結果は明白
―――夜
「…夜は襲ってこないのか。優しいもんだな」
欲望の化身共は日が沈むと同時に全て姿を消した。だから平和ではあるのだが、何というか…かなり大変な争いになりそうだな。
さっき医務室を見たり、負傷者が休んでる部屋を見てきたが…かなりの数だ。精神面は物凄く強いから問題は無いが、やっぱ相手がかなり強い。
俺目線ではそんな強いと思う程の敵は居ないけど、一般兵の目線で考えれば確かに複数人で一体を相手するような感じかもしれない。
騎士レベルになりゃ話は変わってくるけどな。でもまぁ将軍級でさえ負傷してる奴が居た。…当たり前か。雑魚以外にもシャナリアが戦ったような奴も居るしな。
あとは俺とかラスハントが戦った巨大な個体。彼奴は普通にやると結構面倒な相手かもしれない。
「シードシード、ちょっと来て」
「え?ちょっ、引っ張るな――って力強くね!?」
「シード様、報告が……あ、後の方が宜しいですね」
「…おう」
「あれって司書じゃないか?…ほら、図書館に居る…」
「何処に居たんだろうな…」
「さぁ…」
「ふんぬっ!」
「おぉ!?」
彼女が使ってる部屋に投げ飛ばされたかと思えば、魔法で半ば強制的に椅子に座らされた。それから俺の横に彼女は座り、本を広げる。
「彼女について教えて!」
「お、おう、取り敢えず落ち着け」
「…ゴメン。私自身殆ど接触したことが無いからさ、つい…」
「と、取り敢えず彼奴は超が付くほどの酒好きだ」
「ふむ」
「それから恐らく彼女の武器は黒い大太刀。…魔力の破壊に特化した武器さ」
「破壊魔法を付与してるってこと?」
「そんな感じだな。物を斬る事には特化してなくて、それこそ完全に魔法陣とか魔力だけで構成されたものを斬る事に特化してる。それに関しては一番優れてる武器だな。…しかも彼奴が強すぎるせいで、切れ味普通でも全部斬る」
「魔導士とは相性が悪い訳か」
「うん、完全にね。それでいて独自の流派を持ってるから剣士もキツイ。何度も見たけど、パターンが多すぎる」
「それは彼女が自分の流派以外も扱ってるからじゃない?凄腕の剣士は相手の流派の技も、見様見真似で使ってくるじゃん」
「…なるほど、そのパターンかも」
彼女は頷きながらペンを動かしてどんどん書き込んでいく。その速さはもう完全にプロ。
「普段は意外とだらけてる」
「そ、そうなの?」
「そうだぞ。…それと家事は出来る方らしい」
「変な情報が増えていく…」
「まぁこんな所だな」
「助かったよ」
「どういたしまして~」
「ささっ、報告を聞きに行ってきな!」
「おうよ!」
――――その頃、パルパータ城の玉座の間にて
「一々片すの面倒なんだよなぁ。…君みたいな実力すら分かって無い馬鹿が来ると本当に迷惑なんだよね」
「…此処まで強いなんて……」
「君じゃどう足掻いても私に勝てない。ラオと互角かどうかレベルだよ」
「夕飯どうする?」
「う~ん、あっ!アースドラゴンの肉を使おう!」
「おぉ!」
「それと…ノーブルレッドの王、始王様の肉も使おうかなぁ~?」
「ッ…」
玉座に座り、片膝をつくシャナリアを見つめる。その体は既にボロボロで、これ以上戦えばどうなるのかは一目瞭然。
「誰かに相談しなかったの?」
「…これは私のケジメ。貴女が侮辱した他のノーブルレッドの怒りを…」
「侮辱?…ハハッ、何か勘違いしてる様だから教えてあげる。私は彼等の欲望だけを抽出して個体にした。侮辱も何も、そもそもあれは君の同族の欲望であって彼等ではない」
「………」
「確かに欲望だけを抽出し、それを彼等の姿にしたっていう点では私が悪い。だけどそれは醜い欲望を持ったからそうなっただけ」
「それは…」
