最高のコンビ
―――数カ月の期間が過ぎ、気付けば八月の半ば。
俺は相変わらず朝練をしていた。場所は中庭の日もあるが、今日は闘技場。
「来い」
「そいっ!」
「しっ…!」
もう季節は夏。暑すぎるので最近は袴は履いてるが、諸肌脱ぎの状態、即ち上裸の状態で朝の練習に励んでる。まぁ二人は違うがな。二人は羽織袴姿だ。
え?二人って誰か?勿論ワールスとエトワール。二人共ここ数カ月で地道に力を付け、今は幹部級と言っても過言でない程。だが二人はそのレベルじゃダメだ。何せ俺の親衛隊なのだから。
「その程度の動きじゃ当たらんぞ」
「今日もシード様が勝つんじゃないか?」
「あの御二方も相当な実力者だぞ?こないだなんて幹部三人を倒したらしい」
「マジかよ」
ふむ、知らない話だな。幹部と戦わせた記憶なんて無いし、自分達で勝手に対戦相手に選んだのだろう。
しかし幹部レベルと思っていたが幹部より上だったか。まぁ幹部と言えど、レイちゃんの配下だった幹部たちじゃないから何とも言えないが。
彼等は皆、砦作成に励んでるからね。戻ってきたら戦わせてみるのも良いかもしれない。二人のコンビネーションは凄いからな。
「…奏嵐」
剣を軽く振るって幾つもの竜巻を生成。風魔法を剣に付与し、剣を振るって竜巻を起こす簡単な技。
ただし俺の場合は少しアレンジがある。そう、やっぱ…勝負ってのは派手にやらないといけないからな!
パチンと指を鳴らし、竜巻に込めてある魔力を使って小さな火球を生み出す。それは一瞬で竜巻に呑まれるが、その影響で一気に燃え盛る竜巻へ!
「さぁどうする」
そう言いながら体を仰け反らせてエトワールの回し蹴りを回避し、直ぐに起こしてからもう一回迫る足を掴んだ。
「中庭でやる時は大抵スカートだからパンツが見えるけど、こっちだとやっぱ見えないな。俺以外に見せたくないとか?」
「ッ…!」
強烈なビンタを喰らい、ちょっと力が緩んだ隙に彼女は後退。それと同時にワールスがマジ殴りをくらわせてきた。
「いっ…」
「「変態!」」
「…違うの?」
「「そうだけど…そうじゃない!」」
「ハハッ…なら良いや」
軽く後退して二人の攻撃を回避し、剣を思いっきり投げ飛ばす。エトワールはそれを上手く躱すも、ワールスはそれで腕が軽く切れた。
しかし関係無いといった様子で突っ込んでくるので、ニッコリ微笑みながら周囲の燃え盛る竜巻を収束させて小さな球体に。
それを正面に放ち、彼女達が避ける動作を見せた瞬間に魔力の膜を消し飛ばし、封じ込めていた竜巻を解放!
爆発したかの如く爆炎と突風が吹き荒れ、二人の体を一瞬にして飲み込んで行った。
「やはり今日もダメだったな」
そう言いながら後ろを向いた瞬間、背後から突風が押し寄せてきたので驚きながらもう一度先程の方向を向く。
すると、そこにはほぼ無傷の二人が立っていた。どうやらワールスが直前で自分とエトワールに結界を張ったようだ。
「前言撤回、こりゃびっくりだ」
二人は顔を見合わせてから小さく頷き、エトワールは闇を凝縮した光線を、ワールスは獄炎を放ってきた。
闇の光線に獄炎は混じり合い、そして黒炎の光線となって地面を削りながらどんどん近付いてくる。
「これだけ…?いや、ありえないな」
軽く切り裂いた刹那、エトワールが背後に回って短剣で攻撃してきた。それを部分的な結界を作って防ぎ、光線の後ろに居たワールスの斬撃は剣で防いだ。
ワールスはそのまま力任せに押そうとし、エトワールは素早く移動し、隠密でその姿を消した。
「ボロスが自慢気に強くなってるとか言ってたが、まぁ強くなってるのは間違いないが…想像よりは微妙だな。彼奴があんな興奮気味に言ってきた理由がよく分からん」
そう言った刹那、俺の剣に突如として罅が入り、そしてそのまま砕け…先端が地面に落下。ワールスはそれが分かっていたのか、殆ど驚かずに剣を振るって俺の右手を切断!
