城塞都市ディストピア
―――約一週間後、8/23日
「これで完成か」
「うむ。此処が王都、魔族の国の中央となるだろうな。まぁ他に国を作ったりしなければの話だが」
「作っても此処が中央さ」
そう言いながら扉を開けてバルコニーへと出る。そして城の敷地外に居る住民を眺め、そして城の天辺まで移動した。
そこに居たのは、俺と同じ服装で興味深そうに街を眺めるフロル。ただし人形では無く本物の。服装がワンピースとかじゃなくて俺と同じなのは、下から見るとパンツが見えないからだそうだ。
別に此奴のパンツなんざ誰も興味無いとは思うが、ギャーギャー煩いので一着貸した。というか…フロルが作った装束なんだけどね。
「名前は決めたか?この後に発表だろ」
「シードに任せる~」
「俺?」
「うん!」
「……ディストピア。聖人にとって悪人、魔族はゴミ。だから俺達の理想郷は奴等にとってゴミ。…そこで彼奴等が羨む凄い場所を作るんだ。そうすりゃこの名前もちょっとした皮肉になる」
「面白いわねそれ!でも突然そんな名前つけられて納得するかしら」
「俺が言ったことをそのまんま説明すりゃ納得するさ」
「それはそうね。しっかし…王都ディストピア?帝都?」
「複数の国を作るなら帝都なんじゃないか?」
「じゃあ帝都ね!…国の名前も何時かは考えないとね」
「本来なら今考えるべきだが…まぁそうだな」
「それじゃ…発表してくるね」
「おう」
彼女はそう言って前へと移動し、少し高度を下げてから咳払い。そして騒めいていた民衆を、笑顔と言う威圧で黙らせた。
「私達が住む場所には国名も、街の名前すら無く、更にはそんな私達魔族の住まう地は日に日に縮小していた。でも今はどうかしら。因縁深きヴェルロイド王国の街の壊滅、なんてちっぽけな出来事では無く領土を全て奪い返した」
するとくるっとこちらを向き、ニコッと微笑みながらこちらを指出してくる。
「それは私の功績では無く、私の座を狙う秘書、シードの功績。…と言っても彼は私の幼馴染みたいなもんでね、君等も知っての通り彼は馬鹿だけど誰よりも民や兵を思って行動してくれてる」
「シードさんお菓子くれる!」
「街の皆でやるゴミ拾いなんかも参加してくれたな!」
「偉い人だけど噴水の縁に座って寝て水に落っこちてる!」
………色々と聞こえてくるが、絶対変なのあったよな。誰だ俺が疲れ果てて噴水で寝てた話をした奴は。ってか誰が馬鹿だよおい。
「まぁそう言うのもあってか、面白い事に私の派閥とシードの派閥が民の間でも兵の間でも分かれてる。それは本来内紛に発展しかねないから阻止すべきだけど、彼の派閥の人ならそういうことはしない。そうよね」
「「勿論!!シード様はそれを望みません!」」
「んで、今回話したいのはそんな事じゃないのよ。今回はこうして大きな町が完成したわけだけど、その名前を発表するわ。その名もディストピア」
「「ディストピア!!!」」
「……あれ?」
「予想と違うな…」
「え、えっと…意味知ってる人。……わぁ、ほぼみんな知ってるぅ。えっ、それで良いの?何か無い?」
「「王の意見は絶対!!」」
「…フフッ、そっか!って事で此処はディストピア!国名は無いけど、帝都ディストピア!!」
――――その後は宴会となったが、フロルはやっぱ一時間しか実体化出来ず消えてしまったので、何か気分が萎えてしまった。
街に出ると大変だし、屋敷の皆もどんちゃん騒ぎしてるので適当に街の外を歩くことに。そしたら直ぐ人と出会った。
「あっ」
「誰だ…?いや待て、その魔力はパルパータの部下か」
「ラオと申します。近くまで送って頂いたのですが道に迷ってしまい…」
「それは良いんだが、何をしに?ってか城壁あるし分かるだろ」
「昔見たときは無かったので、てっきり別の国かと思い…」
「それは仕方ないかもしれん。で、何の用?」
「国造りの第一歩おめでとう、とパルパータ様が」
「へぇ…良さげなワインだな。そうだ、折角だから彼奴の所に案内してくれよ」
「かしこまりました」
転移が発動し、生活感が溢れまくりの玉座の間へと移動。横を向くと、ソファーで呆れたくなるほどにだらけてるパルパータと目が合った。
「………」
「……やぁ、勝負かな?」
「…飲むから付き合え」
「うん、勿論良いよ!ささっ、私の隣に!」
ラオは俺達の近くに立ち、本当は正面に座る予定だったが仕方なく彼女の隣に腰を下ろす。そして先程受け取ったワインを机の上に。
「しっかし私なんかと飲むのかい?自分で言うのもあれだけど友達居ないし性格悪いよ?」