「欲望は誰しもが持つ。でも私が選んだのは醜い欲望と常に歩く存在。欲望をコントロールしてるんじゃなくて、欲望に飲まれながらも抗う存在さ」
「…そんな事は…ない!」
「まだ抗うの?」
「…私がやろうか?」
「ううん、ラオは休んでて。そのまま座ってれば良いよ」
「は~い」
「クラスが始王のノーブルレッドを見るのは三回目。…君はその中だと一番強い。でも挑む相手を間違えた」
玉座から立ち上がらず、ただ普通に彼女の方を見る。すると彼女は軽く跳び上がって襲い掛かって来た。
ので足を組んだまま片肘をついてニヤリと微笑む。
「さよなら」
魔法陣が床に広がり、そこから複数の槍が出現。彼女は目を見開くも、もう何をしようと意味がない。
そう思ったのだが、私の考えはどうやら少々甘かったようだ。
「…地面に流れた血を使って攻撃、悪くないね」
彼女が先程居たところにあったちょっとした血の池。そこから鞭の様にしなりながら血が伸びたかと思えば、その槍を全て破壊した。
そのままこっちに伸び、先端が尖ったかと思えば私の首の横に突き刺さり、そのまま首を断とうと横に動き始める!
「常時形状変化をするのはやはりどの魔法も変わらないね。でも…扱いが鳴れてなさすぎる」
指を動かしてそれに触れ、それを操る彼女の魔力よりも多くの魔力を流し込んで操り、逆に彼女の方に向かわせた。
「ッ…!」
「…魔術に手を出すのもありかなぁ」
「魔術…?」
「知ってるだろう?全ての魔法の知識の上に存在するのが魔術って事ぐらいは。魔法の知識を基に行う構築系の魔法」
「???」
「…ふむ、簡単に言えば魔法陣を作るのが魔術かな。魔術があるから魔法は存在する。この魔法陣は火球を生み出す。そう認識しているけど、どうしてこれが火球を作るのか我々には分からない」
「創成魔法が魔術だったって事?」
「ノー。君なら分かってくれるよね?シード」
「―――創成魔法は魔法を生み出すだけだ。いざ魔法を放つ時は魔法陣の事なんざ考えてない。こんな魔法を使いたいって脳で考えて魔法を放ってる。魔法は固定概念が存在しないんだ」
「シード…?!」
「魔法陣は文字と同じ。これだからこう、そんな感じのルールが存在している。…そのルールを魔法を扱う魔法使い、魔導士は知らない」
「無詠唱は思考を巡らせてるだけ。先の二者は魔法陣という固定概念と、詠唱という魔力の活性化を必要としている」
「いや、授業しないで!?血で拘束しながら授業されるの何か屈辱なんだけどッ!」
「悪い、今助ける」
シードはそう言って掌を鎖となった血に向け、凍結させた。シャナリアはそれを力で破壊し、シードの横に。
「…魔法陣って魔法が使えない人の為にあるってこと?」
「俺達視点から言えばそうだな。魔力、まぁMPが多いのに無詠唱で使えない凡俗の為にある。魔術は魔法使いを生み出したと言っても過言じゃない」
「流石シード!」
「フッフッフ…そうだろそうだろ!まぁ研究ってのは難しいからこそ、魔術師は少ないんだ。序でにエルフの詠唱は精霊への呼びかけで、別に無詠唱で魔法は使えるぞ。精霊魔法は威力が高いから使ってるだけだ」
「物知りだね…」
「魔術師の弟子だしな。…で、お前は何してんだ」
「それはその…」
「ノーブルレッドの王になった事だし、同族の為にも私に復讐してやろうって魂胆でしょ」
「………」
「…誰かに相談しろよ」
「どうせ止められるもん」
「そうだな。…まぁ良いや、帰るぞ」
「怒らないの?」
「しても無意味だろ。ただもう一人で勝手に行くな。命令だ」
「…優しいのね」
「ど~も。…うちの馬鹿が悪かった」
「気にしないで!私は君と殺し合い出来るっていう事実だけで充分さ」
「ハハッ…そりゃ良かった」