「ちっ…」
エトワールに警戒しながら、取り敢えず左手に魔力を溜めて魔力の球体を生み出したが、突然掌を短剣が貫き、作っていた球に刺さって爆発!
「……こりゃボロスも褒めたくなるコンビネーションだな」
そう言いながら魔力で作り出した手で二人を闘技場の壁に押し付け、普段は使ってない再生能力で右手と左腕を生やした。
「見事、としか言いようが無いな!とは言え相手が死んだか確認できない時は油断しちゃだめだぞ~」
「むぅ…」
「…油断した…」
「さっ、戻るぞ。…明日からはもう俺が戦う必要も無いな」
魔力の手を消し、二人の方を見てクスッと微笑む。しかし二人は驚いた表情をしていた。それを一瞥し、転移で先に屋敷へ。
二人も当然直ぐ来たのだが、戻って来たと同時に俺の手を掴んで引っ張って来た。
「明日からもシー君!」
「師匠でしょ!責任もって!」
「い、いや…教える事なんてもうあんまり無いんだが…」
「まだ技殆ど教えてもらってない!」
「それに全く本気出してないじゃん!」
「……それは…」
「私達との朝練よりレイとの方が良いんでしょ!」
「酷い!」
「いや、俺に習うよりレイちゃんに習ったほうが良いかなと思って」
「「ヤダ!」」
「えぇ…?そりゃ天才肌過ぎて何言ってるか分からないと思うけど、理解できたその瞬間、全部わかると思うよ」
「「それでもやだ!」」
「だから言ったでしょ?二人はシードじゃないと嫌がると思うって」
「ボロス…」
「しっかり付き合ってあげれば良いじゃん。…それとも何か理由が?」
「……俺が普段やってる訓練は知ってるだろ?出来ると思う?」
「出来る出来ないじゃなくて、彼女達はやる覚悟がある」
「はぁ…。わーった、明日からも俺だ。でも内容は一ランク上げるぞ。流石に最初から俺と同じにする気は無い。肉体への負荷が酷いからな」
「そ、そんなに?」
「あぁ。まぁお前等が俺と同じのをやる事はないけどね。一応三分の一程度で済む」
「デミウルゴス、レイ、ボロスの三人の訓練をやってるから?」
「そそそ。ってわけで明日からも宜しく。んじゃ温泉行くぞ」
「ん!」
「服取ってくる」
「私のも!」
「あっ、俺のも」
「………ボロス、取ってきて」
「私なの?えっ、そっちに用事無いんだけど」
「俺のメイドだろ~?」
「じゃあこうしよう。誰か一人のを取って来てあげる」
「なら一番偉い俺のだな」
「でもシード今日負けた」
「だからシー君は無しとして…」
「身長が高い私だね」
「私の方が胸は大きい」
「……三人で取りに戻るか」
「そうしよう!」
「賛成」
「仲良しね。それじゃ」
「おう。…あっ、明日からはシャナリアのだけじゃなくて俺達にもおにぎり作ってくれよ」
「良いよ、任せて」
「…ふと思ったんだが寝てるのか?」
「昼間は寝てることが多いよ。デミが大抵やってるし」
「ふぅん…。まぁお前は大事なメイド何だから、体大事にな」
「…わ、わかってるから頭撫でないで!」
「ちぇ~」
「同じ身長だから撫でやすい訳でもないでしょうに…」
「ペットって撫でたいだろ?」
「あ?」
「ククッ…んじゃ仕事頑張れよ!」
「あちょっ!…ちっ、次起こす時はビンタしてやる…」