「俺はお前の友達のつもりだが」
「君、人によく優しいって言われるでしょ」
「俺は聖人だからな」
「フフッ…君が聖人と言っても嫌気がささないや」
「だろ?それと俺も性格は良くない。作戦を練る時に一番考えるのは何をすれば敵が嫌がるかだ」
「気が合うね」
「それ」
ケラケラ笑いながら、ラオがグラスにワインを注いでくれたのでそれを一口。
「…中々に濃いな。何年ものだ?」
「10000年程度かなぁ。悪魔界のワインは3000年の特製ワインとか結構多くてね。まぁこれは天使が神に貢ぐ用のワインなんだけどさ」
「えっぐ…。だがまぁお前らしいと言えばお前らしい」
「でしょ~。…で、どう?城塞都市を作った感想は」
「素晴らしいの一言に尽きるかな」
「なるほどね!じゃあ本音は?」
「……兵士の訓練場とか色々と足りてないから満足しちゃダメだろうな」
「最初から正直に答えてくれればいいのに」
「やり取りは大事だろ?」
「まぁね」
「所でそいつはお前がスカウトしたのか?」
「うん!ラオって名前で元聖騎士の隊長」
「マジか。だから俺の国を見たことがあるわけだ」
「そゆこと~。ただ聖騎士って名乗るのはあれだから、今は暗黒騎士!」
「悪くないな。なら此奴の相手は俺の親衛隊の二人か」
「嫌でもそうなるだろうね!」
「んで俺とお前はそれを見終えてから戦うわけだな?まぁこっちは複数名になるだろうが」
「そゆこと!…私としては君との一騎打ちもしてみたいけどね」
「俺は馬鹿じゃない。死に急ぐ真似はあんまするつもりはないぞ。ただ…機会があれば何時かしても良いかもな。俺が強くなってからだが」
「君が勝った場合は私はゆっくりタルタロスの館で待機するさ!でも私が勝ったら毎日特訓するからね!」
「ハハッ…それも悪くは無いな」
「…ってか君、騒がしいの嫌いなの?」
「フロルの状況ぐらいはお前も知ってるだろ」
「あぁそう言う事ね。…復活させてあげようか?代価を一つ払ってもらう事になるけど」
「断る」
「へぇ、確実に助かるのに?彼女は封印があと少しと言ってるけど、実際後数十年は無理だよ」
「それでもだ。…本来あれほど完全な殻ともなれば数千年は破れない。それを彼女はいつの間にかかなりの罅を入れたんだ」
「…うん、やっぱ君は良いね。心の中では助けたい、どんな代価だろうと払える、そう思ってるけどそれを彼女が嫌がる事も分かってる」
「分かってて聞くなよ」
「フフッ、やり取りが大事なんでしょ?」
「うわっ、その返しはズルいぞ」
「……あ、あの…失礼ながらお二人は敵ですよね…?」
「え?あぁ、そうだな。そろそろ殺し合いになる。…一か月経たないうちにな」
「おぉ、もうそんなに出来てたっけ?最近砦の方は見てなかったなぁ」
「そろそろさ。…よって次会うのはこの場所だな」
「そりゃ良いね。ってかラオ、前に説明したじゃん!」
「そうだけど…こんなに仲が良いとは思わなくて」
「「あ~」」
「…殺し合う必要、あるの?」
「「無いけどある」」
「???」
「此奴の事だしお前に話してるだろうから簡潔に言うが、人が歩む道はそれぞれだ。悪人の道も、善人の道も、互いが否定しあうだけでか必ず存在する」
「そ、そう思います」
「昨日の敵は今日の友。それって道を否定しなくなった時にも使えるし、そいつが配下に加わって俺の道を歩くようになった時にも使える」
「は、はぁ…」
「今の状況はそれの一歩手前さ。他人の道を否定してるわけじゃないし、何方の道が良いかを決めるわけでもない」
「此処でクイズ!何ででしょうか!」
「え!?…………正直に言ったほうが良いよね」
「勿論」
「遠慮なく!」
「馬鹿だから…?」
「「………」」
俺とパルパータは顔を見合わせ、そして彼女を見てからもう一度顔を見合わせた。それから互いの頬を抓り、もう一度彼女を見る。
「……俺って馬鹿だっけ」
「私は馬鹿だった…」
「えっ、ち、違いましたか?!すいません!すいません!」
「まぁあながち間違いでもないけど、正解はその道を歩んできた人の覚悟を見る為。負けても勝っても、とにかく自分がしてきた事を糧にして相手にぶつけるだけ」
「そうそう!厄災シリーズの一人、ノーライフキングとかは独特の道を持ってる奴が多いから、そういう人とやると結構面白い。でもやっぱシードとやるのが良いかなぁ」
「ってわけ、わかった?…あぁ、俺にもタメで良いぞ」
「…そう。取り敢えず喧嘩の理由は分かった。……料理を作るから二人はゆっくりしてて!」
「「ん!」」




