それから一分後、俺は声を発した。
「…それじゃ解散だ!そのまま家に帰ってもいいし、寮でゆっくり過ごしてもいい、とにかく好きにしろ!」
「「ありがとうございました!!」」
俺は彼等を一瞥し、取り敢えず屋敷へと帰宅。するとちゃんと皆が出迎えてくれた!
「「お帰り!!」」
―――数時間半ば強制的に宴会に参加させられ、流石に疲れて休んでいると…何故か皆が静かになった。
「シード」
「ど、どうしたのレイちゃん、それに皆も」
「私達、死界に戻ろうと思ってね!」
「???」
「シードの事が嫌いになったとかじゃないよ?ただ…やっぱあっちで良いかなと思って」
「……大丈夫、俺は止めない。だって…分かってたもん」
「私やテンペスト、デミにパラが死界に戻るだけだから。…他は一応皆生者だからね」
「また会えるよね?」
「勿論!それに死んで死界に行くわけじゃないから。ラストがサクリスに命令して特別な居住区を作ってくれたの」
「なら安心!…不定期になるけどちゃんと会いに行くね」
「フフッ、待ってるよ。…私達の事は忘れて、その道にしっかり専念して。分かった?」
「………」
「お願い。シードは考え過ぎる癖があるから、私達の事は忘れて。大丈夫なのか、とか意思を云々なんて事は考えなくて良いの。その道をシードの本当の仲間と共に進むべき。私達は仲間だけど、信念で言えば違うからね」
「…分かった。…今までありがとう、皆」
「…ん、さよなら」
「頑張るのだぞ」
「応援してる!」
四人はそう言いながらクスッと微笑み、そして姿を消した。その出来事は本当に唐突だったが、でも…泣くことは無かった。
俺が非情だからかもしれない。だけどそれが俺なんだ。
「…俺は俺が進むべき道を行く。己の信念をただ貫き通す。…ついて来てくれるか?」
「うん!僕はシー君のだもん!」
「当たり前。絶対ついてく」
「ククッ…ありがとな」
「それじゃ、こっからは私との勝負だね!」
「あぁ。…負けねぇぞ」
「フフッ、私も負けないよ!」




